ザ・グレート・展開予測ショー

横島 IF 第四話 (A)


投稿者名:777
投稿日時:(02/12/30)

「修行に行くわよっ!」

俺が出社したとき、影も形もなかった美神さん。

10時を過ぎたあたりでものすごい勢いで帰ってきて

「唐巣先生から紹介状も貰ったし、いざっ!妙神山!! 野郎共覚悟は良いかーっ!!」

ものすごい勢いでテンパっていた。

「ど、どうしたんでしょうね、美神さん…」

おどおどしながら俺に問いかけてくるおキヌちゃん。なるほど、あれ本人に話しかける勇気はないと。

「何かテンション上がることでもあったんだろう………本人に聞いてみたら?」

テンパったまま『私は美神令子なのよーっ!』だの『極楽に行かせてあげるわーっ!』だの、虚空に向かって雄叫びを上げる美神さんを顎で指し示す。

あ、おキヌちゃんの目が『嫌です無理です私には出来ません』光線を出してるな……やれやれ。

「美神さん、美神さん。説明を要求します」

俺の言葉に、美神さんはビビッと反応して…




「ふっふっふっ――――説明しよう!」

誰だあんた。







美神さんの説明によると、この頃強力な悪霊達が多数確認されているらしい。

除霊が盛んになった反面、悪霊達も全体的に強くなってきているそうだ。

今の内にレベルアップしておかないと、他のスイーパーに出し抜かれるかも知れない。そこで一発修行にくり出そう、と言うことに相成ったわけだ。

まぁそれはいいとして。

「何でテンション上がってたんスか?」

俺の質問に、美神さんは笑ってこう答えた。

「いや〜、妙神山って『パワーアップか死か』って修行場らしくてさ。そんなこと聞くとテンションも上がるってもんよ!」



上がりすぎだろう。




ま、と言うわけで。

俺達は妙神山へ出かけることになった。







――リポート4 ドラゴンへの道!!――





「ここね!」

どう考えても人が登る場所じゃない山道を乗り越え、俺達は馬鹿でかい門の前に到着していた。

そびえたつ門扉には鬼の顔を象った石がついている。その横には雄々しく立つ、首のない二体の石像――鬼の胴体か――がある。

なんとおどろおどろしい雰囲気だろうか。

「なんていうか…『の゛も゛どぎゃぎょーん!!』って感じですねぇ」

どんな感じだよ。

「ハッタリよ、ハッタリ!」

おキヌちゃんの言葉に、鬼の顔を『べんっ!』と叩いて答える美神さん。罰が当たるぞ…。

「何をするか無礼者ーーッ!!」

「うわっ!!」

ほ〜ら当たった。

「しゃ、しゃべった…!?」

門扉の鬼が口を開き、俺達を睨め付けてくる。

「我らはこの門を守る鬼、許可なき者我らをくぐることまかりならん! この『右の鬼門』!」

「そしてこの『左の鬼門』あるかぎり、お主のような未熟者には決してこの門開きはせん!!」

あ、左の奴も口きいた。

「へぇ、私とやろうっての?」

美神さんと鬼達の間に危険な空気が流れる。・・・そして!



「あら、お客様?」



ぎーっ、と音をたてて開かれる門扉。あ〜あ、5秒とたたずに開いたなぁ。あ、鬼の顔がすごい情けなくなってる。

中から出てきたのは、赤髪で角の生えたお姉さん。何の気無しに立っているように見えて、全く隙がない。武道の達人だろうか。

角姉さん(愛称)は、美神さん、俺、おキヌちゃんと順番に眺め………

おキヌちゃんで視線を止め、ポツリ、と呟いた。



















「………美味しそう………」











角姉さん! まさかあなたも!?









その呟きはどうやら俺にしか聞こえなかったのか、気にせず話を再開する美神さん達。俺は角姉さんの呟きが気になって聞いていなかったが。

角姉さんの顔を観察する。涼しい顔をしている。

ただ、時折ちらりちらりとおキヌちゃんに目をやっている。

と、角姉さんと視線があった。その途端。









『ニヤリ』









……………………やばい。やばいのを見てしまった。

慌てて視線を逸らし、見なかったことにする。だが、角姉さんの視線が俺の身体に痛いほど突き刺さっているのがわかる。

時が止まったかのような閉塞感。

再び時が動き出したのは、鬼の一人が上げた大声のおかげだった。

「その方たち我らと手合わせ願おうかっ!!勝たぬ限り中へは入れぬ!!」

いつの間にか勝負する方向に話がついていたらしい。音を立てて鬼の胴体が動き出す。

「こいつらを倒せば、中で修行させてもらえるのね?」

「はい。がんばってください」

確認を取る美神さんに、何事もなかったかのように笑顔で答える角姉さん。むむ、俺はその笑顔にはごまかされんぞっ!

「じゃ、一丁軽くいきますか!」

美神さんが走り出す。あの鬼達、結構強そうだけど・・・・・・あっ!

