ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−28a


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 1/26)





「さてさて。
 私は肉体労働は苦手なんですがね〜♪」

とぼけた表情を浮かべるヤマサキ。
これも一種のポーカーフェイスと呼べるのだろうか。

「安心しろ。
 ワシも苦手じゃ」

対してカオスも苦笑いを浮かべる。
らしくない。
全くらしくない行動を自分は取っている。

「それならここでのほほーんとお茶でも如何ですか?」

「抜かせ。
 貴様の左手の異常な霊気。
 気付かないとでも思ったか?」

科学者として、同門の後輩を諌めたい気持ちがあったことは否定しない。

「おやおや。
 気付いてらっしゃったんですか♪
 これも横島君を研究した成果の一つでして♪」

「フン……ハンズ・オブ・グローリーの亜流か」

だがヤマサキの左手の異常、そしてルシオラクローンを見た時、彼は決心する。

「霊波刀にせよ、文珠にせよ、特殊な才能を要するものばかり。
 彼はまぎれもなく天才ですよ♪
 まさにGSは天職♪
 埋もれたまま世を去る天才がいることを考えれば、これは奇跡に近いことですよ♪」

「あれはただのスケベなガキじゃ。
 本人もそれを望んでおる。
 アシュタロスの一件以来、それにどこか歪が生じていた。
 それが現状を導き出したのかも知れんな……」

この男は自分と根底的に違う。
自分は不死の身体を持つ人外の者。
しかし、目の前のこの男は自分の好奇心に忠実な、人外の心を持った化け物。

「またまた〜♪
 カオスさんだって文珠には興味があったんでしょ?」

「何とでも言え。
 貴様が自らのエゴに忠実なのは良く分かった。
 ここからはワシもエゴに従うことにしよう……
 今日、この日が貴様の命日だ」






―――― エピソード28:dance with Lucciolas(後編) ――――






マリアとルシオラクローンの戦いは熾烈を極める。
片や既にメイン武装を消費してしまっているマリア。
片や最初の奇襲で大幅に魔力を消費してしまったルシオラクローン――No.3。
その戦いは原始的なもの。
つまり、近接戦闘による直接攻撃――――殴り合いに発展していた。


「……」

無言で対峙する二人。
まずはNo.3が動く。
華麗な舞を踊るかのように、フェイントを交えた連撃を披露する。
それを直線的でシャープな動きで捌くマリア。

――――頭

――――腹

――――頭

――――腹

――――脚

――――胸

その全ての動きがマリアには読めてしまう。

「ドクター・カオス。
 マリア・負ける・要素は・ありません」

メタソウルが伝える怒りと昂ぶりに従い、綺麗にカウンターを見舞うマリア。
派手に吹き飛ばされるNo.3。


その脇ではヤマサキの霊波刀を銃――ルーン文字が刻まれた銀の弾丸を込めた――でカオスが受け止めていた。








――――小竜姫vsメドーサ――――




超加速を使える二人の姿は既にヒャクメにも見えてはいない。
時折、二人が停止して力比べをしている時のみ、その姿が確認されている。


「少しは甘いところが抜けたようじゃないさ?
 デミアンを不意打ちしたところなんて立派だよ!!!」


――――デミアンは無事に脱出したようだね。


メドーサが内心の呟きは言葉にすることなく、嘲笑しながら話しかける。

「力が正義なんてことは認めません!!!
 しかし、勝たねば何を語っても負け犬の遠吠えになることも事実!!!
 ならば!!!!
 私は勝って横島さんを救いましょう!!
 私は勝って正義を語りましょう!!!」

普段の小竜姫では考えられないほどの乱雑な攻撃――言い換えれば実戦的な攻撃を繰り出す。

その神刀の一振り一振りを三叉の鉾で弾くメドーサ。
二つの神具がぶつかり合うごとに空間が撓むのが目に映る。
組み合って、一旦停止。
力で相手の武器を押し遣りつつ、足元では互いに蹴りを見舞う。
そして一瞬だけ腕に込める力を抜き、メドーサの体勢が崩れるのを期待する。
しかしメドーサは微動だにしない。
そのまま押し切られ、却って小竜姫の体勢が悪くなる。

「フンッ!
 教科書通り以外の戦い方も出来るんじゃないか?
 しかしっ――――」

メドーサの持つ三叉の鉾が強く輝く!

