帰ってきた横島 ―9―
投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 1/25)
「やれやれ・・・・・・しょうがないでござるなぁタマモは・・・」
そろそろタマモが落ち着いてきたかな?という所で、今まで大人しくしていたシロが横島に近づいてきた。
その表情は・・・・・・・・・ニコニコと笑みを浮かべており、とりあえずいつものシロと何も変わらないように見える。
横島にはそう見えた。
・・・・・・あれーーっ?!!・・・・・・
だからこそ、横島はそれを不思議に感じる。
だって・・・・・・
「ん?・・・どうしたでござるか、せんせい?」
チョンと小首を傾げて、シロが横島に尋ねる。その様子は酷く愛らしい・・・・・・
だが、そんな事に気が付く横島じゃあ無かった。特に今はとってもとっても危険な状況だしね。
なので、横島が口にしたのはこんな台詞・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・おまえ、さっきまで・・・・・・えっと・・・・・・・・・あー・・・・・・なんだ・・・その・・・・・・物凄く怒って・・・・・・・・・・・・無かったか?」
「ぬっ?」
横島の言葉に、一瞬だけシロの眉根が寄る。しかしそれも一瞬・・・・・・シロの表情は再び笑顔になった。
「ハハハハ・・・・・・何を言っておるでござるか?んもー・・・いやでござるよー・・・拙者はせんせいが帰って来てくれたのでとても嬉しいのでござる♪もう嬉しくて嬉しくて・・・・・・ほら、見てくだされ?」
―― パタパタ、パタパタ ――
半身になって、自分の尻を横島のほうに見せ強調する。パタパタと左右に振れる尻尾が『拙者、とっても嬉しいでござるよ♪』と自己主張していた。
「それにほら?」
そしてもう一度、最高の笑顔を横島に向ける。擬音は『エヘッ♪』だ。
「とっても“ぷりちー”な笑顔でござろう?」
「ハ・・・ハハ・・・・・・・・・・・・あ、ああ・・・うん。そうだな・・・・・・・・・うん、うん・・・・・・とっても可愛いぞ、シロ!いやーー!!なんて“ぷりちー”なんだろうっ?!ハハッ!ハハハハハッッ!!」
・・・・・・お、おかしいっ?!・・・・・・
横島は唸った。シロの態度がどう考えてもおかしい。いったい、どういうことなのだろうか?横島はもう一度最初の状況を思い浮かべてみる。
( Side 横島 )
最初に目に入ってきたのは美神さんだ。「あ、美神さんだ!」って思った次の瞬間には、もう・・・・・・・・・思い出すのも恐ろしい程の視線で俺を睨んでたっけ・・・・・・
そしてその次、美神さんの後ろに見えたのがおキヌちゃんとシロとタマモだった。
―― この3人も怒ってたよな? ――
さっきはタマモに頭突き食らわされたっけ。まったく・・・・・・
自分の体に傷つけてまで怒りをぶつけるなんて・・・・・・・・・そんな・・・
―― そんな価値、俺には無いって ――
狐火を思いっきりぶつけてくれればタマモは怪我しなくて、俺は全身大火傷になって・・・・・・
・・・・・・そうしてくれて良かったんだぞ?・・・・・・
チラと、右腕にしがみついているタマモを見てみる。ようやく少し落ち着いてきたみたいだけど、それでもまだ俺の腕を離していないタマモ・・・・・・・・・よっぽど・・・
―― 辛い思いをさせちゃったんだな ――
とにかくこの1年・・・・・・何度も何度も繰り返し考えていたのに・・・・・・
改めて自分がしたことが「酷い」事だったんだって思う。
―― きっと ――
俺が居なくなったから、除霊に引っ張り出されるようになったんだ!タマモは、・・・本当はのんびりしてるほうが好きみたいだったから、きっとそれは辛かったろうな。
後はきっと、シロが色々とごねたりしたんじゃないのか?今まで俺に向けてたわがままを、全部タマモに向けたに違いない!なんて言ってもルームメイトだしな。
―― うん、そうに違いない! ――
そう言えばさっきのタマモの行動って、結構・・・
―― 美神さんと似てなかったか? ――
前はもっとクールで、他人に無関心を装ってて、でも本当は結構寂しがり屋で・・・・・・
普段は大人っぽい表情も見せるのに、好奇心旺盛で・・・興味を持ったらとたんに子供っぽくなっちゃって・・・・・・・・・
まぁ、最後の泣き出しちゃうって所は決定的に違うけど・・・・・・・・・・・・あの二人って、根っこの所は結構似たものどうしな二人なのかも知れんなーー?
どうだろ?こんな事思うの俺だけかな?
・・・・・・・・・って、今はタマモの事じゃなくって!
俺はもう一度シロを見る。
―― ニコニコ ――
・・・・・・笑ってるな?
―― パタパタ、パタパタ ――
・・・・・・尻尾も綺麗に振れてるぞ?
―― じゃあ ――
やっぱり今、シロは嬉しいのか?・・・・・・・・・・・・でもなぁー?
さっき俺が見たとき、確かにシロも鬼のような形相をしてたはずだ。・・・・・・・・・本当に?・・・・・・・・・・・・ん、間違いない。
じゃあなんで今はこんなに嬉しそうなんだ?んーーーーーーっ?!ああああ!?わからーーんっっ!!?
( Side End )
横島がそんな、かなり勘違いを含んだ事を考えている時・・・シロはジッと横島を見つめつづけていた。横島の右腕には、タマモがギュっと抱きついているのが見える。
本当は自分も、同じようにすぐさま抱きついていきたいのだが・・・自分で自分に課した枷がそれを許さない。
「せんせい?・・・・・・何を考えているでござる?」
考え事をしている横島にシロが尋ねた。途中でタマモの方を見やったり、なんだかその後で凄く優しい視線をタマモに向けたりしてるので、なんだか・・・
・ ・・・・・ムッとするでござる・・・・・・
シロはなんだかモヤモヤした気持ちが湧き上がってくる。それがタマモに対しての気持ちなのか、それとも横島に対する気持ちなのか・・・・・・自分でもちょっと分かっていない。ただ・・・
それでもシロは笑顔だった。
一方横島は、流石にさっき考えていた事をそのまま口にするわけにもいかず、
「いやー・・・・・・その、なんだ・・・・・・・・・シロ、おまえ・・・なんだか・・・・・・・・・ちょっと変わったな?」
「なっ?!」
何気なく横島が口にした台詞にシロは愕然とする。なぜならそれは、シロがこっそりと決めていたルールを根底から覆す一言だったから・・・・・・
・・・・・・拙者、変わってしまったでござるか?・・・・・・
シロの笑顔は凍りつく・・・・・・
( Side シロ )
―― そんな!? ――
せんせいが言った一言は、とても大きな衝撃でござった。何故なら、拙者は全く逆の事を言って欲しかったからでござる。
―― シロは変わってないな ――
そう言って欲しかったでござる。拙者、せんせいの居ない所でなど・・・
―― 変わりたくなかったでござる ――
「ど・・・・・・?どうした・・・シロ?」
―― はっ!!? ――
いかんでござる!せんせいが不思議そうに見てるでござるよ!笑うでござる!笑顔でござるよ!!
「な・・・なんでもないでござるよ?ハハ・・・・・・いやー、拙者・・・変わったでござるか?ますます“ぷりちー”さに、磨きがかかったでござるかね?」
「あー・・・い、いや・・・・・・そういうことで無くてな?・・・」
―― 言わんでくだされ、せんせいっ! ――
バカな想いだという事は百も承知でござる。他人には聞かせられん話でござる。ほんとうに些細な事にこだわっておると・・・・・・
―― 自分でも分かってるでござるよ ――
「・・・・・・あ、いや・・・でも・・・・・・」
でも、せんせいっ!
拙者はこの1年・・・せんせいが居ったあの時と、何も変わらないように努力してきたのでござるよ?
別に誰と約束した訳でもござらん!今後、誰かに話すことも無いでござるっ!!
それでも拙者は努力してきたのでござるよ・・・
―― せんせい ――
拙者は・・・・・・
―― せんせいのお傍で成長していきたいのでござるよ ――
「・・・・・・言われてみれば・・・・・・」
拙者の成長というものは・・・・・・それ以外の何かでも、とにかく変化というものは、拙者とせんせいの「絆」になってくれる物でござる。
拙者はまだ成長期でござるから、1年も有ったらきっと・・・・・・
―― 今とは全く違う拙者になってしまう ――
あの時にそう思ったでござるよ。だからこそ、できる限り成長しないようにしていたでござるのに!
しかしそれでも、
―― 拙者は変わってしまったでござるか ――
「・・・・・・ちょっと綺麗になったか?」
―― は? ――
「は?・・・・・・せんせい?今、なんと言ったでござる?」
「え?いや、だから・・・・・・・・・1年見ないうちに、顔つきが・・・それに体つきも何となく・・・・・・・・・女っぽく綺麗になった・・・かなあ?って・・・」
―― お、女!!? ――
せんせい!拙者を!拙者を!?
―― 女として見てくれるでござるかっ!!? ――
拙者、せんせいに「女」として見てもらう事なんて無いと思っていたでござるよ!?どこまで行っても、拙者はせんせいの「弟子」だと思っていたでござる!!すっかり諦めていたでござるよ?!!!
