ザ・グレート・展開予測ショー

フランス映画は恋愛模様、故に惑うか、オキヌちゃん。


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(03/ 1/26)

散歩から戻ったシロの首筋からタオルが落ちた。
新品の子供服姿のタマモは背を伸ばし頬に手をあてている。
幾つかの工具を持っているカオスは目を大きくしている。
公務で来ていた美智恵の口から『まぁ!』という声。
御付の西条は思わず口笛を鳴らした。
デスクに座っていた美神令子はもう獣張りに髪と言う髪を逆立てている状態で、
横島は方膝を地べたにつけたまま身動きが出来ない。
そして皆の目線の先にいるのはソファーで転寝から完全に目の覚めたおキヌちゃん。
やや違うのはその両手が横島の肩から首にかけて絡まっている事と妙に乾いた唇である。

その日−冬の寒い日ではあったが久々の陽光を堪能できる天気であった。
玄関先でチャイムがなった。
「はーい、どちらさまですかぁー?」
と、小走りなのが外からでも判るぐらいやや急いでいるオキヌちゃんである。
「ワシじゃ。欧州の魔王と恐れられたDrカオスじゃ」
「はーい、悪いけど人工幽霊一号、扉をあけて」
別段文句はないが、オキヌちゃんは性格上自ら扉をあけるのではあるが、
とおもいつつドアの先を見て納得するカオスである。
「・・すごい洗濯物の量じゃなぁ」
「そうなんですよぉーもぉー」
と愚痴を零すのも無理はない。
数日前今までなんともなかった洗濯機が急に故障し、修理から帰ってきたのが昨日だという。
「ですからね、今日中に洗濯物を終わらせたいんですよぉー」
という事で昨日からほぼ徹夜状態だという。
「でも、あとほんのちょっとですから。そうそう、どうしたんですか?カオスさんは」
「ん?あぁ美神令子から聞いてないのか?ワシは・・・」
来訪理由を語ろうとした前に美神令子が下りてくる。
半ばくたびれ状態なのはオキヌちゃんが強引に手伝わせていた所為であろうか。
「早いわね、カオスもうちょっと遅くてもよかったのに」
「いや、ワシの造った物で故障があったとくれば落ち着かんわい」
洗濯機に続いて故障したのは、以前中世から勝手に拝借したカオス・フライヤー号である。
「ホント、機械の壊れ物ってのは続くってのは、満更ウソじゃないみたいね」
半分膨れ気味の令子もこの際はいたし方あるまいのではないか。
「まっ、人生とはすべからくそういう物よ、それよりブツは何処にあるのじゃ」
地下のガレージにあるわ、とカオスを案内する。
「あっ!美神さん、お洗濯はまだ終わって・・」
半分までは口に出したが、
「無駄か、はぁーあ」
諦め半分で洗濯を再開し始めた。
地下では早速修理にかかったカオスに近くの椅子に身を委ねる美神令子である。
「ふぅ助かったわ。カオスがきてくんなくちゃ、まだ洗濯よぉーもぉー参っちゃう」
「ええのか?ワシは別にいてくれなくとも修理はするぞ?」
「問題ないわよ。もうすぐ私の下僕がくるから。さ」
「下僕じゃと?あぁ・・・」
横島の坊主がと、来たときに、
「それはいいんじゃが、洗い立ての下着が何点か、なくなるやもしらんぞ、いやそれ以上に・・」
それ以上にそんなものを見られたくないと思うのが女性ではないかというカオスの最もな意見も。
「いいわよ、今更。私は。あいつの家に行けば必ず私の何かがあるんだから・・」
しかし、何時行っても令子のモノはあったとしても、オキヌちゃんなり他の居住人の下着は見つからないらしい。
「んふ。まぁ、そういう事」
何がうれしいのかは判らないが、余計な事を言った、カオス。
「ふーん、じゃがそれはおぬしの下着はみつかってもいい、程度のもので、本当の目当ては厳重保管されて・・」
「まさかぁ」
とは言ったもの少々怒りのラインが見えている。更に追い討ちをかけたのが、
「ふーむ。それに坊主にオキヌちゃんが一緒に洗濯とは・・まるで」
「まるで何なのよ」
「新婚さんのよーじゃな、あははっ・・・あがっ!」
嫉妬まじりのスパナが飛んできて怪我ですむのがカオスである。
「おーおー、女のヒスは万国共通、過去未来問わずじゃよな」
こぶをさすりながら、作業は続く。
カオスにとっても故障部分が奥底にあるのか、手間取っている。
