ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―6―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 1/22)

―― 妙神山 ――

神界と人界の狭間と言われる場所は世界中にいくつか存在するが、ここもそんな狭間の一つ・・・
ここには竜神族でも名うての武人「神剣の使い手」小竜姫様がいらっしゃいます。
肩書きは「妙神山管理人」・・・
ここ、妙神山は霊能者の修行場として知られており・・・腕に覚えの有る者達がその力を試しに、そして新たな力を得るために訪れる。
その門には、

―― この門をくぐる者、汝一切の望みを捨てよ ――

という一文が添えられており、ここにたどり着いた者に大きなプレッシャーを与えていた。
門の中ではいったいどのような修行が行われているのだろうか?

・・・・・・・・・・・・

「ふう・・・・・・はあ・・・・・・・・・お茶が美味しいですね。」
畳張りの部屋に正座し、静岡産の玉露を啜ってまったりとしているこの御方・・・歳の頃なら18〜20歳くらいに見えるかなり愛らしい女性が、ここの管理人である小竜姫様です。頭の上にちょこんと乗っかっている角がチャームポイント。

「ふん・・・随分とのんびりとしたものだな。」

そんな小竜姫の対面に方膝立てて座っているのがワルキューレ・・・魔界の正規軍に所属する軍人である。
アシュタロスの乱において魔族側の代表として、神族、人間と共に事に当たり、その後は戦後処理をほぼ一手に担当する事になった。
最近はようやく休暇も取れるようになり、割と頻繁に妙神山を訪れている。

「がぁーーー!!待て、パピリオーーーッ!!」

その理由が彼女・・・べスパだ。
アシュタロスの部下だった彼女は、基本的にはその罪を問われることも無く・・・現在はワルキューレの部下として魔界正規軍に所属している。
アシュタロスという想い人を失い、かなりの間塞ぎこんでいた彼女だったが・・・妹のパピリオに会いに妙神山に来るようになって半年・・・・・・ようやく生来の明るさを取り戻して来た。

「ニョハハハーーーー!!待ったないでしゅーー♪」

そして妙神山に引き取られたパリリオ。こちらも当初は姉のルシオラを失った事で大分参っていたのだが、やはりべスパと頻繁に会えるようになってからはこちらもみるみると明るくなっている。

「ふぅ・・・・・・・・・平和ですねぇ・・・」

仲睦まじい姉妹の様子を見ながら、小竜姫はしみじみと口にした。

「ふん・・・・・・ちと退屈では有るがな・・・」

口ではそう言いつつ、ワルキューレも満更では無い表情を見せる。この平和に、自分の力が例え少しだけと言えども関与しているのだ・・・・・・大戦時には殆ど活躍出来なかったが、戦後処理に置いては間違いなく彼女が第一の貢献者である。

「日々コレ、事も無し・・・・・・・・・その為に尽力してきたとは言え、実際そうなってしまっては意外とつまらんな・・・」

魔族には生来、闘争本能と呼ばれるモノが備わっている。ワルキューレのクラスの魔族ならば、理性で完全に抑える事が出来るとは言え、やはりそれはそれ・・・・・・平和すぎる日常にはいささか思う所も有った。

「戦争を起こしたいとは思わんが、もう少し日常に刺激が有っても良いな。」

少し遠くに思いを馳せる様に、ワルキューレは呟く。

「刺激・・・・・・・・・ですか?・・・例えば?」

湯飲みを盆に置き、小竜姫が尋ねた。

「そうだな・・・・・・・・・・・・例えば・・・」

―― フッ ――

ワルキューレは、一つ小さく笑う。

「例えば・・・・・・・・・あいつがいれば、退屈はしないだろうな・・・」
「!」

―― あいつ ――

それが誰を指しているのか、小竜姫にも直ぐに分かった。1年前に突然姿を消した男のことである。

「・・・・・・・・・そう・・・ですね。・・・・・・・・・彼がいたら・・・とりあえず退屈な日常っていうのは考えられないですね。」

小竜姫も、ワルキューレと全く同じ小さな笑みを漏らす。

―― 1年前 ――

美神令子が妙神山を尋ねてきた。その時の様子は酷く鮮明に覚えている。彼女の態度、表情・・・そして彼が消えたと言う事実。
ヒャクメの心眼で人間界をくまなく探した・・・・・・神界、魔界も調査した。だが、彼の痕跡は何処にも見当たらなかった。

「やはり・・・・・・もう、生きてはいないのかもな・・・」

口惜しそうに吐き捨てるワルキューレ。

「彼がそれほど簡単に死ぬとは思えませんよ・・・・・・神界、魔界は広いですし、人間界でも、ヒャクメの心眼が届かない場所は思いのほかたくさん有りますからね・・・なにより・・・・・・」

