ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―12後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 1/29)

<前半からの続き>


そんな娘の様子を見て、美智恵が急いで助け舟を出す。

「はい、はい!感動の再会は置いて、ね?そろそろ横島クンにはこの1年の事情を説明して貰わなきゃいけないんだから?」
「そ、そうよっ!早く説明しなさいっ!横島クンっっ!!」
「そうですっ!横島さんっ!説明っ、説明をしてくださいっっ!!」

これ幸いと、場の雰囲気を濁そうとする2人と、

「せんせいっ!拙者と良い雰囲気を作るでござるっ!」
「違うでしょうっ!!?この馬鹿犬っっ!!」
「何度も言わせるな女狐っ!!拙者は狼でござるーーーっっ!!!」

いつの間にか、昔のように言い争いを始め出す2人。

「ふー・・・やれやれ、相変わらず騒々しい連中でしゅね〜。」
「は、ははは・・・・・・なんだか良くは分からんのだが、否定できん。」

当然ながら、横島にはみんなの狼狽振りの原因など分かってはいなかった。

「ちょっと待って下さい。」
「その話は我々にも聞く権利があるだろう?」
「なのねー♪」

と、そこに・・・ようやくあの3人組みが追いついてくる。

「小竜姫様っ!?ワルキューレっ!!ヒャクメもっ!!?」
「お久しぶりですね、横島さん。」
「久しいな、横島。」
「なのねー♪」

3人が、ホッとした表情で横島を見ていた。この3人だって横島の事は気になっていたのである。彼の無事を確認できて安心したのだ。

「何っ!!?あんたらも雰囲気作るつもりっっ?!!!」
「そうなんですかっっ!!!?」

しかし今度は、雰囲気を作る前から美神とおキヌが邪魔をする。美神は小竜姫とワルキューレに、おキヌはヒャクメに食って掛かった。何の事だか分からない小竜姫、ワルキューレ、ヒャクメの3人は凄まじい剣幕に目を丸くして、少し引いている。

「な、何の事だか分からないんですが?」
「私も同様だ。きちんと分かるように説明しろ。」
「な、なのねー・・・(ほんとは分かるけどー)」

一方・・・横島、パピリオ、ベスパの所に寄っていくタマモとシロ。

「ヨコシマ・・・こいつら誰?」
「誰でござるか?」
「あれ?そうか・・・お前らって面識ないんだっけな。」

タマモ、シロとパピリオ、ベスパには面識が無い。ちょっと考えて、横島はそれに思い至った。
お互いに紹介する。

「え〜と、じゃあまず・・・こっちから。ベスパとパピリオ・・・・・・二人は魔族の姉妹なんだ。で、パピリオは今、妙神山で小竜姫様に・・・一応保護観察されてるって言って良いのかな?」
「客人って言うでしゅ。」

パピリオが訂正したが、それが事実かどうかは不明です。

「で、ベスパは魔界の軍に所属してる。え〜と・・・・・・まだワルキューレの部下か?」
「ああ。」

ベスパは簡単な返事をした。

「で、今度はこっち。シロとタマモ。二人とも美神さんの所に居候してる。シロは人狼族で、タマモは九尾の妖狐なんだ。」
「犬塚シロでござる!横島せんせいの一番弟子でござるよ!」
「タマモよ。」

一番弟子を強調するシロと、相手を値踏みするような視線のタマモ。

「ん?美神の所に居候ってことは、もしかしてあの部屋にいるでしゅか?」

そんなモノ何処吹く風のパピリオは、不意に思い出したようにそんな事を口にした。

「ああ、あの屋根裏部屋・・・・・・そう言えば、お前もちょっとだけあの部屋の住人だったもんな?」

本当に、ちょっとだけだったなーと思いながら横島は言う。

「え、なに?この娘もあの部屋に居候してた事あるの?」

タマモが意外そうな顔をして聞いた。

「ベスパ殿とパピリオ殿も2人であの部屋に住んでいたでござるか?」

シロが何気なくそう聞くが・・・

「!!」

それはこの3人には鬼門な質問だった。瞬間的に重くなる雰囲気。
だが、横島が直ぐにそれをごまかす。

「そうだ!俺、さっきから気になってたんだよ!なあ、パピリオ?」
「ん、なんでしゅか?」

パピリオもそれを察して直ぐに雰囲気を柔らかくした。

「お前の話し方だけどさ?なんで!語尾が“しゅ”なんだ?昔は“ちゅ”だったろ?それに俺の事“ヨコチマ”って言ってるけど、前は普通に“ヨコシマ”って言ってたよな?」

それを聞いて、パピリオの表情がパッと明るくなった。なんだか「待ってました」と言わんばかりの表情である。

「よくぞ聞いてくれたでしゅ!これは私の努力の成果なのでしゅ!成長の証でしゅ!」
「は?」

エヘン!と胸を張るパピリオ。だが、横島にはさっぱり分からない。

「ど・・・どゆこと?」
「ふふ〜ん♪よく聞くでしゅ!ヨコチマも知っての通り、私もベスパちゃんもキチンと一般的な魔族らしい長い寿命になれたでしゅ。もっともそっちにエネルギーを回した分だけ、ちょこっとパワーが落ちてしまったでしゅけどね。ま、それはどうでもいいでしゅ。」

