ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−29


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 1/28)





『横島の魔族化』




予想外の事態となったのはヤマサキにとっても同じこと。
さすがにしばらく呆然としていたが、すぐに現状の把握に走る。
目の前の横島は黒く光る魔力の繭の中にすっぽりと収まっている。
そしてその繭自体、ドクンドクンと脈打っているようだ。

「これはつまり……これが目的だったのかな?」

言いつつもデータ収集は忘れない。

――――素晴らしい♪

人間の魔族化・妖怪化は珍しくないが、その観測データが詳細に取られた事例はない。
さすがに呆然とするカオスを尻目に、ヤマサキはデータ収集に勤しんでいた。







「貴様は何者だ!!!」

いち早くワルキューレの変貌に反応したのはジークだった。

「姉上をどこにやった?!」

魔銃を突きつけつつ、問いただす。

ワルキューレも呆然としている。

「私は・・・・・・何をやった?」

「?」

「・・・・・・ジーク教えてくれ・・・・・・私が小竜姫を撃ったのか?」

「姉・・・・・・上?」

「何故私は小竜姫の邪魔をした?」

「何故私が横島の魔族化を手伝った?」

「何故私がここにいる?」


――――ご苦労さま。ワルキューレ。


頭にそう声が響いた瞬間、呪縛が解けて全ての記憶が戻る。
フラッシュバックするリリスとのやり取り。
そして自分の行動。

「・・・・・おのれリリス!!!!!!!」

記憶が整合した途端、ワルキューレから怨嗟の声が漏れる。

「リリス?!
 六魔神の一人!夜魔の女王!!」

それを聞いた小竜姫は全ての疑問のピースが揃ったのを知った。



ワルキューレの不信な行動。

メドーサ達の登場とアシュタロスの力の結晶。

横島の魔族化。



裏でリリスが暗躍していたとしたら・・・・・・魔界は新たな魔神の誕生を図っていたのか!!! 




それと悟った瞬間。
横島を覆っていた繭が激しく光り、飛び散った。
誰もが目を開いていられなくなる。
しばらくの後、やっと目を開けるようになった美神達が見たものは・・・・・・。











































見たことも無い魔族が、片腕でヤマサキの胸を貫いている光景だった。














―――― エピソード29:Falldown ――――









ルシオラ・美神・死・相討ち・人質・文珠・ヤマサキ・敵・人間・魔族・神通棍・おキヌ・崩壊・霊基構造・クローン・タマモ・霊波刀・シロ・研究・パピリオ・人界・秩序・GS協会・べスパ・式神・冥子・実験体・ピート・モルモット・夕日・前世・メフィスト・転生・喪失・別れ・文珠生成機・横島忠夫・記憶・希望・消滅・滅亡・絶望・憎悪…………。

さまざまな思いと記憶が横島の脳裏を駆け巡る。
自分の身体が変化を遂げていることを他人事のように見つめていた。


 ドンッ!!


突然、衝撃が走る。

――――何だ?何かが……入ってくる?

アシュタロスや小竜姫の、信念、思い、絶望、希望、怒り、無力感。

小竜姫の歩んできた人生。秘められた思い。

さまざまなモノが流入してくる。

記憶・思い・力・知識。

その奔流にさらされながら、横島の中で徐々に整理整頓されていく。

そして横島は目を開いた。

最初に目に入ったのは倒れ伏す小竜姫とルシオラ達。

そして……嬉々としてデータを取っているヤマサキ!!!!




