ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―11前半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 1/28)

それに一番最初に気がついたのは、美智恵だった。

・・・・・・令子・・・・・・

部屋の隅、観葉植物の陰・・・・・・死角になってよく見えない場所に居た美神が静かにこちらへと戻ってくる。
その表情は・・・・・・・・・やはり怒っているように見えるのだが・・・

・・・・・・結論は出たみたいね・・・・・・

美智恵は微妙な表情の変化を娘に感じ取り、満足げに微笑む。
美神の表情は、先程までの様々な感情が混ざり合った物ではなく・・・・・・真剣な、そしてすっきりとしたモノに変わっていた。

・・・・・・・・・・・・


( Side 美智恵 )

私が言えた義理では無いのかも知れないけれど・・・

―― どうしてこんな娘に育っちゃったんだろう ――

令子の事を考えると、途端にため息の量が増える。
お金に意地汚いとか、違法行為を屁とも思わない所とか、天上天下唯我独尊な怖いもの知らずだとか、グータラだとか、家事をやりたがらないとか・・・・・・・・・
・・・・・・・・・まぁ、その辺は・・・・・・

―― ハハハ・・・ハ ――

・・・・・・・・・・・・まぁ、ひとまず・・・・・・置いておくとしましょう。
ひとまず・・・・・・とりあえず・・・それは良いとして、うちの娘はどうしてああも・・・

―― 意地っ張りなんだろうか? ――

しかも悪い方向に。
意地を張るって言うのは、決して悪いことではない。意地を張るっていうのは、強い意志をもち続けるっていう側面も持っている。
より困難な事柄に当たろうとする時に、強い意志の力は不可欠だ。
実際に令子は様々な難局を、強い意思の力で潜り抜けてきている。
悪運の所為だと言う者もいるだろうが、運だって強い意志が無ければ味方をしてはくれない。と言うよりは、意志が弱いものにはせっかく廻ってきた運を生かすことなど出来ないと言った方が正しいだろうか。

―― だけど ――

アノ娘はある一点で、決定的に悪い意地の張り方をしている。
それが、横島忠夫という男に関してだ。
令子がカレに好意を抱いている事など、誰の目にも明らかだと言うのに・・・・・・

―― アノ娘だけが決してそれを認めない ――

まあ、同情の余地もある。令子にはカレを認められないだけの十分な下地が有った訳だし・・・・・・
まず・・・なんと言っても、カレの人となりに問題が有っただろう。
セクハラ、妄想癖、見境無し・・・・・・いわゆる煩悩少年だった頃からカレと付き合い続けている令子にとって、当時の頃の印象が強烈過ぎるという事・・・・・・
もっとも、わざわざ失敗しそうな相手ばかりをあえて選んでいる辺り・・・・・・可愛いものよね。好意を向けられると、とたんに取り乱して引いてしまうし・・・・・・・・・まるで、成功するのを怖がっているみたいだわ。

―― 彼も令子に負けず劣らず屈折してるわよね ――

あと、令子に父性愛を求める傾向が強いと言う事もやっかいだ。
コレは私たち夫婦に責任が有る。アノ娘は家庭の愛情に飢えているのだ・・・・・・特に父親というものを知らずに育った所為で、年上の男性に甘えたいという傾向が強い。男性に包容力を求めているのね・・・・・・
だから、無意識のレベルで年下の男と言う者を恋愛対象から除外してきたのだろう。

―― でもね、令子 ――

包容力って言うのは、年齢に依存するものじゃないのよ?
年下の男の子だからって包容力が無いって訳じゃ無いわ。特にカレなんて・・・・・・

―― 包容力の塊みたいな人じゃない? ――

普段のおちゃらけた態度とは裏腹に、カレは本当に優しいわ。厄介な事に、誰が相手でもね・・・・・・
自分が関わった者が真に困っている時、カレにはそれを見捨てるなんて絶対に出来やしないでしょう。
問題を解決するために自分に出来る事を精一杯に行い、それでも足りない時はあっさりと自分の限界をも超えていく。
何より、アナタのアノ扱いで壊れもせず離れても行かないなんて・・・・・・

―― 異常な事だって分かってるの? ――

アナタみたいなハチャメチャな娘を包容してくれる人なんて・・・包容できる人なんて・・・・・・

―― 絶対にカレしか居ないって断言できるわよ? ――

カレを逃がしたら、アナタ一生一人身よ?