ワルキューレを宥めるように、もしくは自分に言い聞かせるように・・・小竜姫はそう口にした。

「べスパとパピリオが、彼は生きていると言っているのですから。」

消して望まなかった方法で、彼女達と同じ霊気構造を持つに至った彼は・・・・・・彼女達と少しだけ感覚で繋がっているらしい。
近くにいればその存在を感じることが出来、たとえ離れていても極端な身体異常ならば必ず感じられる。彼女達はそう言っていた。
だからなのだろう・・・・・・
彼が失踪した事について、彼女達が一番冷静だった様に思う。

「・・・・・・・・・だと、良いんだがな・・・」

そんな感覚など持ち得ない他の者は、どうやっても彼女達のようにはいられなかった。

―― あああああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!! ――

「うわっ?!」
「なっ!?」

ちょっとしんみりし出したその時、突然声が響く。

「今のは・・・・・・ヒャクメ?い・・・いったい何事?」

―― ダダダダダダダダダダダダダ ――

間髪いれずにヒャクメが駆け込んできた。

「い、い、い・・・いた、いた、いた、居たのねぇーーーーーーーーーー!!!!」

物凄く狼狽している。

「落ち着きなさいヒャクメ・・・どうしたんですか、いったい?」

小竜姫がそう言っても、ヒャクメの狼狽振りは一向に止まらない。

「ひょ、ひょ、ひょこひ・・・」

既に呂律が回らないほどである。

「だから、落ち着け!いったい何が有ったのだ!?」

今度はワルキューレが怒鳴る。軍人としてこういう冷静さに欠けた事象を許せない性格なのだ、彼女は。

「よ、よよよよよよよよっ!!横島さんが居たのねぇーーーーーーーーーー!!!!」

そして、ようやくヒャクメは自分が言いたかった台詞を正しく発音する。

「!!?」
「!!!」

その余りに予想外の台詞に、逆に二人のほうが固まった!

「ヨコチマ見つかったでしゅか?!」
「ポ・・・・・横島居たって?」

と、今の台詞を聞いて、べスパとパピリオも飛んでくる。

「・・・・・・・・・あ、ほんとでしゅ。あっちに居るでしゅよ。」
「・・・・・・お、居るねぇ・・・確かに。」

直ぐに感覚を鋭敏にして居場所を探ると、今まで全然感じられなかったソレを感じ取ることが出来た。

「直ぐいくでしゅ!」
「ま、久しぶりに顔見に行くか。」

―― ドゴーーーン ――

姉妹はあっという間に飛び立っていった・・・・・・一直線に。壁にはポッカリと大きな穴が出来上がった。

―― ドゴーーーン ――

そして鬼門にも穴を空けて行きました。

「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

思わずあっけに取られた小竜姫とワルキューレとヒャクメ・・・

「はっ!?そ・・・それでヒャクメ!横島さんは何処にっ?!!」

一番最初に正気になった小竜姫がヒャクメに問い掛ける。

「成田空港ってところなのねーーー!」
「ど・・・何処ですか、そこはっ?!」

小竜姫は人間界には疎い・・・・・・

「えと、えと、口で説明するのは難しいのねーーー!小竜姫って方向音痴だからぁーーー!!」
「なっ?!し、失礼なっ!!?ちょっと地理に疎いだけで、けして方向音痴などではっ!!」
「そんな場合か!!成田空港なら私が知っている。どのみち私はべスパの傍に居てやらねばならんのだ、一緒に行くぞっ!!」

今はまだ、べスパが魔界から出るときには管理責任者が同行しなければいけないのだった。
その役を買って出ているのがワルキューレなのである。

「はい!!直ぐに行きましょうっ!!」
「私も行くのねーーー!」

そして3人は直ぐに姉妹の後を追った。
・・・・・・彼女たちが開けた穴を通って。

・・・・・・・・・・・・

「み・・・右の鬼門よ・・・生きておるか・・・」
「い・・・今はまだ何とか・・・・・・」

・・・・・・鬼門の二人が生死の境を彷徨っていた。





・・・・・・一方その頃・・・・・・

「こるぁあーーーー!!!離せぇーーーーーーーー!!俺は何もやっていないぞぉぉーーーーーー?!!!」
「対象の捕縛に成功しました。現在、特殊呪縛ロープにて拘束しております・・・・・・はっ、了解しました。」

成田空港の別室では、一人の男がグルグル巻きにされてもがいていた。部屋には十数人のオカルトGメンが完全武装(一般職員レベルでのね)で待機している。そのうちの一人が電話を切り・・・・・・言う。

「もうじき、美神指令が到着する。それまで大人しくしていろ!抵抗もしくは逃走しようとしたなら、こちらも相応の対応を取らせてもらう・・・手足の2,3本ぐらい構わんと言われているのだからな?!」
「なっ?!あぁぁぁ・・・・・・あんの人はああぁぁ!!!くそぉーーー!!こんな事せんでも、俺は逃げーーーーん!!だから離せーーーーー!!!!」

・・・・・・・・・横島はすまきになっていた。

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