『ぺたっ  ぺたっ』

ふらふら〜

『ズムッ』

美神さんは鬼の視界を巨大なお札でふさぎ、視界をふさがれた鬼はふらふらっとしたあと盛大に転げてしまった。

う〜ん、マヌケというか哀れというか…。

「――8秒!新記録ですね。やり方はかなり変則的ですけど」

角姉さん…あれは変則的じゃなく、反則とか卑怯とか裏技とか言うんです。それとも分かってて言ってますか?

「こんなバカ鬼やあんたじゃ話にならないわ!管理人とやらに会わせてよ!」

新記録で満足したのか、美神さんが強気な発言をする。でも、管理人は目の前の角姉さんじゃないか?なんとなくだが。怖いし。

あ、角姉さんが何かしそうだ。

「ふふっ」

角姉さんが笑う。その途端、角姉さんから強い風のような物が吹き付けてきた。

心構えの出来ていた俺は何とか踏みとどまった…が、美神さんとおキヌちゃんは吹き飛ばされてしまった。ううん、付き合いで吹き飛んだ方がよかっただろうか?

「あら、あなたは大丈夫だったようですね?」

角姉さんが笑みを含んだ声で話しかけてくる。だから俺はその声にも騙されんぞっ!(←ムキになってる)

「まぁ…角姉さんが何かしそうなのは、分かってましたから」

「つ、角姉さん!?」

お、何か驚いてるぞ?

「痛たっ…まさかあんたがここの管理人なのっ!?」

美神さん復活。角姉さんを警戒してか、一定の距離を保っている。

「はい、私がここの管理人、小竜姫です。外見で判断してもらっては困りますよ。私はこれでも、龍神のはしくれなんですから」

名乗りを上げる角姉さん…もとい小竜姫様。

ほほぅ、しかし神様か…ならば御利益を頂かんとな。






『なでなでなでなで…』(←小竜姫の頭)




「頭が良くなりますよ〜に、頭が良くなりますよ〜に…」




「あの…」




『なでなでなでなで…』(←小竜姫のお腹)




「拾い食いしても壊れないお腹になりますよ〜に、拾い食いしても壊れないお腹になりますよ〜に…」




「私は、撫で仏じゃないんですけど…」





『ぴたり』





「更に言えば、私に無礼を働くと、仏罰が下りますので注意してくださいねっ♪」(←とどめ)





あんた本当に神様ですか?





「と言うわけで、仏罰覿面です」

そう言って剣を振りかぶる小竜姫様。仏罰下すのもあんたですか。

「今の、無礼になるんですか?」

おそるおそる聞いた俺に、小竜姫様は笑顔で答えた。

「角姉さん呼ばわりに、初対面にもかかわらずいかがわしい行為………さらに、あなたは見てしまいましたから」

最後のは、俺にだけ聞こえるような呟き。

やばい、消される。

「ま、まぁまぁまぁまぁっ!ごめんなさい、小竜姫様!このコ本当にアホで…ほら、早くあんたもあやまんなさい!」

美神さんが割って入ってくれた。ぐいぐいと頭を押してくる。

ああ、義姉さん。助けてくれてありがとう。

「ごめんなさい、ごめんなさーい!」

俺の必死な言葉に、小竜姫様は苦笑して

「……………いえ、わかればそれで…」

その間は何だ。

諦めてない、諦めてないよっ!

「えー、気を取り直して、まずは着替えです。生きてる方は、こちらで俗界の衣服を着替えてください」

そう言って俺達を脱衣場へ案内する小竜姫様。




・・・やばい。男女に分かれてる。



「美神さんとおキヌさんはこちらへ。横島さんはこちらです」

あんたいつの間に俺の名をっ!

…あ、そうか。俺が視線に怯えて話を聞いてなかったときか。

「お、俺はほら、見学ですから!ここでおキヌちゃんと待ってますよ!」

俺の精一杯の抵抗も、小竜姫様には通用しない。小竜姫様は笑顔を浮かべてこう言った。

「ダメです。しきたりですから――」

「ほら、あんたもわがまま言わない。別にとって喰われたりしないわよ」

とって喰われそうだから言ってるんです、美神さん。

だが、俺の訴えは言葉に出来ない。小竜姫様が『何か言ったら殺すぜ』とばかりに俺を見ているからだ。――笑顔で。

「ま、向こうで会いましょ」

「横島さん、早く来てくださいね」

そんな言葉を残し、美神さんとおキヌちゃんが行ってしまった。



…って、俺いま小竜姫様と二人っきりっスか!



「やっと…邪魔者が消えましたね」

やばい!やばい!やばい!剣に手が掛かってます!!

「ま、待ってください小竜姫様!」

「何です?命乞いなら聞きませんよ?」

ゆっくりと剣を抜いていく小竜姫様。

そんな彼女に、俺が投げかけた言葉。それは。

















「俺もあなたも、『肉メイツ(肉仲間)』なんですよ!」











――――カラン。










俺の言葉に、小竜姫様は剣を取り落とした。








――――――――――――

第四話(A)小竜姫様登場、です。

ああ、小竜姫様がダメな人に…。

彼女は肉食です。理由は次回、明らかになると思います。

感想、よろしくお願いします。

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