そして人工幽霊一号から、横島が来訪したことを告げられた。
「おっす。アレ?美神さんは」
「横島さん。ごめんなさいね。休日によびつけちゃったりして」
というオキヌちゃんの腕には抱えきれないほどの洗濯物がある。
「いいって事よ、それより美神さんは?シロとタマモは?」
「シロちゃんはお散歩、タマモちゃんは昨日までは手伝ってくれたけどねー」
今日はデートという事でおめかしをしている所だという。
いくら獣とはいえ女の子、可愛い格好をしたいという事で昨日購入した新しいセーターやら仕込んでいるとか。
タマモはともかく、シロのケースも美神令子と同じで逃げ出したのであろうか。
じゃあ、手伝ってくださいね。と口にした瞬間、力が抜けたのか、一部洗濯物が床に落ちる。
「あらららら」
と、律儀に拾おうとするから、面倒なことになる。
「いいよ、俺が拾うから」
横島が身を屈め、一つ一つ手をやる中に。
「あっ。やだー」
横島の手の中には、下着が一つ、派手なものではないし、子供用でもない。という事は。
「こっ。これは・・!御免オキヌちゃん」
悪いことをしてるではないが、男としてはあやまる必要がある。
「まっ、参ったなー。下着類は全部洗ったとおもったのにぃー」
しかもよりによって、自分のものであるのが少々恥ずかしい。
「まぁ。いっか。返してくださいね」
「んあぁ」
見られたのが横島さんだし、とは口にしなかったが。
さて。
昼を回った頃、三度目のチャイムがなった。
既にうつらうつらしていた美神令子であったが、
「あん?誰が来たのよ」
ICPOからやってきた西条さまにお母様ですと、返答があった。
「あっ、そーか!書類を渡さなくちゃいけなかったんだ」
と、のそりのそりと、玄関に向かいつつ、
「ねぇーカオス、どうよ?」
何も答えず、エンジンを回すと、霊力仕掛けの特異なエンジン音を木霊する。
「もう大丈夫じゃよ。あとは周りをとりつけるだけじゃ」
得意満面の笑みで答える。
「そ、じゃあ後でお礼を兼ねて何か出すわ。上にいらっしゃい」
と、玄関に赴き、母と西条の挨拶も軽く済ませて事務所に向かう。
事務所入り口の前で横島がいる。
「おはよー。横島クンご苦労様」
「あぁ、美神さんのお母さん、それと・・そのた一人」
「ご挨拶だな。君も」
と西条が言う。
「あっ、そうそう、中では静かにしてくださいね」
と、音も立てずに横島がドアをあけると、
「あらあら。オキヌちゃんたらー」
美智恵の視界には寝息をたてたオキヌちゃんがいる。
「昨日からがんばってたみたいで、疲れがでちゃったんでしょーね」
そっとしてやりたい、という思いは皆一緒で、
「そうね。じゃあ書類だけもらって今日は早くかえりますわ」
若干不服そうな西条も仕事とあっては仕方が無い。
令子はそんな二人の気も置いといて、デスクを開け閉めしていたが、
「あれ?どこに・・」
事務所を見渡すと、自分でも忘れていたが、ソファーの隣にある、小机に書類がある。
「あっ。そうそう出しといたんだ」
ちらっと、横島を見て、
「あんた、取ってきて」
と、身振りで示す。
素直に従い、ソファーに向かえば、うたたねしているオキヌちゃん。
寝息まで耳に聞こえる場所で一旦覗き込んだのが、今回の事件である。
シロが散歩から戻ってきて、タマモが下から降りてきて、カオスが上に上がってきた丁度である。
昨日から洗濯をしていたオキヌちゃんとは言え、洗濯機が回っている間は休憩中である。
深夜番組なんかほとんど見ない彼女がテレビをつけるのも当然で、
古い仏映画を見るともなしに眺めていた。
内容はともかく、凄まじいキスの嵐であった。
その余韻が残ったのか、はたまた最近テレビでハマった『奥様は魔女』の影響か。
「ん〜、ダーリン」
と、寝ぼけ眼の状態で横島の首に手を回し、上半身ごと、自分の方へ持ってきた。
あとはおのずと知れた行為。
「ん?ああぁん!」
驚いたのは、何も横島だけではなかった。
当事者全員である。
「えっ、えっ、えぇ〜〜〜!」
もう何も考えられない横島は当然である。
「きゃっ」
と、言いながら手を離そうとしないオキヌちゃんもなかなかしたたか者であろうか。

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