ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島―7―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 1/23)

―― ブルブルブルブルブル ――

「はい、私です。ん・・・・・・ご苦労様。こっちはもう、成田空港が見える所まで来ているわ。直ぐに行くから、私の到着まで決して彼から目を離しては駄目よ?・・・・・・よろしい、では!」

―― ピッ ――

美智恵の携帯電話にオカルトGメンの職員から連絡が入ったのは、前方に成田空港が見えて来た頃だった。

「ママ!どうだって?!」

隣に座っていた美神が食いつくように問う。
それはおキヌも・・・スペース不足の為にそれぞれ狼、狐形態を取っているシロ、タマモも同じ思いでいるようだ。全ての視線が“じっ”と美智恵を凝視していた。

「身柄の拘束は成功したわ。とりあえずこれで、一安心って所ね・・・・・・」

先程まで非常に張り詰めていた表情が、少しだけ穏やかになり・・・美智恵は答える。
それを聞き、他のメンバー達も“ほっ”とした表情を見せるが、それも一瞬だけ・・・

―― ギンッ!! ――

再び全員が、鬼の形相で成田空港のその建物を睨み付けていた。
そして・・・・・・

・・・・・・帰ったらオージ○ジ、帰ったらオ―ジ○ジ・・・・・・

今にも泣き出しそうな表情のパイロットが、心の中で延々とそう繰り返しているのだった・・・

・・・・・・・・・・・・





・・・・・・・・・・・・

「おいっ!おっさんっ!!」

前大戦の後、そこそこ強力な神魔族が相手でも効果を得られるように研究、開発された、全く新しいタイプの最新式特殊呪縛ロープ(試作先行量産型)で頭以外の全身を隙間無く束縛された横島。
身動きは精々、芋虫か尺取虫のように這いずり回るぐらいしか出来ない状態で転がっている横島・・・

「どうした?妙な真似はするなよ!?」

そんな横島がオカルトGメンの隊員の一人、現在この現場を指揮していると思われる人物に話し掛ける。
Gメンの男は慎重に横島を観察しながら聞き返した。

「とりあえず、大人しくするっ!・・・じき、隊長が来るみたいだしな・・・・・・って事は間違いなく美神さんやみんなも一緒なんだろうし、このまま待ってた方が話は早いし・・・」

観念したのか、横島は笑みを浮かべている。

「・・・・・・とりあえず話が早いってだけで、身の安全は絶対に保証対象外だって事に問題が有るが・・・・・・ハハハ・・・ハハ・・・」

横島の笑みは自嘲的な物に変わった。

「とにかくまあ・・・・・・本当は良くないけど、それは良い。それよりも・・・」

そこで横島の雰囲気が変化する。それまで見せていた「なんだかパッとせんなーこいつ。ほんまにGSなんか?」という物から、明らかに一般人ではない物・・・戦う人間の持つ独特のソレを纏った雰囲気に・・・

「・・・あいつ・・・・・・無事だろうな?」

その雰囲気を感じて、部屋の中の緊張感が瞬時に増した。
今、自分たちが捕縛していると思っていたモノは・・・決して無力化された訳ではない。この状況で何かが出来るとは思わないが、しかしそれでも今は安全な状況ではない・・・・・・
部屋の中の者全員が、同じ思いを抱く。