パピリオの説明は続く。

「なもんで、私は成長もする事ができるでしゅ!という事は、いつまでも“でちゅ”だなんて赤ちゃん言葉を使っていては恥ずかしいのでしゅ。だから必死で特訓したのでしゅよ!!」

どれほどの特訓だったのだろうか?パピリオの瞳はどこか遠くを見つめていた。

「小竜姫の修行と同じくらい辛かったでしゅ。でも、私は負けなかったでしゅ!そして遂に、“でちゅ”と言わないようになったでしゅよーーーーっっ!!!」
「・・・・・・・・・・・・」

横島は言葉を失っている。ついでにシロとタマモも。ベスパだけは、やれやれと言った表情を浮かべての苦笑いだった。

「いや、おまえ・・・それで“でしゅ”か?なんかあんまり変わらんよーな・・・」
「何を言うでしゅかっ?!これは大きな一歩でしゅ!私が成長出来るっていう証でしゅよ!?それに、“でちゅ”は赤ちゃん言葉でしゅが、“でしゅ”は個性的な話し方でしゅ!!これでパピリオも大人でしゅーーーっ!!」

横島は絶句した。「もー、何でもいいやー」って顔になってる。それでも気力を振り絞ってもう一つの疑問をぶつけた。

「じゃ・・・じゃあ“ヨコチマ”っていうのは?」
「ああ、それも個性をつける為でしゅ!“ヨコシマ”だと被るヤツとかいるでしゅからね。とりあえず“ヨコチマ”なら今後そう簡単に被るキャラは出てこないでしゅ!実に知能的でしゅ!!」
「それって例えば私とか?」

タマモが少し複雑な表情をしている。

「はは・・・はははは・・・・・・・・・」

横島は笑うしかなかった。

「そ、そろそろほんとに説明始めようか?なんか、さっきから全然進まないし。」

横島が言う。

「はっ?!そ、そうね・・・こんな事してる場合じゃ無かったわ!」

まだ小竜姫とワルキューレを睨みつけていた美神が、それを聞いて正気を取り戻した。

―― 私ったら横島さんの前で恥ずかしい! ――

同時に正気に戻ったおキヌちゃんは、そんな事を思いながら真っ赤になっている。
ヒャクメがニヤニヤしていた。

「さて、じゃあまず・・・・・・」

声のトーンが変わる。横島は今度こそ本当に説明を始めるつもりのようだ。

「なあ、おっさん。もう、アイツ連れて来てくれても良いだろ?」
「えっ?!」

すっかり忘れ去られていたオカルトGメンの現場主任らしき男に横島が話し掛ける。
突然話し掛けられて、男は一瞬自分が言われているという事に気がつかなかった。

「え?なに、横島クン1人じゃないの?」
「あ、はい。実は我々が捕縛作戦を実行した時にもう1人。現在は2部屋向こうでうちの女性スタッフと一緒に居ます。」

美神に聞かれて答える。

「ふーん・・・じゃあその人も連れてきて。一緒に話を聞きましょう。」
「はっ、了解しました。オイ、呼んで来てくれ。」

美智恵がそう命令すると、すぐさま更に下に命令が行く。オカルトGメンもやっぱり縦社会。
さっきから腰を抜かしっぱなしの若いGメン隊員が、直ぐに部屋を出て行った。
ところでその頃、美神達の心境は?


( Side 美神 )

―― 誰よ!?まさか女っ!!? ――

「いやー、実は俺、彼女が出来まして!ハハハハ!」
「タダオは優しい、イイ男ダヨ☆ワタシもうメロメロねー♪」
「ちくしょー!可愛いぞーコイツーーッ!!」

( Side おキヌ )

―― 誰なんですか横島さんっ?!!まさかっ!!まさかあっ?!! ――

「俺、結婚しました!」
「わたくし、忠夫さんの妻です。ポッ!」
「実は1年間ハネムーンに行ってたんですよー!」

( Side シロ )

―― せんせい・・・・・・ああっ!!?もしやっっ?! ――

「こいつ、俺の弟子なんですよ。」
「始めまして。横島先生の一番弟子です。」
「1年間、世界中を武者修行してきました!」

( Side タマモ )

―― ヨコシマ・・・まさか! ――

「実は子供が出来てしまって・・・」
「この子の為にも、あんな薄給な職場で働かせる訳には行きません!」
「・・・・・・マグロ釣ってました。」

( Side End )


―― ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ――

室内のプレッシャーが跳ね上がった!

「連れて来ました。」
「失礼します。」

全員の視線が集中する。

「!!!!」

そして全員が息を飲む!そこに居たのは・・・・・・・・・・・・
年齢は25歳前後、肩口で切りそろえられ整った黒い髪。品の良いスーツをキッチリと着こなした、見るからにやり手のキャリアウーマンだった。少しキツメな、かなりの美人で・・・・・・

―― そして ――

「・・・・・・ダァ・・・」

腕には生後間もないと思われる可愛い赤ん坊を抱いていた。

―― あああああぁぁぁぁっっっっっ!!! ――

果たして、いったい誰の妄想が正しかったのだろうか?
まぁ・・・・・・とりあえずシロの妄想ははずれっぽい。


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