ザ・グレート・展開予測ショー

彼の大きさ(1)


投稿者名:ANDY
投稿日時:(03/ 1/24)

「じゃあ、みんな行ってきます!」
 そう言って横島は夕日を背に事務所を出て行った。
「お土産忘れるんじゃないわよ」
「お気をつけてくださいねえ」
「せんせ〜い!せ、せっしゃも〜」
「黙れ、バカ犬!横島、私にもお土産忘れずにねえ」
 誰がどのセリフかはあえて言わないが、そんな声を背に受けて横島は歩いた。
 向かう先は成田空港。
 季節は春を迎えたばかりだった。

―一週間前・事務所―
「はあ〜?休みをくれだあ?」
「はいっす」
「どれぐらい」
「一週間ぐらいなんすけど」
「はあ?一週間も休んであんたどうすんの?」
「いえ、実は―」
 横島が言うには、何とか奇跡的に高校を卒業できるのでナルニアにいる横島の両親が一応祝ってやるからこっちに来い、との電話があったそうだ。
 さすがに横島も学費を出してくれていた親が祝ってくれると言っているのを無碍には出来ないので美神に休みをもらえたら行く、と返事をしたとのことだ。
「あんた、卒業できるんだ」
「まあ、追い出されるようなんすけどね」
 苦笑しながら答える横島。
 噂では教師達が一丸となって横島を卒業させようと色々と画策したらしいのだが、卒業できるのに変わりはないので横島はそれを甘んじて受けることにした。
「いいわよ。行ってらっしゃい」
「本当っすか?!」
「ええ。ただし、行くまでしっかりと働きなさいよ」
「了解っす」
 こうして横島はナルニア行きを許可されたのだった。

―横島が出かけてから二時間後―
「せんせ〜い」
「だあ、うるさいわよ!バカ犬!!」
「狼でござる!!!」
「二人ともうるさい!」
「まあまあ、落ち着いてくださいよう」
 横島を見送ってから二時間が経ったのだが、事務所のみんなはどこかいつもと違って、覇気がなかった。
 シロなど二時間前からずっと枕を抱いて泣いているし、タマモもどこか元気がない。美神とオキヌも少し元気がなかった。
 一週間は短いようで長い。
 一週間もあの男がいないと言うことを再認識して、みんなどこか元気がなくなってしまったのだ。
 それだけ横島は全員にとって大きな存在になっていたのだ。(全員自覚はあまりしていないようだが)
「は〜あ。今日は依頼もないし、暇ねえ」
「なら、せっしゃらも先生のところに」
「却下」
「あううう〜」
「誰がお金を払うのよ。それに明日は予約があるんだからね」
「まあまあ、美神さんもそのへんで。シロちゃんもちゃんとお留守番してましょう。一週間なんてすぐなんだから」
「そうよ、バカ犬。何も一生会えなくなるってわけじゃないんだから」
「ま、そういうことよ。さて、オキヌちゃん。お茶入れてくれる?」
「あ、はい。わかりました」
「あ、そろそろドラマの時間だ」
「あうううう〜〜〜」
 その様子はいつもどうりだった。
 横島がいないだけで、いつものように過ごしていた。
 次の言葉をテレビから聞くまでは。
『―本日18:46成田発ナルニア行きの飛行機が突如爆発し太平洋上で墜落しました。乗客乗員の生存は絶望的とのことです。繰り返します。本日―」

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