ザ・グレート・展開予測ショー

コトノハ。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 1/26)


だけど、その時間は、とても心地よいものでそして、なによりも、楽しい。
いつまでも、いつまでもこんな時間が続けばいいとすら、思う。
そんなことは有り得ないと、わかっているのに。

つるっと、最後の一本のうどんを飲み込みながら、タマモはその言葉を聞いた。
ずずっと
容器を両手で持ち上げ汁を最後の一滴まで飲み干しどんっとテーブルの上におき
「なんて言ったの?」
と、恫喝するかのよーに言う。
その表情と声音は、酷く硬い。
普通ならば、いや普通のひとならば、その険しさに表情を引きつらせるはずである。
が、タマモの目の前にいる少年、真友はにこにこと人のよさそーな笑顔でいる。
ここは、とある美味しいと評判のうどん屋さんである。
美味しいところを見つけたから、食べにいかない?と真友に誘われ来たのである。
断じてこんな話を聞くわけではない。
が、真友はそんなタマモの様子にもまったく動じず、先程言ったことと同じ言葉を繰り返した。
「僕と、付き合ってください」
普通こーゆうものは、もっとろまんてっく(笑)な場所で言ったり、こー赤くなって照れながら、伏目づかいで言ってみたり、勢いに任せていってみたりするものだろーに、真友はうどん屋さんで、しかも人が食べてる途中になんでもないことのように言う。
はっきし言ってなにか違う。
「………………………あんたわかって言ってるの?」
コメカミに指をおき、なにやら耐えるよーに目を瞑ってタマモは言う。
その言葉には、先程までの険しさに加えてひどく重たいものが含まれている。
「うん。わかってる」
そんな言葉にも、にひっと歯を見せて、子供のように真友は笑い、言う。
そのあまりの気負いの無さに、ばっと、タマモが顔を上げ文句をいおうとすると─
真剣な、真友がいた。
まだ少年というに、相応しい年齢の子。
ようやく、タマモの本来の姿と同じくらいになった年齢の、人間の子供。
その子供のその瞳の色が真剣だと言っている。
「たくさん、考えたんだ」
その言葉は軽やかで淀みがないものなのにどこか、抗えないものを感じる声音。
「ほんとーに?」
「うん、僕と違う生き物なのも、君がずっとずっと生きるものなのも」
眼鏡の奥にある目には決意の色がある。
その口調が変わったわけではない。
けれど、その声が、言葉になり、すとんと、タマモのなかに入ってきたのだ。
このひとは、わかっている。
それだけのことが、ひどく嬉しい。

「ワタシは、キツネで、妖怪で、生まれ変わりで」
それを、恥じているわけではないけれども
人間なんて、全然すきじゃないし。
前世で、殺したり、生まれたばっかりのときに、自分を、何もしていない自分を殺そうとした。
「うん」
なのに、この少年は、優しくて。
それだけじゃない、人間にもたくさん…かどうかはわからないけれども優しいひとはいて
目の前のオトコノコは、すきだと言ってくれた。
全部知ってていっしょにいたいっていってくれた。
「けど、タマモちゃんがいいんだ」
きっとこの言葉をだすために苦しんだであろう。
だからだろうか?
その言葉はひどく、穏やかで強い。

「ずっといっしょにいるのは、たまもちゃんがいい」

不覚にも、目頭が熱くなった。
「だって、初めて会ったぼくのこと、助けてくれた」
それは、チケットをもらえたからであって。
「自分が妖怪だってばれても、助けてくれた」
そんなの成り行きで
「いつも冷たそうにみえて、でもすごく、優しい」
優しくなんか、ないのに。
君のほうがよっぽど優しいのに
「それに、僕がおじいさんになってもたまもちゃんは若いままって得した気分になるしね」
絶対埋まらない時間の差をそんなふうに冗談に紛らわしてくれる君が

「結局、そーゆうこと?」
ぐっと涙を堪えことさら冷たい口調で、告げる。
するとああっそんなことはないんだっと必要以上に慌てる真友がひどくおかしかった。
くすくすと、笑う。
笑いすぎて涙がでたが、それがどんな涙なのかは、ここでは、ヒミツである


おわり。

そうしてうどん屋さんを出た後

「結局返事は?」
「ん?なんでそんなこと言う必要があるの?」
「うわっひどいっ一世一代の勇気をふりしぼったのに」
「一生、ひっついて答えをまてばいいでしょ?」
「………うん!絶対離れないからねーっ」
「……はいはい」

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