ザ・グレート・展開予測ショー

『あ〜ん』


投稿者名:ブラックキャット
投稿日時:(03/ 1/25)



「う〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・・」
「・・・何やってんだ?タマモ?」

とある休日。美神に休みの許可を(命懸けで)貰い、久し振りに町のスーパー(の試食品コーナー)へ出掛けた横島は、そこで難しい顔をして悩み込んでいるタマモを発見した。

「う〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・・」

どうやらタマモは横島に気付いていない様で、変わらず唸っている。
何事かと思い横島がタマモの肩越しにその視線を追う。
すると、その視線の先には『カップきつねうどん 5個200円』と、『和の職人が作る高級稲荷寿司 5個1パック400円』の文字が・・・。

「・・・タマモ・・・らしいっちゅーか何ちゅーか・・・」

タマモの悩みに気付いた横島は苦笑しつつ、暖かい眼で彼女を見る。

「何悩んでんだよ、タマモ!」
「キャンッ?!よ、横島!?驚かせないでよ・・・バカ・・・」

タマモの頭を子供相手にする様にポン、と軽く叩いて話しかけた横島だが、そのタマモといえば見事な位に赤くなりながら振り向き、拗ねた目で横島を見る。
その仕種にドキリとしつつ、横島は彼女の前に並んでいるきつねうどんとおいなりさんに移して彼女に説明を促す。

「お小遣いが500円しかないのよ・・・いつものきつねうどんで長く楽しむのか、高級稲荷寿司の味を堪能するのか・・・決めらんないの」

さり気無く横島の服の裾を掴んで体を寄せつつ又悩みだすタマモ。
余りにも真剣な様子と、近付いて来た際に感じたタマモの甘い匂いに唾を飲み込みつつ、理性的になろうと深呼吸してから自分の財布の中身を思い出す。
財布の中身は約500円。
給料日まで約1週間、これだけで生き延びなければならない。
余分な金など・・・ここで使える金など無い。
無いのだが・・・真剣なタマモの表情と自分の服の裾を掴んでいる小さな・・・小さな手を交互に見遣り・・・そして決心した。

「タマモ!」
「え・・・?何よ」
「お前はこっちのおいなりさんを買えよ。俺がきつねうどんを買ってやるから。
・・・ま、素うどん位は少し貰うけどな?」

優しく・・・最初はちょっと強い口調になってしまったが、最後は冗談めかして言う。
その言葉は・・・その優しさはゆっくりとタマモの頭に浸透し・・・そして理解する。

「バカ!私より生活の厳しいアンタにおごって貰うわけにはいかないじゃない!」

怒り心頭。と言った口調を装いながらも、その顔は彼の優しさに触れ嬉しさから緩んでいる。

「気にすんなよ!素うどんは少し貰うって言ったし、晩飯は美神さんとこでたかれば生きてはいけんだから。な?」

横島に言われ、又・・・今度は横島の事で悩み始めるタマモ。
ふと彼の顔を見、優しく微笑んでいるのを見て赤くなって俯く。
そんな事を数回繰り返している内に決心がついたのか、彼を気遣う視線を投げ掛けながらその提案を受け入れる。
その後、二人で会計を済ませ、横島の住んでいるボロアパートまで歩く。
結局おごって貰う事にしたタマモが、二人で食べようと提案したからである。
そして、横島の部屋に着いた二人は早速食べようと、おいなりさんのパックを開き、きつねうどんのカップにお湯を注ぐ。
まずはタマモがおいなりさんを一口、食べる。

「美味いか?」
「うん・・・幸せ」

本当に幸せそうに言うタマモに、横島も心が温かくなる。
カップに書かれた指示の通り3分待って、きつねうどんが出来上がる。

「ほら、御揚げ。熱いから気を付けろよ?うどんは貰うかんな」

おいなりさんのパックのふたにきつねうどんの御揚げを乗せ、素うどんをすする横島。
その横島を見、おいなりさんを見、考え込む事数十秒。
決心した様に頷き、ゆっくりと横島においなりさん片手に近付くタマモ。

「ん?どした、タマモ?」
「横島!あ〜ん!」
「えっ!?」

近付いて来るタマモに気付き、声を掛ける横島だが、その後の行動に目を白黒させる。
それでもタマモは白い肌を真っ赤に染めながらも『あ〜ん』の体勢のまま粘っている。
・・・・・・気まずい・・・タマモにとっては恥ずかし過ぎる沈黙が降りる。

「あ〜ん!!」

ついに何かを吹っ切った横島はタマモの差し出すおいなりさんを食べる。
よく咀嚼し、飲み込んだ所で急に恥ずかしくなって赤くなって固まる。
双方赤くなって見つめあう横島とタマモ。
その間にあるのは先程の気まずい雰囲気ではなく、気恥ずかしげな・・・甘い空気。
何も知らない第3者が見たら初々しいカップルに見えたかも知れない。
互いに意識しながら残ったのをゆっくりと食べる二人。
暖かい空気は・・・二人の心をも暖かくし・・・優しさが包んだ・・・。



―おまけ―
その後、タマモが『あ〜ん』したと何処からか聞きつけ、キレた事務所のメンバーから折檻を喰らった挙句、晩飯ありつけずに死に掛けたそうである・・・。

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