ザ・グレート・展開予測ショー

彼の大きさ(5)


投稿者名:ANDY
投稿日時:(03/ 1/29)

 星の数ほど人がいて、星の数ほど行き方がある。
 一分は六十秒。一時間は六十分。一日は二十四時間。一ヶ月は三十日。一年は三百六十五日。・・・
 人の生の時間はどんなに長くとも百年。
 その限りある時間を、少しでも楽しむために人は日々を一生懸命に生きる。
 自分の関係することのみを記憶し。
 では、自分と関係ないことをあなたはどれほど覚えています?

―こんにちは。ここで質問ですが去年あなたが一番関心をもたれた事件は?―
「奈室ちゃんの結婚!なんでじゃ〜〜〜?!」
―去年あなたが一番関心をもたれた事件は?―
「鷹ノ鼻関の横綱昇進」
―去年あなたが一番関心をもたれた事件は?―
「ササノハイチローのダイリーグ入り。向こうでもがんばって!」
―去年あなたが一番関心をもたれた事件は?―
「・・・ナルニア行き飛行機墜落事件です。まだ、あの人が見つかっていないので・・・」

 日々の生活に追われ、人は多くのことを忘れて生きていく。
 特に自分にとって辛い事、無関心な事などは。
 一時期大々的に取り扱っていたあの事件も、時の針が進むにつれて風化されていった。
 その事件はもともとなかったかのように。
 だが、その事件に少しでも関係しているもの達にとってはまだ終わっていなかった。
 ある者は、彼がいつ帰ってきても良いように彼の居場所を維持し、ある者は、己の持つ全てを使い彼に関する情報を得ようとし、また、ある者はかの事件を起こした者達といつことが起きても良いように己を高めていた。
 彼と縁のある者は、無駄に時を過ごしていなかった。
 そして、幕は上がる。
 それが悲劇なのか、それとも喜劇なのかは誰にもわからない。
 それともあるいは・・・

 ―かの事件より一年―
 ここは世界最高峰のGSである美神令子の事務所。
 彼のいない一年の間に変わったことがあった。
 まず、所長である美神の服装が露出が少ないものに変わった。
 次に、所員であるオキヌが高校をこの春めでたく卒業した。
 シロとタマモは、あまりケンカをしなくなった。
 彼一人いなくなっただけで、何かが変わってしまった。
 それぞれがそのことを自覚している。が、誰もそれについては触れようとはしない。
 そんな事務所に一本の電話が鳴った。
「はい。美神除霊事務所でございます。ご依頼で―」
『オキヌちゃん?!令子に代わって!』
「は、はい。美神さん、隊長さんからお電話です」
「ママから?もしもし?」
『令子?!いい。今すぐこれから言う所に来なさい!』
「ちょ、ちょっとママ」
『東京タワー前よ。いいわね!!』
  ガチャン!ツーツーツー
「な、なんなの?一体・・・」
「どうしたんですか?美神さん」
「どうしたでござる?美神殿」
「なに?どうしたの?」
 受話器を唖然と見つめている美神に三人は声をかけた。
「よくわかんないんだけど、東京タワーに来いだって」
「東京タワーですか・・・」
「「トウキョウタワー?」」
「ま、いいわ。行けばわかるでしょ。オキヌちゃん、一応道具の用意をして頂戴」
「あ、はい。わかりました」
「せっしゃも行くでござる!」
「私も行くわ。暇だし」
 そして、四人は暴走コブラに乗り東京タワーへと向かった。
 
―東京タワー前仮設本部―
「状況は?」
「依然として変化はありません」
「そう。注意は怠らないで頂戴」
「は!」
「先生」
「どうしたの?西条君」
「これを」
 そうして西条が差し出したのは一枚の写真だった。
「・・・これは事実なのね?」
「はい。特殊班が総出で念写した結果です」
「そう。・・・皆を呼びましょう」
「・・・皆とは?」
「皆は皆よ。『アシュタロス戦』の皆をね」
「わかりました。で、なんと?」
「そうねえ。『能面再来』と言って」
「そのように。では」
 西条が連絡を取りに行ったのを確認し、美知恵は写真を見つめた。いや、睨みつけたと言ったほうが良いほどの眼光だった。
「まさか、一年たって出てくるとはね」
 そこに写っていたのは、直接は対面したことはないがこの一年間一度たりとも忘れたことのない顔のものがいた。
 それは、能面のような仮面をつけた悪魔といってよい存在だった。
 それが少なく見積もっても七体。

 開幕のベルが鳴る時は近い。
 それは果たして破滅の音か?それとも、福音の音か?
 今は誰も知らない・・・
 

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