ザ・グレート・展開予測ショー

『で〜と』 SIDE横島


投稿者名:ブラックキャット
投稿日時:(03/ 1/20)

「先生!!今日は散歩じゃなくて『で〜と』するでござる!」

久々の休日。
突然俺の部屋に押し掛けて来たシロが真っ先に叫んだのが上の台詞であった。



「で、どーして俺は素直にデートしてるかね・・・」
思わず苦笑が浮かび、シロが不思議そうにこっちを見るが、なんでもない。と言って誤魔化した。
何故だかシロの頼みは断れず、いつも何だかんだ言って引き摺り回されている自分を思い返して又苦笑が浮かぶ。
デートの意味、分かって言ってるのかね・・・・・・。
シロ。
俺の弟子。
で、言ってしまえば手のかかる妹みたいなもんだと思っている。
そういや最初に出会った時は性別の判断もつき辛いちっちゃなガキだったっけ。
コイツが成長したのって俺の霊力の所為だったんだよな?
そう思うとちょっぴり感慨深くなって、随分と成長したシロのスラリとした、どこにあんな力が眠っているのかと思う程ほそっこい手足や体を見る。

「先生?そんなに拙者の体を見て・・・何かあったのでござるか?」

キョトン、とした表情で俺を見るシロ。
ああ、コイツには男に対する警戒感なんぞ無いんだなー。と呑気に考える。
俺が守ってやらな。と妙な責任感に燃えていると、シロはアレに乗りたいでござる!と言ってジェットコースターを指差していた。
因みに今いるのはデジャブーランドで、園長にお願いして(脅迫とも言うかも知れんが・・・)一日無料パスを手に入れてずっとぶらぶらと遊び歩いていた。

「うし、行くか!」
「はいでござる!!」

ジェットコースターを見、逡巡の後にジェットコースターの列に並ぶ。
シロは楽しんでくれてるのか、尻尾をパタパタと振りながら俺の腕を組み、しきりに列の前を確認している。

「も少し落ち着けよ、シロ。急いだって変わんないんだからさ」
「う〜〜、でも拙者楽しみで楽しみで・・・先生は楽しみではござらんか?」

泣きそうな顔で下から俺の顔を覗き込むシロ。
うぐっ!掴んだ腕にやわらかい感触が当たって・・・しかもそんな顔で見るなんて・・・!!

「楽しみだ!楽しみに決まってんだろ!」

シロの仕種に、ちょっと強めに言いつつ頭を撫でてやる。

「クゥ〜〜ン♪」

可愛い声で鳴くシロに、調子に乗って頭を撫で続ける。
と、後ろからわざとらしい咳きが聞え、咄嗟に横目で辺りを見回す。
もしかしなくても俺達が列の流れを止めていた。
シロも我に返って、紅くなりつつ、進んだ列の流れに追い着く。
その後はきまずい思いをしながら並び続け、ジェットコースターに乗れた頃には心労で心成し、二人とも顔色が悪かった。
ジェットコースターに乗った後は特に問題も無く遊び続け、時間も遅くなってきたので、最後に観覧車に乗ろう。とシロが言い出したので俺達は観覧車へと向かった。

「しかし・・・シロが最後に観覧車に乗りたがるとは思わなかったな。てっきりジェットーコースターにでも又乗りに行くかと思った」
「そ、その、別にいいではござらんか・・・観覧車だって捨てたもんじゃないでござるよ」

なんだろう?何故だかシロが妙にしおらしい様に感じる。
それに何だかシロの頬が夕日の色じゃなく紅くなってる様な?

「先生は・・・今日一日、どうでござったか?・・・楽しんでくださったでござるか?」
「ん?ああ・・・楽しかったよ」
「その・・・無理矢理連れてきてしまって・・・迷惑ではござらなかったか?」
「どうしたんだ?普段はそんな事言わないくせに?」

益々シロの様子がおかしい。
いつも元気一杯ではきはきと喋るシロが、どうにも歯切れが悪い。
これだけは変わらず俺の目を真直ぐ見る表情にもどこか不安のような物が入り混じっている。
どうにも嫌な感じだ。
シロにこんな顔されんのは・・・・・・。
アイツを・・・ルシオラを失ってからの俺に、周りの皆はどこか気遣う様な空気があって、そっちの方が辛かった。
その中でシロは変わらず俺に接してくれ・・・実際にあの場にいなかった事にも関係あるんだろうが・・・そんなシロの態度がたまらなく嬉しかった。
だから俺はシロの先生として、兄として相応しくなれる様に頑張って来れたんだ。

「拙者は・・・」

だからシロ・・・そんな顔すんな・・・見たくねぇよ・・・お前のそんな顔・・・。

「その・・・・・・」

ああ・・・頂上が近い・・・夕日の中のこの光景はルシオラを嫌でも思い出す。

「先生は・・・」

お前もいなくなっちまうのか?シロ・・・・・・。

「先生!!お話があるでござる!!」

嫌な事を考えて気持ちが暗くなっていた俺に、決意を秘めた目で俺を見ながらシロが力強く言う。
なんだ?俺の事が嫌いにでもなったか?
なんて・・・マイナスの方にしか考えが及ばない・・・ヤベェ・・・こりゃ重傷だよ・・・。

「何だ?」

言葉ではそういいながら、俺は傷ついた心で精一杯の虚勢を張るために心の準備をする。

「拙者・・・・・・先生の事を・・・先生の事を女として好きでござる!!
愛してるでござるよ!!先生は・・・拙者の事をどう思ってるでござるか?!」

・・・恐らく俺の顔はかなり間抜けな顔になってる。
悲しみに対する虚勢の仮面は簡単に崩れ去った。
はは・・・こんな事って・・・ありかよ・・・?
ふと・・・・・・涙が一滴、俺の目からこぼれた。
それを見て瞬時に絶望の表情を浮かべるシロ。
そんな顔すんなよ?
これ、哀しいんじゃなくて嬉しいんだぜ?
よく言うだろ?
人は本当に嬉しい時にも涙を流せるって。
本当だとは思わなかったけど、思わぬところで勉強したよ。

「俺は・・・」

シロの顔を・・・そんな暗い顔にさせとくのは嫌だから。
俺の心が悲鳴を上げそうになるから・・・。
俺はシロに、今気付いた本当の気持ちを伝える為に言葉を紡ぐ。

「俺はシロの事・・・」

失うかも知れない・・・、そう考えた時に俺の心はルシオラの時以上にボロボロになりそうな感じだった。
そんな事は絶対に嫌だと。
近しい誰かではなく、シロだからこんなにも心が痛いのだと・・・やっと気付いた。

「ずっと・・・」

そう。ずっと・・・。
本当は出会った時から・・・・・・。

「愛してる・・・・・・」

お前が居ないと・・・俺は駄目になっちまう。
ルシオラがそれに気付かせてくれたのはどこと無く皮肉な気もするが・・・。
けれどルシオラが居なければ俺は一生この気持ちを誤魔化し続けていただろうから・・・。

「・・・先・・・・・・生・・・っ!」

パッと顔を上げたシロの表情には、既に絶望は無く。
その事が俺の心を軽くした。
誤解させて・・・ゴメンな、シロ。



そして



観覧車の頂上で・・・



俺達二人の影は



一つに重なった・・・。

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