ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―12前半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 1/29)

「痛ててて・・・あーーー死ぬかと思った。」

横島が腰をさすりながら起き上がった。

―― ってかお前も、なんでそれで済む? ――

すっかり突っ込み集団と化したGメンズが、呆然とした顔で横島を見やる。やっぱりそれが一般人の常識と反応だろう。
ちなみに他の面子にとってはこんなのはいつもの事・・・特に気にした風でもない。常識うんぬんと言うには無理のあるメンバーだしね。

「む〜、ごめんなしゃい。」

どうやら自分が悪かったらしいと理解したパピリオが、泣きそうな顔で横島に謝る。

「ったく、少しは後先考えろよなー、パピリオ。」
「あっ!?べスパッ!!?」
「ベスパちゃん・・・む〜、反省でしゅ。」

やれやれ、と言った風に入ってきたのはベスパだった。横島をはじめ、他の者もそれに気がつく。

「よっ・・・久しぶりだな、ポ・・・横島。」

べスパは右手を上げて横島に笑いかける。横島はベスパの表情の変化に驚いた。

・・・・・・・・・・・・



横島が最後にベスパと会ったのは、アシュタロスの乱のしばらく後のこと。
人間界へ潜伏している魔族の反乱分子を拿捕、もしくは殲滅するという任務の為にこちらに訪れていたベスパが・・・たまたま美神事務所の仕事とバッティングした事件の時だった。
ちなみにその1回きりで、会ったのは横島だけ。
一応は極秘任務と言う事だったので、ワルキューレにベレッタ突きつけられた横島は「決して誰にも話したりしない事を誓わせていただきます」という台詞を言わされてた。
横島とベスパが出会ってしまったのは本当に偶然のこと。こんな事さえなければ、二度と出会う事も無いと思っていた2人。だが何故だろう?

―― 出会ってしまった ――

正直な所は、お互いに気まずいという感情だった。
思いがけず仲良くなり、その後敵同士として命を奪い合った2人。しかもお互いの命を、奪いきってしまう一歩手前までいった。
それでも生き残ってしまった2人。

―― 一番大切なモノを失った2人 ――

そして

―― お互いに奪い合ってしまった2人 ――

そう言って差し支えないほどの事をした2人・・・・・・
少しギクシャクして話をする。

『よう・・・元気でやってるか?』
『ああ・・・・・・・・・ポチの方はどうだ?』

廃屋、剥き出しの鉄骨に離れて腰掛けた2人は・・・お互いの顔を見る事も無く話をした。
眼前には真っ赤な夕焼け・・・

『俺は相変わらずだなー・・・何か変わるかとも思ったけど、結局の所な〜んも変わらん。』
『そっか・・・・・・・・・』

努めて明るく話す横島。

『お前の方はどうだー?魔界の軍隊ってな、やっぱキツイもんか?』
『うんにゃ・・・・・・やってる事は前とそんなに変わらんよ。アタシは戦闘要員だからね。どこに行ったって敵がいて、敵と会えば戦ってる。』

対するベスパも、感情を表すような事は無かった。

『・・・そっか・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・』

それっきり二人は黙り込む。やがて夕日はビル街の向こうに姿を消した。

『・・・・・・・・・じゃあ、俺そろそろ行くわ。』
『ん・・・ああ・・・・・・・・・・・・あ、そうだ・・・なあ?』

そのまま立ち去ろうとした横島を、ベスパはふいに呼び止める。

『ん?なんだ?』
『ポチ・・・・・・アンタの名前・・・横島・・・・・・って言うんだったっけ?』

少し思い出すようにして、ベスパは尋ねた。

『あ、ああ・・・・・・よく、覚えてたな?俺の名前は、横島・・・横島忠夫ってんだ。』
『ん、いや・・・別に深い意味は無いよ。ただなんとなく・・・・・・ふと聞いてみたくなっただけだから。』

そう言って、今度はベスパの方が立ち去ろうと、コンクリートの瓦礫から腰を上げる。

『なぁ、ベスパ?』
『あ?なんだい・・・』

そのタイミングで、今度は横島の方から声をかけた。

『お前、パピリオには会ってるか?』
『・・・・・・・・・・・・いや、一応保護観察付きの身だからな・・・勝手に魔界から出る訳にもいかん・・・』

それはほんとで、だけど嘘。ベスパは半ば意識的にパピリオに会う事を避けている。パピリオだけでは無い。あの事件を思い出しそうな者には、極力会わないようにしていた。
一方の横島は、月に一度くらいの頻度で妙神山に出向いている。パピリオにせがまれると嫌とは言えない横島だった。

『たまには会いに行ってやれよ。なんか会いたそうだったぞー』
『ん・・・・・・そうだな。暇が出来たらな。』

曖昧に答えるベスパ。そんな彼女に横島は続けて言う。

『絆はさ・・・・・・なるべく繋いどくもんだ。』
『なんだそれ?』

横島が言いたい事が良く分からなくて、ベスパは怪訝な顔を見せた。

『俺たち、色々有ったけどさ・・・・・・それでも生き残っただろ?生きてる間はさ、ちゃんと生きなきゃな。俺にもお前にも、「想い」は残ってるんだ・・・』

夕日が沈んだ先を見つめながら、横島は語る。

『俺たちだって、いつか死ぬ。でもさ、哀しさとかやるせなさとか・・・そんなもんばかり残すのって嫌だろ?残される方としては・・・・・・さ。俺たちが受け取った「想い」とか、俺たち自身の「想い」とか・・・きちんとこの世界に残していければ・・・』

そこまで言ってから、横島はハッとした顔になり、

『あ〜・・・す、すまん!変な事言ってるな、俺!よ・・・要するにだ、お前だって元気で生きていて欲しいって思ってるヤツがいるんだから!そいつを大切にしてやれって言うか、むしろお前自身を大切にって言うか・・・』

とたんに説明がしっちゃかめっちゃかになってしまう。
それでも横島は、自分が言いたい事の本音の部分を口にした。

『お前にだってまだ、大切なヤツがいるだろ?大切にしてやれよ、そいつ。例え・・・・・・・・・・・・一番じゃなくたって、大切なものに間違いないんだから・・・さ。』

それは果たして、誰に言った言葉なのだろうか?
ベスパは暫くじっと横島を見つめていたのだが、やがて何も言わずにその場から飛び去った。
そして横島も歩き出す。
後に残ったのは、かすかに雲に反射して届く夕日の残り火だけ・・・・・・



・・・・・・・・・・・・

「アタシさ・・・最近、パピリオに会ってるんだ。」

ベスパがぽつりと言う。それだけで横島には彼女の言いたい事が伝わった。

「・・・そっか。」

横島もそれだけ答える。2人の間には、穏やかな空気が流れていた。

―― ちょっと待てーっ!!?なんっでこの2人の間にっ!こんっな空気ができるのよーーーーーっっっ?!! ――
―― 何がっ?!いったい何があったんですかあっ!?横島さはーーーーんっっ!!!! ――
―― うおおーーーーーっっっ!!!せんせーーーっっ!!?拙者とも雰囲気作るでござるよーーーーっっ!!! ――
―― ってか、そもそもこいつ誰よっ?!! ――

その雰囲気に耐えられなくなってきた事務所の面々が心でうめいてる。

「ベスパちゃん、最近随分と優しくなったでしゅね?」

そんな雰囲気に臆する事も無く、パピリオは間に割っていった。無邪気な表情で、別に何の他意もない。

「そうか・・・・・・な?」
「ああ、俺もそう思うよ。随分と・・・・・・・・・良い感じじゃんか。」

横島もパピリオに同意する。そして優しい笑顔を向けた。ベスパの顔に、うっすらと紅いものがさす。

―― だからそれをやめろーーーっっ!!! ――

美神はそろそろ爆発しそうだ!


<後半に続く>

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