ヤマサキを見た瞬間、横島の身体と思考は一致する。




『殺す!!!!』














ヤマサキを右手で貫くソレ。
その姿はまさしく鬼だった。
鎧武者だった。
漆黒の甲冑を纏った手負いの鬼。
顔は滑らかな曲線とシャープな直線で構成され、目の下には血涙の如き細長い線が入っている。 
その凄まじいまでの殺気と魔力は、辺りに残る霊魂を具現化させて行く。

殺された研究員達。
研究所での犠牲者達。
そして……ルシオラの死によって、再び分割してしまった魂――――ルシオラクローン達。

他の霊魂達が逃げ惑う中、ルシオラクローン達だけはソレに近づく。
そして無言で横島を守るように、縋るように周囲を飛び回る。
その表情は白痴そのもの。
無駄にケラケラ笑っている。



「あ……れ?」

 
 ゴフッ!


ヤマサキが血を吐きながら間抜けな声を出す。

「こ……困ったな〜♪
 このままじゃ、僕、し、死んじゃうなぁ〜♪」

ヤマサキは文珠を使って回復しようとポケットをまさぐる。
ソレは右手でヤマサキを貫きながら、左の手刀でポケットを弄るヤマサキの腕を切り飛ばし、さらに頭を鷲づかみにする。
そして反動をつけて右手を一気に胸から引き抜く。
ポッカリと拳大の穴が開いたヤマサキの胸。
そこから血が噴き出す。
その血がソレの鎧(?)を濡らすが、一向に気にした様子もなく左手に力を込める。
徐々に締め付けられる頭の激痛に身じろぎするヤマサキ。










 グシャッ









あっけなく潰れる。

ソレは血に汚れた自分の手のひらを眺めた後、美神達へと視線を向ける。
そしてソレに向けられる視線。
ソレはその視線が何なのかをすぐには理解出来なかった。


だから一歩、近づく。

そして一歩、下がる美神達。

更に一歩、近づく。

更に一歩、下がる美神達。


――――あれ?どうして美神さん達が俺から逃げるんだ?


ソレはそう思った。
そして唐突に自分へ向けられる視線の意味に気付く。
先ほどおキヌが自分へ向けていた視線とそっくりだ。


――――いや、それ以上のモノ?


『相反する感情……信頼と不信、好意と嫌悪。そして……明確な恐怖』


――――何故?


自分の姿を確認する。




















そしてソレは……横島は絶叫した。






















 ドサドサドサドサッ!!




横島の絶叫を聞いた次の瞬間、美神達は研究所の外へ放り出された。
そこは丁度、GS協会の援軍(特殊部隊)がエミ達を捕縛している場所だった。
結界の維持に協力していたはずの魔族達の姿はない。

「な……ちょっと!早く助けな……」

エミが起死回生とばかりに声をかけようとして絶句する。
全員、激戦を繰り広げていたのを物語るように大怪我をし、霊力は枯渇寸前だ。
そして全員が全員、気絶している。

「何が起きたワケ?」

呆然としているエミを尻目に、これ幸いにと協会の増援達は次々と美神達を捕縛する。
全員、抵抗らしきものは一切見られない。

「ちょ、ちょっと令子!フザケルのもいい加減にするワケ!!!!」

エミが激怒した瞬間、空気が震えた。


ブーン!!!!!


その場で意識のあった者は全員、研究所の方を振り向く。
















そこでは球形の闇に研究所が飲み込まれていた。




















「さすがに、あの場に居なかった神族やオカルトGメンの連中までは無理だった」

「上出来さ。
 大事なのは横島と面識のある連中さ」

「これで第二段階へ移行か」

「ああ、そのためには生きていて貰わなきゃ困る」

「……俺はベルゼブルの二の舞は御免だぞ?」

「馬鹿に用は無かった。
 それだけさ」

「ワルキューレとジークは魔界へ直接で良かったんだな?」

「ああ、リリス様の指示だ。
 今更ワルキューレがリリス様に従うとは思えないけどねぇ」

「フン……どういう行動を取るもんだか」

「さあねぇ?
 アタシだったら復讐を考えるけどね。
 軍人根性が染み付いてるアイツらにそれが出来るもんか」


そこで2体の魔族――デミアンとメドーサ――は会話を切り上げて、球形の闇の中へ飛び込んでいった……。







今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa