ザ・グレート・展開予測ショー

AFTER DAYS!!(5)


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(02/12/29)

俺が後にした妙神山で楽しそうに計画を練る老師と
黒幕の洗い出しに全力を注ぐワルキューレの横で小竜姫様だけが
心配と不安の色を隠しきれなかった。

小竜姫様は老師の作戦と自分の立場に疑問を感じていた。

自分達は神族の反逆者を捕らえるために
また横島さん達を利用して犠牲にしようとしているのではないのだろうか?
横島さんは間違いなく戦闘などできる状況ではない。
しかし彼は必ず戦おうとするだろう。・・・・愛する人を助けるために。

そう考えると心が少しチクリと痛む。

ほんとうに彼のことを考えるのならば彼を保護して治療を受けさせるべきではないか?
魔族化の事だって時間をかけて治療を受けさせれば
少なくとも今のような不安定な状態ではなくなるはずだ。
・・・・・彼に嫌われたっていい。彼が無事でいてくれるならば。

小竜姫様はゆっくりと立ちあがり
妙神山にある数少ないであろう文明品の黒電話の受話器をとった。



美神除霊事務所にて

隊長が美神さん達に話をし終えると
まもなく人工幽霊壱号が美神さんに声をかけた。

『美神オーナー、一人この事務所に接近してくる者がいます。
 霊波から西条さんと確認しました。』

「西条さん?いったい何の用かしら?
いいわ、人工幽霊壱号。西条さんを中へ招待して。」

バンッ!!
ドタドタドタドタ

美神さんの言葉が終わるか終わらないかといううちに一階から
扉を開ける音と階段を駆け上がってくる音が聞こえてきた。

「隊長!!ここにいらしたんですか!!
 今、小竜姫様から連絡があって横島君が妙神山を出発して
 こちらに向かってるそうです!!」

息を切らして西条のやつが入ってきた。

「西条クン、落ち着きなさい。
 妙神山にテレポートしてたというのは予想どうりでしょ?
 何をそんなに慌ててるのよ?」

隊長が西条を落ち着けようと声をかけるが
その間に事務所のみんなが割って入ってきた。

「西条さん!!あのバカ、今どうなってるの!?」

「横島さんは無事なんですか!?どうなんですか!?」

「先生のことが何か分かったでござるか!?
 すぐに教えて欲しいでござる!!西条殿!!」

みんなから問い詰められて
しまいには興奮したシロとおキヌちゃんから首をつかまれガクガク揺らされて
たじたじの西条がなんとか返事をする。

「お、落ち着いてくれ、みんな。
 さっき言ったとおり、小竜姫様から連絡があって横島クンがこっちに向かっている。
 そしてルシオラさんとパピリオちゃんがいなくなった理由もわかった。
 ・・・・・・・問題は彼の状態とこれからの行動なんだ。」


西条は小竜姫様から話された事全てをみんなに話した。


神族正規軍がルシオラ達を連れ去ったこと。
俺が限界近い霊力は使えないこと。
もし使えば俺はまちがいなく死んでしまうということ。
そして、明日の午後六時に神界に乗り込むつもりだということを。


「そんな・・・・横島先生が・・・・」

「やるせない話ですね・・・・
 あの時、みんなの為に一緒に戦ったルシオラさん達を捕まえようだなんて・・・・・」

シロの顔が見る見るうちに青ざめてゆく。
おキヌちゃんの表情も暗くなる。

「なるほど・・・・。
 だから小竜姫様は横島クンを保護して戦いに行かないようにして欲しいってワケね。
 元からそのつもりよ。
 オカルトGメン内部にも
 横島クンを研究材料にしようとしているマッドサイエンティストとか
 強力な魔族だからってだけで横島クンを捕まえようとしてる石頭がいるの。
 そんな連中よりも早く横島クンを確保しないといけないわね!!」

隊長がシロとおキヌちゃんを励ます意味も込めて声をかける。
その横で西条の話を聞いてからずっと黙っていた美神さんがゆっくりと話しだした。

「・・・・・なによ、それ?
 要するにあの3人はアシュタロスの残党って理由だけで捕えられたわけ?
 アシュタロス戦の時、何もできなかった神族上層部に・・・・・・?」

美神さんの額には青筋が浮かび上がっていて、もう爆発寸前だ。

ドッゴォォォォォン!!