「あ、あいつ?・・・・・・ああ・・・」

横島の言う“あいつ”というのが何なのか?オカルトGメンの男は直ぐに思い至った。

「む、無論大丈夫だ・・・何もしていない。あっちにはうちの女性スタッフが付いているから心配は無いぞ・・・・・・」

冷や汗を拭きながら、横島の質問に答える。

「ん・・・ま、信用する。・・・・・・アンタ達が何かするとは思ってないしな。」
「う、うむ!信用してくれ!」

横島の雰囲気が軟化したので、周囲にいたオカルトGメン達も“ほっ”と緊張の糸を緩めた。

「・・・何もするなよ?」

―― !! ――

緊張が緩んだ一瞬を狙ったかのように放たれた一言。
それは、言外に・・・・・・

―― 何か有ったらただじゃ済まさない ――

という意味合いを含んだ静かな恫喝。
無防備な一瞬を突かれた部屋の中の全員が、さっきまでの緊張など何物でも無いと言えるほどの・・・

―― 恐怖 ――

そう呼ぶべきモノと対面してしまった・・・・・・
部屋の中を酷く重い空気が支配していく。

―― バダンッ! ――

「ひっ?!」

そんな時に部屋の扉が乱暴に開けられたものだから、一番近くにいた歳若いオカルトGメン隊員が小さく悲鳴を漏らしてしまった。・・・しかも腰まで抜けている。

「あ、み・・・美神さ・・・」

扉を開けた人物は横島の良く知る人だった。もう1年も会っていないのだが、自分の記憶にあるその人と全然変わっていない。

・・・・・・ああ、俺は帰ってきたんだな・・・・・・

一番最初に思ったのは間違いなくそういう感情だった。
だがしかし!
そんな感情はあっという間に消し飛んでしまう。

・・・・・・おおおおおおおお、怒っとる!あああ、当たり前だけど!かかかかか、覚悟してたけどぉっ!!めっ、滅茶苦茶っ!滅茶苦茶あぁっ怒っとるうううっっ!!!!・・・・・・

横島は竦み上がった。

・・・・・・ああああっ?!!しかもおキヌちゃんもっ!?シロもっ!!さらにはタマモまでっっ!!?死ぬっ!俺は今日死ぬっ!!いや駄目だ!!俺はもう、簡単に死ぬわけにはいかんっ!!!ああああああっっ!!?だがしかしっ?!これは死ぬっ!!無理だっ!!!絶対死ぬっっ!!!!・・・・・・

ドアを開け、横島を見つけ・・・
ゆっくりと、一歩一歩近づいてくる美神・・・・・・
その後ろに見えるおキヌ、シロ、タマモ・・・・・・・・・

・・・・・・死神っ?!死神はどこだっ!!?居るだろっ?!!絶対その辺にいるんだろうっ!!!!?・・・・・・

―― グイッ ――

すまき状態の横島を、無造作に片手で引き起こす美神・・・

―― ブチッ ――

「あああぁっっ!!?1000マイトの霊圧にも耐える特殊呪縛ロープがああぁっ!!?」

メートル単価3億3000万円の特殊呪縛ロープを素手で引きちぎる美神・・・・・・
到底信じられないものを見てしまい、絶叫して固まるオカルトGメンの男・・・

これが、1年振りに帰ってきた横島と・・・・・・
そんな横島を待ちつづけていた事務所のメンバーの・・・・・・

・・・・・・・・・感動の再開のはじまりだった。






・・・・・・・・・・・・

「・・・伊達雪之丞だ。すまんが今、携帯には出られん。仕事の依頼ならこのままメッセージを入れてくれれば良い、後で掛け直すから連絡先を忘れるなよ?・・・・・・ピーーー」
「雪之丞君、聞いてくれたまえ!横島君が見つかったよ・・・・・・残念ながら生きているらしいがね。なあに、現在先生と令子ちゃん達が捕獲に向かっている・・・・・・直ぐに棺桶に片足を突っ込むことに成るだろう。一応、詳細が知りたければ僕か先生の携帯電話に連絡をくれたまえ。確か番号は知っていたはずだね?それでは!」

―― ピッ ――

「くそっ!!なんで僕が、彼の為に骨を折らなきゃいかんのだっ!?」

美神令子除霊事務所の隣にあるオカルトGメンの事務所では、西条が“彼”の関係者達に次々と電話を掛け続けていた。
彼の関係者はそれなりに多い。しかもその大部分が連絡を取り辛いような人物ばかりだった。

「学校妖怪の愛子クン・・・・・・くそっ!これは直接行かなきゃ無理だなっ!!」

忌々しげに吐き捨てる。

「ふふふふ・・・・・・だが、しかし!みんな彼には酷く腹を立てていたからな・・・一刻も早く全員に連絡して、彼を思いっきり困らせてやらなければ・・・ふふふ・・・・・・」

そして楽しげに笑う。

「そして花戸小鳩クン・・・・・・彼女には直ぐに修羅場を作ってもらわねば・・・いや、もうおキヌちゃんとシロクンが向かっているんだったな?くくくく・・・・・・そろそろ着いたか?・・・・・・・・・くっ・・・くくくくっ・・・」

デスクの向こう側には、まるでキ印を見るような目で西条を見ているオカルトGメンの職員達がいるのだが・・・・・・
幸か不幸か、西条はそれに気付いていなかった。

「あ、エミさんですか?オカルトGメンの西条です。実は・・・」

果たして最終的に不幸になるのは横島なのだろうか?

それとも・・・・・・・・・

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