ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−27b


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 1/16)









――――地下3F――――




ズドドドーン



上の階だろう。
既に戦いは始まったようだ。
さすがに地下へはその喧騒も届かないが、たまに爆発音が聞こえ、フロア全体に微震が起こる。


「美神さん……」

不安げにおキヌが上を見上げる。
その目に写るのは天井のみ。
しかし、おキヌの目には美神達が戦っている姿が見えるかのようだ。

「さっきの究極の魔体が切り札だったのでござろう?
 心配は無用でござるよ!」

「でも……」

唐突にタマモが声をあげる。

「よ、横島?」




「「え?」」




3人が注目する中、横島が目覚める。




ぼんやりと視線が泳ぐ。
眠たそうに目をシパシパさせる。
そしておキヌ達に視線を向ける。


「ん〜?おはよう」


余りにも普通な様子に脱力する3人。

「お、おはようございます」

脱力しながらも答えるおキヌ。
シロとタマモがそれに続こうとした時、横島の雰囲気は一変する。



殺気。
怒気。


それが綯交ぜになった気配を巻き散らす。
今までに横島から感じたことのない気配。
あのアシュタロス戦でさえ、こんな気配を出すことはなかった。
そんな様子に戸惑うおキヌ達に横島は問い質す。




「アイツは?
 ヤマサキは?
 ルシオラは?」







――――小竜姫vsデミアン――――








「グッ……小竜姫ぃ!!!!!」



半身を吹き飛ばされたデミアンはすぐさまに身体を復元する。
しかし、受けた霊的ダメージまでは回復出来ない。

「さぁ、喋ってもらいましょうか?
 貴方達の目的を!
 どうやってアシュタロスを復活させるつもりですか?!!」

小竜姫の見当違いの質問に一瞬ポカンとする
そうだった。
今の自分達は自称アシュタロス派だった。
すぐさま心理的再建を果たす。
それどころか心理的上位に立とうとする。

「さぁね?
 お前らが気に食わないだけかも知れないし、何か目的があるのかも知れない。
 どっちだと思う?」

身体についた血糊を指ですくいつつ、小竜姫に目をやろうとした刹那!


ドスッ!!!!


「なっ……?!!!」

「卑怯と呼んでいただいても結構です。
 私、頭に来てるんですよ?
 人型のまま逆鱗状態になれたらこんな感じでしょうね」



超加速を解いた小竜姫が冷酷に宣言した。





次は……メドーサ!!!








――――美神親子vsメドーサ――――






メドーサの三叉の鉾が一閃するごとに鈍い音が響く。
それが振るわれるたびに、漏れ出た魔力が薄い刃を形成し、さながらカマイタチのように令子達に襲い掛かる。
美智恵も令子も全身に細い傷が刻まれ、対霊・対魔の特殊繊維で編まれたジャケットがズタズタになっている。

美智恵が神通棍を右手に。
精霊弾を左手に突進する。


タンタンタンタンッ!


精霊弾の牽制を苦も無くかわるメドーサ。
その体勢が崩れることはなく、常に令子の方にも気を配っている。
その間にも一気に間合いを詰める美智恵。
それに合わせて令子も間合いを詰める。


ギンッ!!


超加速に入るまでもなく、無難に二人の攻撃を受け止め、あるいは弾く。
令子の鞭は魔力の壁を勢い良くぶつけることで弾き、美智恵の神通棍は三叉の鉾で受け止める。
そして交差法を利用して零距離に飛び込み体当たり。
吹き飛ぶ美智恵。
勢いを利用して飛び退るメドーサ。
直後に令子の神通鞭がメドーサの居た位置で不発する。



チッ


舌打ち一つして、返す鞭で背後から冥子に襲い掛からんとするルシオラクローンに一撃。
吹き飛ぶルシオラクローン。
それに便乗して式神の攻撃が殺到する。




ルシオラクローン残り8体。







――――西条&雪乃丞vsルシオラクローン4体――――





弱い。




それがルシオラクローンと対峙している雪乃丞と西条の感想だった。
仮にもルシオラは上級魔族寄りの中級魔族だった。
その力は単体で小竜姫とタイマンで勝てるくらいには強いはずだった。
なのに今は自分達と互角程度の……いや、流れを見れば自分達が優勢だ。

「完全なクローンというわけではないようだね」

「ああ……これなら横島の旦那の手を煩わせる必要はなさそうだ」


形は違えど、横島をライバルと認めている二人。
他者の力を借りて倒すなど問題外。
ライバルに塩を送るようだが、それに何の問題があろうか?


「あの蛇女が厄介だな。
 こっちはさっさと片付けるぞ!!」

「異論はないね!!」



ルシオラクローン4体を相手にしても、この二人は軽口を叩く余裕があった。







――――ワルキューレ&ジークvsベルゼブル――――





「押され気味じゃねぇか……」

ベルゼブルは焦っていた。
魔神の地位は惜しい。
だが自分の命あってこそだ。
戦場を見渡せばメドーサ以外は完全に押されている。
自分自身、ワルキューレとジークの二人に完全にマークされ迂闊には動けない。
ワルキューレのフォローがあって、膠着状態に陥っているベルゼブルは離脱するタイミングを図り始めている。
そしてジークの一撃は鋭い。
ワルキューレのフォローも所詮、致命傷にならないようにしてくれるだけ。
少なからず手傷は負っている。
例え、小型化分身をしても、ジークならば寧ろ一網打尽にしてしまうかも知れない。
増えた分だけ力を分割することになる。
自分と対等レベルで渡り合う敵を前にしてそれは下策だ。
ワルキューレの助けも限度がある。
下手にバレたりしたら、まず自分のせいになる。
無能の烙印を押されるどころか、有害扱いされる。
そんなことは認めない。決して認められない。
失敗するならメドーサかデミアンのせいにしなければならない。


ベルゼブルは、これほど困難なミッションを指定して来たリリスを内心で罵っていた。





――――唐巣神父&冥子vsルシオラクローン3体――――





「神よ!!!」

「がんばって〜!!」


唐巣の退魔術が、冥子の式神が圧倒的な迫力をもってルシオラクローンに迫る!!
3体のルシオラクローンは共同で魔力結界を張ってそれを凌ごうとする。
徐々に、徐々に、結界が押されつつある。

ヤマサキから出された指示は一つ。

『時間稼ぎをしろ』

ヤマサキはメドーサ達が勝つとは思っていない。
どう考えてもメドーサが自分の夜天光より強いとは思えない。
そして自分は彼女達に利用されているだけ。
ならば自分も彼女達を利用しようではないか!!

ヤマサキにはまだ事態を逆転する切り札が2枚あった。

一つは文珠。
一つは横島の到着。

ルシオラクローンの死命を握っているヤマサキは誰よりも横島の到着を望んでいた。







――――ドクター・カオス&マリアvsヤマサキ&ルシオラクローン1体――――






「さて。
 余り者同士、仲良くやろうじゃないか?」

口調とは裏腹に、剣呑な表情でカオスがヤマサキに話し掛ける。

「これはこれは♪
 ドクター・カオスさん、初めまして♪
 ヤマサキヨシオと申します♪」

二人が話している間にも、ヤマサキ護衛用のルシオラクローン1体とマリアが牽制しあう。

「これからどうするつもりだ?
 まさかメドーサ達と最初から手を組んでいたわけでもあるまい?」

「はっはっはっは〜♪
 さすがですね♪
 さすがは私が尊敬する人類史上最高のアルケミストですよ♪」

「世辞は良い」

「これは失礼しました♪
 真面目な話、夜天光……ああ、これは究極の魔体の名前なんですがね。
 夜天光が敗れた時点で私の計画はおじゃんですよ♪
 そしていきなりメドーサさんが姿を見せて部下達は皆殺し〜♪
 私はただ静かに研究を続けたいだけなんですけどね〜」

本当に残念そうにヤマサキが溜息をつく。

「フンッ!片腹痛い!
 この研究所の実験データを見せてもらった。
 3流だな。貴様は。
 あんな人体実験をしなければ研究が進まないのが良い証拠だ。
 同じ魔法科学を志す者としては恥ずかしい限りだ」

軽蔑の眼差しを向けられてもヤマサキの表情は変わらない。

「天才ドクター・カオスさんに比べられても困りますよ♪
 確かに私は天才ではありません。
 こう見えてもコツコツ実験を重ねる努力型なんですよ。私はね♪
 天才の閃き――――実験データを無視して真実に至る、あるいは新たな創造をする発想力は私にありませんよ」

「その結果がこれか?
 そのせいで今、身の破滅を呼び込んでおるではないか?
 気付いておらんのか?
 ルシオラクローンが一体減るごとに、他のルシオラクローンが力を増していることを」

ここで初めてヤマサキの表情が動く。

「……どういうことですか?」

「ルシオラクローンは複数で個だと言うことだ。
 10ある力を15で割った状態より、10ある力を8で――――いやもう7か。
 10ある力を7で割った方が数値は大きい。
 戦術も力も洗練されつつある。
 最後の一体になった時、本物のルシオラが再誕するかも知れんな」

言われてルシオラクローンの戦闘を観察するヤマサキ。

――――確かに魔力の一撃の威力が上がっている?

「ルシオラクローンを制御しているのはメドーサさん達の技術なんですよね・・・」

そこで口を噤む。
メドーサの力はルシオラに劣る。
ならば完全復活を遂げたルシオラがメドーサ達に従い続けるのか?


「まさか……?
 ルシオラが自力で復活を遂げようと?
 横島君のクローンが変異したのはそのための布石?」


「なるほどな。
 貴様にとっては偶然の産物か。
 まぁ、それはともかく。
 あれだけ悲惨な目に遭った横島じゃ。 
 少しくらい救いがあっても良かろう?」


ニヤリとするカオス。
現状を打開する策を模索し始めるヤマサキ。
それを察したカオスがマリアに命じる。


「これ以上喋るとは思えんな。
 今ならまだ勝てる!
 早めに片付けろマリアよ!」

「イエス・ドクター・カオス」





「さぁ、こちらも始めようか?」






錬金術師と狂科学者の戦いが始まる。












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