ザ・グレート・展開予測ショー

横島  IF  第三、五話  (B)


投稿者名:777
投稿日時:(02/12/28)


「ご機嫌取り〜〜〜?」

冥子さんの家に到着した俺は、ショウトラ(犬っぽい式神)に治療を受けながら、事の顛末を話していた。

「ええ、ご機嫌取りです。おキヌちゃん、かなり怒っちゃってるみたいで…」

あれは怖かった。美神さんが本気で怒ったとき並みに怖かった。一度しか見たこと無いけど。確か、あれは食うに困って美神さんの下着を売り飛ばそうとしたときだったかな。成仏すら出来ないかと思ったっけ。

ま、それはともかく。

「冥子、食べられそうになったこと無いから〜〜〜〜。ちょっとわかんないな〜〜〜」

ちょっと考えて、冥子さんが顎に指を沿えて答える。

冥子さんも十分美味・・・。いや、コメントはしないぞ。

「そうですか・・・じゃあ、怒ってる女の子が喜ぶ事って、何かありますか?」

「ん〜〜〜〜〜〜プレゼントかな〜〜〜〜〜。おキヌちゃんは幽霊だから〜〜〜〜服なんて喜ぶかも〜〜〜〜」

プレゼントかぁ。まぁ、確かに良い手段ではあるよな。

「幽霊に服ですか?」

「エクトプラズムを〜〜加工した服なの〜〜〜。うちに何着かあるから〜〜〜あげるわよ〜〜〜〜〜」

おー、冥子さん太っ腹。

いやしかし。食事だけならともかく、さすがにそこまで頼ってしまうと『ひも』になってしまうじゃないか。(←自覚無し)

「ありがたい話ですけど、ほら、こう言うのはやっぱり自分で買わないと…」

うん、こういうのはやっぱり自分で買わないと、男じゃないよな。

「でも〜〜〜安いのでも〜〜一着数百万はするわよ〜〜〜。義弟くん、お金あるの〜〜〜?」

撃沈。

ってか数百万て高っ!

「AHー。あー、んじゃあ、こうしませんか? 俺、冥子さんの仕事手伝います。そのお礼って形で・・・」

それでも十分破格なんだけどさ。

「え〜〜〜〜と、え〜〜〜〜〜〜と〜〜〜〜〜、そうだわ〜〜〜。いい仕事があるの〜〜〜。義弟くんにぴったりの仕事よ〜〜〜」

俺の言葉になにやら考えていた冥子さんが、名案を思いついた、と言うように満面の笑顔でこちらを向いた。

俺にぴったりの仕事? はて?

「餓鬼って言う妖怪がいるんだけど〜〜〜〜」

あ。あー。なんか名前聞いただけで仕事内容が分かった気がする。

「たくさんご飯食べる人の協力が必要なの〜〜〜〜〜」

了解。任せてください冥子さん。









仕事内容は、いたってシンプルなものだった。

『餓鬼をびっくりさせるくらい食べる』

びっくり、させればいいらしい。

餓鬼はびっくりするとゲップして、そのゲップと共に成仏するそうだ。





どんな妖怪だ。






ま、それはさておき。

次の日、俺達は今回の仕事現場に来ていた。

「義弟くん〜〜〜。大丈夫〜〜〜?お腹空いてる〜〜〜?」

「これ以上ないほどに」

あのあと、せっかく冥子さんの家に来ていたのに、俺は断食させられた。

なんと『冥子さんちにお泊まり』だったのだが、食事がでなきゃ価値はない。

まぁ、広い湯船と柔らかいベッドは堪能したが。

あんだけ柔らかいと、逆に腰を痛めそうだなぁ…。何かコツがあるのかな。

「いたわ〜〜〜〜。あれが餓鬼よ〜〜〜」

冥子さんが何か醜い肉塊を指し示した。

あー、喰ってる喰ってる。えらい勢いで喰ってるなぁ。

「気持ち悪いから〜〜〜〜私ここで見てる〜〜〜。頑張って〜〜〜」

「んじゃあ行ってきます」

そして俺は、戦場へ旅だった。






「よぉ、餓鬼とか言ったな。勝負させて貰うぜ」

俺の言葉に、餓鬼はちらりとこちらに視線を向け…何事もなかったかのように食事を続ける。

ほ〜〜〜、シカトっすか。


俺は無造作に流れ来る食料を掴み…




ガツッ  モグッ  グシュッ  ガリッ
 
 ジュルッ  ピチャッ  ペロッ  ゴリッ

モグッ  ガリッ  ガツッ  グシュッ

 ピチャッ  ゴリッ  ジュルッ  ペロッ


――――ゴクリ


餓鬼と何ら遜色のないスピードで、十数個の食料を胃の中に納めた。

ゆっくりと餓鬼の方を見やる。餓鬼は手は止め、こちらを見ている。

その目にあるのは、紛れもなく『賞賛』の色。そして、隠しきれない『喜び』。



ああ――――そうか。



お前も、俺と同じ――――



――――バトル・マニアなんだな。




俺達は見つめ合い、そして目で会話する。


俺『You hit me as hard as you can! GAKI!!(俺の顔に力一杯ぶち込んでみなっ!)』

餓『OK! Take it easy!!(のぞむところだっ!!)』


多分こんな会話が流れた。



刹那の後、俺達の戦いが始まる。



それはいつ終わるかすら知れないほどに激しくて

けれどすぐ終わってしまいかねないほどに儚くて


ガツッ  モグッ  グシュッ  ガリッ
 
 ジュルッ  ピチャッ  ペロッ  ゴリッ

モグッ  ガリッ  ガツッ  グシュッ

 ピチャッ  ゴリッ  ジュルッ  ペロッ


――――ゴクリ


「「ゲプッ」」


俺と餓鬼は、同時に食べ終わり…そして同時にゲップした。

満足そうに俺を見る餓鬼。手を差し出してくる。

俺はそれをしっかりと握り…そして餓鬼は、成仏した。

「あんた…最高の強敵(とも)だったぜ…」

俺の呟きが、虚空に消える。どこかで、あいつが笑ったような気がした…。


――――――――――――



「あの、おキヌちゃん。これ…この間のお詫び、と言うか何というか…その、プレゼントだよ。受け取ってくれるかな?」

おキヌちゃんにプレゼントを渡す。ああ、なんかこっぱずかしい。

餓鬼を退治した報酬として…なんか冥子さん感動して泣いてたな…エクトプラズムで織られた服を一着頂戴した俺は、その日のうちにおキヌちゃんに届けに行った。

選んだのは水色を基調とした、大人しめのワンピース。それとソックスとか靴とか一式。

おキヌちゃんに一番似合いそうな物を、真剣に選んだつもりだ。気に入ってくれるだろうか?

「わあっ…!お洋服…!ありがとうございます、横島さん…!」

おキヌちゃんが喜んでくれた。よかった、気に入ってくれたみたいだ。

早速着がえて嬉しそうにふわふわ漂っているおキヌちゃん。うん、可愛いじゃないか。

美神さんが近づいてきて・・・俺の耳元で感心したように囁いた。

「あんた織姫のとこまで行ってたの!? いいとこあるじゃない!」











・・・行ってません。









こうして、美神令子除霊事務所のメンバーは、さらなる結束を固めたのだった…。

――――――――――――
第三、五話でした。

初の戦闘シーンを盛り込んでみました。

英語は適当です。

次回はエミ…のはずなんですが、エミブラドー飛ばして一気に小竜姫に行くかもしれません。

ところで小竜姫様って肉食なんでしょうかね。竜…う〜ん…。

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