小竜姫の目が一瞬だけ眩み、次の瞬間、爆発が起こる。


煙が晴れた後に現れたのは、半ば折れた状態の神刀を構える小竜姫の姿だった。







――――西条&雪乃丞vsルシオラクローン2体――――



「おい、雪乃丞君?
 彼女達・・・・・・強くなってきてないか?」

そう西条が話し掛けたのは、ルシオラクローンの猛攻を凌ぎきった時だった。

「やっぱりか?
 こいつらの一撃一撃が重くなってきてやがる・・・・・・。
 最初は俺が疲れ始めたのかとも思ったんだが」

魔力砲が乱舞する中、雪乃丞版サイキックソーサーで捌きながら答える。

「状況は・・・・・・ここに2体。神父さま達が1体。マリアが1体・・・いや、倒したな」

「残りは3体か・・・・・・」

「先生達は・・・・・・少し距離をとって傷を癒してるな」

「悪い予感がする。
 早めに決めるぜ?!」


そう言うや否や、雪乃丞が魔装術の出力を最高まで上げる。
それを見て、西条もまた、ジャスティスに自分の霊力を練りこみ始める。

さらに、その様子を見た2体のルシオラクローンが、魔力の波長を合わせ始める。




――――美神親子――――


「順調ね。
 メドーサ以外は」

戦場を見渡しつつ、令子が話し掛ける。

「順調過ぎるわ。
 もともと搦め手が得意な連中ばかりよ?
 何故に正攻法で来るの?」

「ルシオラのクローンを作るのが正攻法だっての?!!!」

娘の激昂に溜息を吐きつつ、美智恵が宥めるように言う。

「それに関しては否定しないわ。
 でも私が問題にしてるのは、その運用の仕方よ。
 どうして直接ぶつけて来るのかしら?
 各個撃破されることくらい分かりそうなものなのに・・・・・・。
 横島君に対する人質?
 違うわね。
 横島君が来るかどうかも分からないのに。
 私達の捕獲?
 これも違うわ。
 だったらもっと前に手を打つはず。
 何?何が目的?
 あるいは、勝利するつもりが無い?
 それがメドーサ達のシナリオ?
 引き分け、または敗北で何を得るというの・・・・・・?」



美智恵の思案顔を他所に、令子は戦場に舞い戻る。








――――横島忠夫&おキヌ&シロ&タマモ――――




脳内で大量にアドレナリンを分泌しながらも、横島は違和感を感じる。

どうもおキヌちゃんの様子がおかしい。
シロやタマモの様子もだ。
おキヌちゃんは怯えているし、シロやタマモは意外そうな表情だ。

「・・・・・・どうしたんだ?」

「アンタが殺気を放つところなんて、初めて見たから驚いてただけよ」

割と修羅場の経験回数が多いタマモが事も無げに応じる。

「そうか・・・・・・これが殺気を放つって言う感覚か・・・・・・」

フゥ――――

溜息一つを吐き、タマモが問い掛ける。

「で、何があったの?
 ヤマサキは知ってるけど・・・・・・ルシオラって誰?」

「ん?知らないんだっけ?
 それならシロもか・・・・・・」

そう言ったきり口を噤む横島。
どこか遠くを見る表情。
それを見てマズイと感じたおキヌが話題を変える。

「詳しい説明は後にしましょう?
 どうしてここでルシオラさんが出てくるんですか?」

シロとタマモの視線が痛いが、ここは横島のため。
おキヌは耐えた・・・・・・はずだったが、横島の殺気が一気にぶり返る。

「奴ら・・・・・・ルシオラのクローンを作りやがった・・・・・・」

「「「?」」」

「どうやったのかは知らん。
 だけど、俺は確かに見た。
 あれはルシオラだった・・・・・・」

「良く分からないでござるが、察するに女性でござるか?
 それらしき人物は見なかったでござるが・・・・・・」

同意を求めるようにおキヌとタマモを見る。

「美神さんと一緒に行動してましたけ「美神さんも来てるのか?!」

おキヌの言葉を遮って、横島が意外そうな声を出す。

「え、ええ。
 他にも美智恵さんや雪乃丞さん達も来てますよ?」

「そっか・・・・・・みんなに迷惑かけてるな。
 で、どこにいるんだ?」

キョロキョロ辺りを見回す横島。

「先に行きましたよ。
 ヤマサキを逃がすわけにはいきませんから」

「・・・・・・俺も行く。
 アイツとの決着は俺がつける!!!」






――――西条&雪乃丞vsルシオラクローン2体――――



バチバチバチッ!!!!


西条と雪乃丞が共同して放った霊波砲が、ルシオラクローン2体の魔力砲とぶつかり合っている。
それは徐々にペースを上げつつ、確実に西条達を押し始めていた。

「グッ・・・・・・まずいぞ?!!」

「こっちもいっぱいいっぱいだ!!!」

二人が余裕を持っていられた時期は過ぎた。
このままでは自分の放った霊波砲と相手の魔力砲が一気に降り注ぐことになる。


「まだまだよ!!!!」


叫んで加勢に入るのは令子。
西条達との力比べに集中していたルシオラクローンの背後を取って、一撃。
大したダメージにならないが、集中を乱すことに成功する。
そしてここぞとばかりに西条達が渾身の力を込めて押し返す!!!




――――冥子&唐巣神父vsルシオラクローン1体――――




「冥子君?!!」

慌てているのは唐巣神父。
苦手な肉弾戦をこなしつつ、気を失った冥子に声をかける。

「本物・・・・・・なのか?
 幻を使って冥子君を気絶させるなんて?!」

例によって、お化け屋敷程度のリアリティで冥子は気絶。
そのあまりのショボさに、却って真偽の確信を持てないでいる唐巣。
そして、そんな事情など何処吹く風でルシオラクローンは攻撃を続ける。

――――ま、まずい?!

次第に捌ききれなくなっていく唐巣。


西条達がルシオラクローン2体を倒したのも気付かず、戦い続ける。




唐突にルシオラクローンの動きが止まる。
怪訝に思う間もなく、距離を取る唐巣。


「?!」


唐巣の目の前で、ルシオラクローンの魔力が一気に充実し始める。


「どういうこと……だ?」






こうしてルシオラが再誕する。











今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa