ザ・グレート・展開予測ショー

妙神山(後)


投稿者名:運値
投稿日時:(03/ 1/22)

都内某所の廃ビル。
そのビルに似つかわしくない華やかな一団がここに集まっていた。

「今日の仕事は、結構きついわよ?準備は良いかしら」

ピッチリとしたスーツを着た女性が号令をかける。言わずもがな、彼女の名前は
美神令子。GS美神の主人公の一人であり、美神事務所の所長。他、守銭奴…エ
トセトラ・エトセトラ…数々の悪名(?)を轟かせる完全無敵のGSである。
そして、順にオキヌ・シロ・タマモがこの一団を構成している。

「横島さんがいなくなって一週間ですね…」

オキヌが呟く。それに同調し他の2人も頷く。
美神は一瞬言葉に詰まるが、仕事は仕事。これから行くのは危険な廃ビル。GS
の命をかけた戦場だ。少しの甘えが死を招く。

(…彼には死んで欲しくないから…)

少し言い過ぎた。ほんの小さなミス。自分も偶には犯すこと。でも、それが何時か
大事故を招く。横島君にはその自覚が足りない。

だから、少しきつく言った。これで彼が事務所に戻ってこないとしても、それはそれ
でしょうがない。彼が死ぬよりマシだから。

美神令子は素直ではない自分の性格に、心の中で苦笑しながら気持ちを入れ換える。

「何時までもあの極潰しの事なんて考えてないでさっさと行くわよ!!!」

(…無理しちゃって)

オキヌは考える。美神はあの性格だ。横島の失踪を一番心配していたのは他ならぬ美
神であったことを彼女は知っている。
この事務所で横島の心配をしていない者は皆無だった。普段何とも思ってないという
顔をしていても、美神は一人になったとき溜息の回数が増える。
例えそれを指摘しても、彼女の性格だ。殴る相手がいなくなってストレスが溜まって
いるだけだと答えるだろう。

だから、その代わりに自分が言うのだ。彼女の代弁者として。また、自分の思い出も
あるのだから。



それは突然のことだった。
彼女達が廃ビルに入ろうと準備を始めた瞬間、彼女達の後ろに人の気配が現れた。
その尋常ではない気配に始めに気がついたのは人間以上の感覚を有するタマモと
シロであった。

「だ、誰でござるか?」

彼女達の振り向いたその先には何やら申し訳無さそうな顔をした女性が立っていた。

「ちょ、ちょっと小竜姫様じゃない。どうしたのよ?」

彼女にいち早く気付いた美神が彼女に声をかける。彼女の顔は尋常ではない。もしか
したら横島君に何かあったのか。美神の心が僅かにざわめき始める。
もしかして、あいつの事だ。小竜姫にチョッカイを出して天罰で…

「ええ、横島さんのことでちょっと……」

彼女の顔色。横島に何があったのか。知りたい、でも怖い。そんな気持ちが美神に広が
る。
果たして、一早く口を開いたのはシロであった。

「先生に何かあったんでござるか?…もしかして…死…」

尋常でない彼女の顔色に思わず横島の死の影がちらつく。しかし、小竜姫はその台詞を
血相を変えて否定した。

「い、いえ、横島さんはとても元気です。もう、元気過ぎるくらい…」
「な、なんだ。驚かさないでよ」

美神が安堵の溜息を吐く。一同も大体同じように安堵している。

「あの馬鹿、小竜姫様のところに厄介になってたのね?」

一難過ぎたら、彼の現状が気になる。美神は小竜姫の態度を気にしつつも横島について
尋ねる。

「…ええ、そうです。修行をしていました。それで…」

彼女は更に申し訳なさそうな顔で縮こまる。唯でさえ小柄な彼女が益々小さく見える。

「…で、ヨコシマは今ここに来てるの?気配はしない様だけど」

タマモが核心を突く。

「…ええ。来ているわ」
「本当?」
「本当です。…出てきてください…」

その瞬間、小竜姫の額に冷や汗が大量に流れたのを気付いた者はいただろうか。
彼女の呼びかけと共に2人の人影がビルの谷間から踊り出る。

一人はベレー帽を被ったジークフリート。魔界正規軍の情報仕官である男だ。そして
もう一人は…。

「よ、横島さん?」

迷彩服を着込み、重火器を体に装備した横島だった。目つきは普段のそれとは大いに
異なって一瞬誰か分からなかった程の変貌を遂げている。

「…申し訳ありません。全て私の監督不行き届きです」

それを聞いて、ジークフリート(以下ジーク)はさも承諾出来ないといった顔で小
竜姫に言う。

「小竜姫、私の教育は完璧です。それをこれからお見せしましょう。このビルの除霊と
いう形でね」

ジークがにこやかに胸を張り言ってのけるのと対照的に、小竜姫は額から大量の冷や汗
を流し始めた。

何が何だか分らないといった美神一団を尻目に、ジークは高らかに戦闘開始を告げた。

「今この時をもって、貴様は蛆虫を卒業する。貴様はGSだ」
「サー、イエッサーっ!!」

地を砕くような声で横島は答える。

「さあ、貴様はこれから最大の試練と戦う。もちろん逃げ場は無い。全てを得るか、死ぬかの瀬戸際だ。どうだ、楽しいか?」
「サー、イエッサーっ!!」
「うむ」

ジークは厭らしく口元を歪めると、少しの間を空けて声を張り上げる。

「貴様、俺達の特技はなんだっ!?」
「殺せっ!!殺せっ!!殺せっ!!」

「この除霊の目的はなんだっ!?」
「殺せっ!!殺せっ!!殺せっ!!」

「俺達は妙神山を愛しているか!?GSを愛しているかっ!?クソ野郎!!」
「ガンホー!!ガンホー!!ガンホー!!」

「OK、除霊開始っ!!」

開始まもなく、全ての霊は横島一人の手によりこの世から一掃された。しかし、悪霊
を倒した後も横島は引き続き精霊銃の引き金を絞り喚き散していた。曰く

「終わりか、このクソッタレどもがっ!?さあ、もう一度現れてみろ、この根性無し
がっ!?ガッツを見せろ、イン○野郎!―以下、卑猥な言葉の為自主規制―」

「あ、悪夢だわ…」
その時の光景を美神令子はこう表現した。

結局、横島は美神達の手で再教育され、また元のスケベにもどった。
しかし…

「あ、横島君、チョット来て?」
「サー、イエッサっ」

中々癖が抜けきらずその度に鉄拳が飛んだとさ。

                           終わり

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