美神さんの右拳が激しく机を叩きつける。

「っっっざっけんじゃないわよ!!!!
 あの3人がどんなの想いをして戦ったと思ってんの!!!?
 ルシオラが!!ベスパが!!パピリオが!!
 どれだけの物を失って、『今』を掴んだと思ってんのよ!!!?
 必死の想いでようやく掴んだ幸せを踏みにじって
 大戦中、神界で指をくわえて見てる事しかできなかった連中が
 裁こうっていうわけ!!!?」

ドッゴォォォォォン!!
ミシミシミシミシ・・・・

再び美神さんの右拳が机に叩きつけられ、机は見事に崩壊した。

「落ち着くんだ!令子ちゃん!!
 いったい、どうしようっていうんだ!?」

西条が嫌な予感を押し殺しつつも美神さんをなだめようとする。
しかし、そんなときの『嫌な予感』は必ず的中するものだ。

「決まってるでしょ!!
 神界に乗り込んで神族上層部を引きずり出して
 あの3人の前で土下座させてやるのよ!!!!」

「む、無茶だ!!神界に乗り込むなんて!!
 そんなことをしたって、もうこの流れは変わらない!!
 それよりも小竜姫様と共に事件の黒幕を暴く方がよっぽど正しいやり方だろう!!?」

西条は必死に美神さんを止めようとする。
あたりまえだ。神族正規軍と戦うことは神族全体を敵にまわす事になる。
そうなれば今回の件だけでは事は済まなくなる。
次々と神族正規軍が襲いかかってくることになってくるだろう。
もしもそうなったら、美神さん達はお終いだ。
物量が圧倒的に違う。
そうさせない為には必ず黒幕の存在を立証して
自分達の正当性を証明する必要がある。
つまり、自分から逃げ道を塞いでしまう事になる!!

「いったい、その黒幕の立証にはどれだけかかるの!?
 1日?1週間?それとも1ヶ月かしら?
 私達は一刻も早く彼女達を救い出さなければいけないのよ!
 その為には誰かがやるしかない!!
 お願い、西条さん!!
 私だって何の考えも無しにこんな事言ってるわけじゃないの!!」

「拙者も美神殿について行くでござる。
 先生がそんな状態にある以上、拙者が先生を護るでござる!!」

美神さんが少し冷静さを取り戻して言う。
どんな時でも冷静さも失わない・・・それがプロのGSだからだ。
そしてシロもそれに同意する。

「し、しかしだな・・・・・」

西条が反論しようとした時に隊長が声をはさんだ。

「令子・・・シロちゃん・・・
 私達が横島クンを確保することは決して変わらないし、
 その為にあなた達が邪魔なようなら全力で排除するわ。
 それに黒幕の立証が間に合わない場合は容赦無くあなた達を切り捨てるわよ?
 ・・・・・それでも決意は変わらないのね?」

「もちろんよ!!私は美神令子よ!!
 何もしないで後悔するようなマネだけは絶対にしないわ!!」

「もちろんでござる!!
 もとより横島先生とどこまでも運命を共にする覚悟はできてるでござる!!」

美神さんとシロは自信を持って答えた。

「オカルトGメンの隊長として認めることはできないけど・・・・
 いいわ。何も聞かなかった事にします。
 でも、絶対に生きて帰ってくること!!
 あなたは私の大切な娘なんですからね!!
 シロちゃんもよ?
 大好きな横島クンが悲しむようなことは絶対にしちゃダメよ!!」

そのときの隊長の顔は
大好きな『娘達』が自分の意志で自立したことが
嬉しくもあり、さみしくもある母親の顔だった。

「そ、そんな・・・・
 隊長まで何を言っているんですか!!?
 とにかく令子ちゃん!僕は反対だ!!
 いくらなんでも危険過ぎる!!
 誰かがやらなくてはならないというなら僕がやる!!
 絶対に君と横島クンを止めてみせるからね!!!!」

西条はそう言うと事務所を出ていった。



その数時間後
唐巣神父の教会前にて

「ふう、辺りはもう真っ暗だな。
 ピートのヤツ、まだ起きてっかな?」
(深夜零時か・・・・あと18時間か。
 予想以上にここへ帰ってくるのに時間がかかっちまったな。
 まあ、帰りは美神さんの所にある文珠のストックでひとっ飛びだから楽勝か。)

俺はそんなことを考えながら教会の門をたたいた。

「どうしたんですか、横島さん?こんな時間に?」

ピートが迎えに出てきてくれる。幸いピートも神父もまだ起きていたらしい。
俺を中へ入れてくれた。











『西条さん、予想どうりです。
 ターゲットが教会の中へ入りました。』

ザザ・・・っというノイズと共に
西条に部下らしい男から無線が入った。

『分かった。全員配置についてくれ。
 この教会を僕の部隊で取り囲む。』

俺はまだ気付いていなかった。
すでに西条が教会で張り込んでいたことに。

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