ザ・グレート・展開予測ショー

たった一行で〜 力 後編


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 1/22)


「瞬間移動でもしたのか?」

 今まで雪之丞が居た辺りにあるのは、ボロボロになり果てた魔装術の残骸だった。そして、その両肩には、何もない。二発のサイキックソーサーは霊力の無駄遣いにしかならなかった。

 「出来れば、始めから使ってるさ。瞬間移動でお前の下に魔装術を纏った俺が体当たりすればお前の体は吹っ飛んで、終わりだ」

 「まぁ、そうだな」

 冗談で言ったつもりだったんだが。受け流すにはいささか問題のある話だったかもしれない。

 「マリオネット。俺の技だ。今までお前が俺だと思っていた奴は俺の魔装術で作り出した分身ってことだ。イメージの産物だよ」

 霊気を使った攻撃ってのは、結構イメージに左右されることが多い。鞭状になった美神さんの神通棍しかり、俺の栄光の手しかり。

 「あの、霊気の球を分散させた時か」

 「あれで、視界を奪って俺はお前の死角に移動した。空になった魔装術に特攻させて、お前を倒すつもりだったが、あっさりと感づいて避けちまった。だから、この手まで見せる羽目になった」

 苦々しい口調とは裏腹、その顔には笑みが浮かんでいる。

 「教える必要があるとは思えないがな」

 「あるさ、お前の気を引く」

 「事にはなるかもな。チェックメイトだ。雪之丞」

 その声が、彼には信じられないものだったのかもしれない。が、二重の分身を作り出していた彼の頭に乗せられた手は、間違いなく俺のものだった。俺を―――いや、俺のマリオネットを三角形で結ぶように雪之丞は二つのマリオネットと自分で囲んでいたにも関わらず、だ。そう、さっきまで俺と話していた雪之丞まで、偽者だったのだ。

 「二体の人形を作るので限界みたいだな」

 じゃあなければ、魔装術でその身を覆っているはずだ、が彼は霊力など残っていないかのように右手にサイキックソーサーを持ち、魔装術を解いた姿で、俺のいた辺りを見ていた。

 「・・・全く、信じらんねえぜ。初めから、お見通しだったってことか?しかも、てめえの分身まで作れるとはな」

 「初めからお見通しってわけじゃない。イメージ、か。霊気を使った行動でどこまでできるか考えてくと、自分の分身―――シャドウを作るってのに行き着くんだよ。少なくとも、俺とお前が行き着いた結論が同じだったってことだ」

 (ついでに話せるような人形まで使えるとはな・・・。俺だってそれを出来るようになったのは、ついこないだなんだぜ・・・。)

 雪之丞は心中で呟き、苦笑いを浮かべながら、俺を見る。そして、驚愕の表情を浮かべて固まる―――そこにいたのは、俺の姿かたちをした霊体だった。俺本人ではない。
 そして、その本人が雪之丞の傍にとっとことっとこ駆けて来る。さっきまでは本人だと思い、ついさっき人形と気付いたと思ったら、本人だった。後ろの人形にしても、目の前の俺本人にしても、負けであることに変わりはなかったが。
 納得はいかない、みたいだ。俺を睨んでる。

 「ぜ〜は〜ぜ〜は〜・・・チェックメイトだ」

 「・・・この詐欺師が、いつからこの人形を隠してやがった!?」

 「文殊はありか?って聞いた時にこっそりと」

 「・・・!?」

 気付かなかった。

 「布石は打っておくもんさ。切り札は最後まで取っておくもんだしな」

 「文殊と、人形か」

 「正直、人形が役に立つとは思わなかったけどな。反応速度の鈍い人形は前線に出しづらいし、使うとすれば囮か、罠か、視覚だ」

 「んで、俺はお前の人形の視界に映っちまったと。・・・正直、笑えねえな」

 苦笑を浮かべつつ、手にしたサイキックソーサーを消す。そして、言った。

 「降参だ・・・でもな、やっぱり、お前はお前が思うほど、自分を危険視するべきじゃあねえと思うぜ」

 「ああ・・・何となくわかった。俺の力は突拍子もないほど強力なもんじゃないってことがな」

 「・・・いちいち傷つくが・・・まぁ、そう言うことだ」

 複雑な表情を浮かべた雪之丞は、シャドウを消し、頭を掻いた。 

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