ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−27a


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 1/16)










「「「「「「「「「「「「横島(君・さん)!!!」」」」」」」」」」」」






周りの期待を一身に受けつつ、カオスが横島の身体を調べる。
呼吸、脈拍、霊気の流れ、眼球運動……。
さまざまな検査を簡易的に終えたカオスの結論。

「意識を失っておるだけじゃな。
 至って健康体じゃ」

皆、一様にホッとする。

「じゃがな、簡単な診察しかしておらん。
 もしかしたら飛んでも無い症状が進行しておるかも知れん。
 このまま自然に目覚めるのを待って、きちんと検査した方が良かろう」

「とは言え、ここで目覚めるのを待ってたら逃げられちゃうわね……」

思案顔の美智恵。
既に証拠は上がっている。
後は実行犯を捕まえて白状させ、GS協会の幹部達を締め上げる番だ。

「……何人かここに残して、先に進みましょう」

「となると……おキヌちゃん、タマモ、シロってところかな?
 頼める?」

元々戦闘に向かないおキヌ。
レヴァーティンの使用で霊力が残り少ないタマモとシロ。
本来なら置いてけぼりという不名誉とも言える役割だが、仕事の内容は横島の世話である。
彼女達に異論があろうはずもなかった。






―――― エピソード27:dance with Lucciolas(前編) ――――








「エレベーター。
 上がってきてるようですね♪」

何でこいつはこんなに明るいんだ?
あのメドーサ達にすら呆れられるほどの陽気さでヤマサキが言う。

「ああ、準備は良いかい?」

「もちろんだ」

「私もOKですよ〜♪」

「良く聞きな。
 今回は乱戦になる。
 細かいことは言いっこなしだ。
 指示するのは最初だけ。
 お人形さん達は扉が開くと同時に一斉に魔力砲だ。
 アタシとデミアンはそれと共に突撃。
 ベルゼブルは戦闘を撹乱だ。
 ま、最初の奇襲は千里眼のヒャクメがいるから効かないかも知れないがね」

全員が黙って頷く。






――――4F隠しエレベーター前――――






地上4Fに到着。
エレベーターの扉が開いた途端に目に入ったのは惨殺された研究員達の骸だった。

「これは……何が起きたというんだ?」

西条が死体を検分しながら疑問を口にする。

「鋭い刃物……槍のような物で一突きってところかしら?」

美智恵は死体の顔を調べている。
頭部が完全に破裂した物もあれば、袈裟切りされた物まである。

「……まだ顔を見せていないのはメドーサ達です。
 おそらく奴らがやったのでしょう」

小竜姫が遺体を片付けなら言う。

「顔よ。顔の確認をして。
 ヤマサキが見当たらないわ」

令子は無表情に死体の顔を検分している。

「ヒャクメとカオスはこの先を調べて」

「調べるまでもないでしょう。
 この先に奴らの魔力を感じます。
 それにこれは……」

ジークが怪訝そうな顔をしてヒャクメに目をやる。
ヒャクメも少々顔色が悪い。

「ルシオラ……さん?」

その呟きに無表情だった令子の顔に変化が出る。

「何?」

「そんな……そんな……こんなことって……」

二の句が告げないヒャクメに見切りをつけ、ジークとワルキューレを見やる。

「……この先から感じる魔力の波動パターンは4つ。
 いや、正確には4種類だ」

「何が違うのよ?」

「3種類は分かるな?
 メドーサ、デミアン、ベルゼブルだ。
 残りの1種類は……複数だ」

ワルキューレが淡々と続ける。

「複数……つまり一つのパターンが15個ある。
 そのパターンの持ち主を我々は知っている。
 ルシオラだ」


「「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」」




神族と魔族を除く全員がハテナマークを顔に浮かべている。


「ちょ……ちょっと待ちなさいよ」

「恐らくクローンだな。
 横島の霊基構造を調べれば、そのくらいは出来るのかも知れないな」

「だ、だったら横島君本人のクローンを作るの筋じゃなくって?」

一同を代表して美智恵が疑問を口にする。

「知るか。
 私は科学者じゃない」

ワルキューレのにべも無い返事。




「……横島君。
 置いてきて正解だったわね」

ぽつりと呟く令子。
ここにいるメンバーは全員、横島とルシオラの悲劇を熟知している。

「そうだな。
 横島の旦那には悪いが、俺達で全部片付けちまおうぜ」

アイツには辛すぎる。そう続けた雪乃丞の言葉を誰も否定しなかった。







――――地下3F――――






横島は苦悶の表情……というには厳しすぎる表情で眠り続けている。
おキヌは膝の上に頭を乗せている横島の顔を覗き込んでいる。
シロとタマモはおキヌ達を挟むように陣取っている。
注意は周囲への索敵と、横島の横顔に注がれていた。

「……何があったんですか横島さん。
 もう大丈夫なのに……。
 何が貴方にそんな顔をさせているんですか……?」

おキヌが横島に話し掛ける。
返事を期待するわけでもなく。

「人間だから酷いことをする……か」

カオスの言葉が思い出される。
魔族のルシオラさんでさえ、横島のために命を投げ打った。
なのに人間は……。

「……全部が全部そうじゃないでしょ」

唐突にタマモが呟く。

「現に横島が、おキヌちゃんがそうじゃない?
 気に食わない奴も多いけどさ。
 気に入ってる奴だってそれなりにいるんだから、人間も捨てたもんじゃないと思う」

「そうでござるよ!
 人間と愛し合って結ばれた人狼だっているでござる!
 酷いことをする人間ばかりではないでござるよ!」

同調するシロ。
時間が経つと凹み具合が増大するおキヌとしては、この二人の気遣いが嬉しい。
ヒーリングを込めて横島の頭を優しく撫でながら、

「ありがとう、二人とも。
 そうよね。
 同じ人間が酷いことしたとしても……。
 こうやって助けに来たのは私達だから……。
 私達は胸を張って……良いよね?」

おキヌは微笑んだ。







――――4Fエレベーター前通路――――








「やっぱりヤマサキはここに居ないわね。
 連れ去られたのか、手を組んだのか。
 どちらにせよ、この先にいるんでしょうね」

令子が暗鬱そうな表情で言う。
いちいち死体を調べて顔の確認。
頭が吹き飛んでいる死体は持ち物チェック。
普段GSとして死体を見ることは少なくないが、これはただの殺人現場の検証だ。
オカルトGメンで見慣れた西条や美智恵ならともかく、令子には流石に気分の悪い作業だった。

「弔ってやる時間まではないわ。
 というか、弔ってやる義理もない。
 どうせこいつらも、まともな死に方出来るとは思ってなかったでしょ。
 先に進みましょ?」

令子の一声で、歩きながら戦闘準備を整える一同。
次が最後のはずだし、待ち構えるのはメドーサ一行。
何度も煮え湯を飲まされた相手だ。
おまけにルシオラらしき奴までいる。



『横島に何も知らせず一気に片付ける。そして全員、口を噤む』



それが令子達の出した結論。
知らなくて済むならそれで良い。
ルシオラが”あの”ルシオラなら仲間に引き込むことも出来るだろう。
だが、そうでない場合は殺す。
今後の禍根を絶つ意味で殺す。
紛い物が敵に操られているくらいなら殺す。

横島の心を壊さないために殺す。

――――横島君に嫌われちゃうかもね。

令子がそう自嘲していると、ヒャクメが口を挟む。

「扉の向こうで、奴らが構えて待ってるのねー。
 開けた途端にどどどどど――――ん!」

「ドクター・カオス・魔族18体と・人間1体の・存在を・確認・しました」

ヒャクメとマリアの報告に応じて、唐巣神父や小竜姫達が前に出る。

「恐らく奇襲の準備でしょう。
 結界を張って防ぎきる、出来るようなら弾き返す。
 その直後の混乱を利用してこちらの方こそ奇襲をかけてやりましょう?」

小竜姫の顔が優しいお姉さんから、武人のソレへと変貌する。
全員の表情を確認して令子は頷く。









そして扉は開かれる。








――――4Fクローン培養室――――








ズドドドン!!!!!




扉を開いた美神達がまず目にしたのは一糸乱れぬタイミングで向かってくる魔力砲の雨だった。
その合間からメドーサ達の姿を確認し、さらに複数のルシオラ達が見える。
それに気付いて一気に怒りが沸点に達する令子。

ギュッ!

神通鞭の柄を強く握り締める。

今、目の前ではワルキューレ・ジーク、唐巣、ピート、冥子が各々の能力で結界を張っている。
その結界の質は普段の壁のような硬質なモノではなく、まるでゴムのように弾力性に富む。
令子の目には、魔力砲の一撃ごとに凹んで伸びているのが良くわかる。
その弾力性ゆえに、威力――――勢いは殺ぎ落とされ、その勢いが完全に無くなった時。
溜め込んできた魔力砲は反転して相手に襲い掛かるはずだ。
力のベクトルは綺麗に反転し、それを放っているルシオラ達に襲い掛かるだろう。

さらに後ろでは、美智恵と西条がブーストしている状態でタイガーの精神感応でメドーサ達に幻覚を見せている。
恐らく、奇襲の後に一気に近距離に詰めてくる手筈だったろうが、タイガーの精神感応で見当ハズレの場所に攻撃をしかけたはずだ。
少し離れた場所で爆発音がする。

――――想定通りだ。

そして同時にフッっと敵の攻撃が止む。
それとともに一気に正確にルシオラクローンへ弾き返される魔力砲。




ズドドドドドドドドドド――――ンッ!!!!!





「「「「「「ハァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」」」」」」




一斉に飛び出す令子・美智恵・西条・雪乃丞・小竜姫。







一瞬の激突。







小竜姫の一撃で半身を吹き飛ばされたデミアン。
美智恵と令子の神通棍と神通鞭を器用に三叉の鉾で受け止めているメドーサ。
自らの放った魔力砲で吹き飛んでいる数体のルシオラクローン。
さらに増幅版ジャスティスで切り飛ばされたルシオラクローンもいれば、雪乃丞の魔装術の一撃に崩れ落ちる者もいる。

そしてルシオラクローンを盾にしてピンピンしているヤマサキが笑う。






ルシオラクローン残り9体。








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