・・・・・・・・・それに・・・

今のカレは、随分と落ち着いた。話を聞いてると、霊能力を発揮しだした頃から少しづつその傾向が見られ始めたらしくて・・・・・・
アノ事件の後は随分と大人しくなったわ。

―― 悲恋 ――

それがカレを成長させたのだとすると皮肉ね・・・・・・・・・・・・責任、感じちゃうわ。

―― アナタもそうなんでしょう? ――

だから余計に素直になれなかった・・・・・・
アナタがカレに対して持っている感情は余りにも多種多様で、凄く混乱したんでしょうね。
カレを認められる部分と、カレを認めない部分が合い混ざって・・・葛藤したんでしょう?
そして結局は自分の心にフタをしてしまったのね。
例えその一時だけの事とは言え・・・

―― それが一番苦しまないから ――

バカな娘・・・・・・・・・そんな一時凌ぎじゃあ直ぐ又、同じ思いをする事になるのに。
実際、それで何度も同じ思いをして・・・
最終的にはこの1年間、凄く辛い思いをしちゃったわね・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

―― ま ――

何にせよ、それも今日までね、令子?
アナタ今、とても良い顔をしているわ。

―― ようやく決心できたのね? ――

アナタはどっちを選んだのかしら・・・・・・・・・カレをモノにするの?それともカレの事は諦めた?
どっちを選んだにせよ、ママはアナタの意見を尊重するわ。アナタはもう、自立した一人前の女ですもの。

―― でも、まあ ――

モノにするのよね?諦めれる訳無いわよね?そうでしょ?そうに違いないわ!

―― 大丈夫! ――

ママがついてる!いつでも相談に乗るわよ。影ながら応援もする。なんだったらちょっと手助けしちゃおうかな?
可愛い娘の為ですものね♪

―― それに! ――

美神の女に負けは許されないのよ!!
気に入った男が出来たなら、即断即決でモノにしなきゃね。ライバルはたくさんいるけど、全て蹴散らしなさい!!
出来るはずです。アナタはママの娘ですもの!

( Side End )


・・・・・・・・・・・・

とまあ・・・・・・美智恵は心の中で娘を応援している。
冷静に娘の心理状況を分析しつつ、微妙に親バカな思考をしていた。
そして美神は・・・・・・・・・再び横島の前に立つ。

「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

横島を見つめる美神・・・・・・・・・美神を見つめる横島・・・・・・

「みんな・・・・・・ちょっとごめん・・・」

横島はしがみついていた全員に、済まなそうに声を掛ける。視線は美神に向けたままだ。
おキヌもシロもタマモも、幾分名残惜しそうな顔を見せつつ・・・・・・美神と横島の、いつになく真剣な態度を思いゆっくりとその腕を離す。

「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

見つめあう横島と美神。先程までの一方的に睨みつけていたのとは違う雰囲気がふたりの間に流れている。

―― ゴクッ ――

唾を飲み込んだのは誰だったのだろうか・・・
そんな数泊の後・・・・・・美神の方から切り出した。

「横島クン・・・・・・・・・・・・覚悟は出来ている?」

いつもと同じ台詞。いつもと違う表情。真剣な表情で横島を睨む美神・・・・・・

「・・・・・・・・・はい・・・出来てます・・・」

そして答える横島も、見間違うほどに真剣な顔つきだった。

「そう・・・・・・・・・・・良い返事だわ・・・」

答えて、美神は間合いを詰める。ゆっくりと・・・・・・一歩、二歩・・・・・・

・・・・・・そして・・・・・・

―― バキッ!!! ――

「グハッ!!」

「?!」
「!!」
「!・・・」
「・・・」

美神は渾身の力をこめて、右の拳を横島の顔面にぶち込んだ。
事務所の面子と美智恵も、思わず「ハッ」っとなる。
真後ろに倒れこみ、背中・・・頭と地面に打ち付けられた横島。勢いは止まらず、そのままバウンドして後方に一回転して・・・・・・


<後半に続きます>

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