本当でござるか?!嘘ではないでござるかっ!!?せんせいが拙者をっっ?!!!
せんせいが!拙者を!!女としてーーーーーーっ!!!!
「せんせーーーーーー!!!拙者、感激でござるーーーーー!!!!」
( Side End )
「どあっ?!!シ、シロっ?!」
シロは、横島の空いている方の腕に飛びついていった。ギュっとしがみ付く。
さっきまであんなに悩んでいたのに・・・・・・・・・
・・・・・・・・・結構、似たもの師弟なのか?
横島も面食らいはしたが、とりあえず「俺と逢えただけでそんなに感激するだなんて?!くそうlっ!!俺はこんなに師匠思いの弟子を哀しませてっ!!ごめんなシロ!明日からいくらでも散歩に付き合ってやるからなっ!!!」と、いい感じで勘違いしつつ納得していた。
やっぱり似た者・・・・・・・・・
・ ・・・・・・・・・・・
右手にタマモ、左手にシロ・・・・・・そんな身動きの取れない横島は・・・
今は自分の正面に居る人物と視線を交差させている。
美神と共に、横島と一番古くから付き合いのある人物・・・・・・
ことさらに無表情であり・・・・・・・・・その右手が・・・
―― パンッ ――
「!!?」
横島の頬を張った。
・・・・・・・・・おキヌは無表情のまま、横島を見つめている・・・
今までの
コメント:
- 今読み返してみたら、今回のはちと失敗作かも・・・
なんだかちょっと読みづらいや。 (KAZ23)
- はじめまして!KAZ23さん!この帰ってきた横島を
前から大変おもしろく読ましていただいております。
このオキヌちゃんの行動がとても気になります。
はやく次のが読みたいな〜!! (光)
- 勘違いし通しの横島クンに賛成票1票です(笑)。自分の成長は師匠の横島クンが目に見えるところでしたい、と思っていたシロの心情が印象的でした。そんなシロに投げかけた横島クンの何気ない「ちょっと綺麗になったか?」の一言がどれほど影響力のあるものか、イマイチ分かっていない横島クンが「らしい」と思いました。令子、タマモ、シロととりあえずは連続して彼の帰還を歓迎してくれたようですが、どうやらおキヌちゃんは一筋縄ではいかないようですね(汗)。凄く怒っているみたいですし。次回、どんな感動(?)の対面が待ち受けているのか楽しみにしております♪ (kitchensink)
- おキヌちゃんが横島をぶったーっ!!!
それほどまで怒っていたのですね…何ならネクロマンサーの笛での悪霊攻撃でもかましちゃえ♪
次回も楽しみにしてます♪ (ブリザード)
- 一番最後の、おキヌちゃんが横島の頬を張ったというのが気になりますね。
やっぱし、この師あってこの弟子ありですか。
次回、期待してます! (空の助)
- 読みづらい?私にはそう感じませんが・・?
まぁ作者にしか分からん領域ってものがあるんだと納得しときます。
今回もお話面白かったっす。続き楽しみにしてるっす (レナス)
- にゃあ♪
よかったですよぉ♪
タマモちゃんに続きシロが引っ付いてますね。横島君。
>「え?いや、だから・・・・・・・・・1年見ないうちに、顔つきが・・・それに体つきも何となく・・・・・・・・・女っぽく綺麗になった・・・かなあ?って・・・」
・・・天然タラシ?(^^)
嗚呼!次回ではおキヌちゃんの内面描写があるんですね?
いつも内面の描写が上手いなぁ・・・と思ってみてますんで楽しみです♪ (ブラックキャット)
- お、おキヌちゃんがああ!?驚愕の展開です!! (えび団子)
- おキヌちゃんが……横島の頬を張るなんて……しかも無表情……本気で怒ってる!!
とっても面白かったです。次回も楽しみにしています! (リュート)
- 光さん、ブラックキャットさんはじめまして〜☆感想ありがと!
今回は、殆どの皆さんがラストに注目してますね。
ま、たまにはこういう衝撃的な「引き」を使おうってことです(w)
当然次回はおキヌちゃんっすよ。
ギャグ無しっす。 (KAZ23)
- 失敗作だなんてとんでもないですよ。
シロもかわいかった事ですし♪
おキヌちゃんの行動が気になります!!
急いで次へ移ります!! (ハルカ)
- む、そう言っていただけると嬉しいのですが
所々に説明不足な所が出てまして
まだまだ未熟です。
でも、シロが可愛く書けてたなら良いや! (KAZ23)
- シロが、鬼の形相ねぇ…
横島に向かって?考えられない…考えられなぁぁぁいっ!!
という事は兎も角、次回も体にお気をつけて、頑張ってください。 (相良)
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