横島 IF 第三話 (後編)
投稿者名:777
投稿日時:(02/12/26)
奇妙な感覚が全身を襲い、目が覚めた。
体が妙に重い。それに、なんだか目線が高くなったような・・・?
「…無事、入れ替わったようじゃな」
俺のとなりにいる貧乏そうな青年が、見下した眼でこちらを見て言った。
どっかでみたような?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺じゃねぇかっ!!
じゃあ俺はどーなってんだ?
「げーーーーーっ!!」
じ、じじいになってる・・・。
俺の持ってた唯一の財産『若さ』までが無くなった…。目の前真っ暗だ。
「…!? マリア!? 何をしておる!?」
絶望していると、カオスが何故か驚いたような声をあげた。
見るとピンク髪の子…マリアって名前らしいが…が、カオスの身体を捕まえている。
「ドクター・カオスの命令により、逃がさないよーにします…!」
なんかしらんがラッキー。今の内に逃げちゃえ。
「いや、そーじゃなくて…あっコラ小僧!!逃げるなっ!!」
カオスが何か叫んでいるが、逃げるなと言われて逃げない馬鹿も珍しいだろう。俺は慌てて逃げ出した。
とにかく、美神さんに知らせないと。
扉の先は、地下鉄のトンネルだった。
走り続けて何とか駅に着き、公衆電話で事務所に連絡する。
早く、早く…。
「Prrrrr…Prrrrr…ガチャッ! はいっ!美神令子除霊事務所です!」
この声は…
「あっ!!お肉…じゃない、おキヌちゃん!?」
「は!?どなたですか?」
「俺だよ!横島忠夫!!」
「…どうしたんです、その声、風邪でも引いたんですか?」
おキヌちゃんの声に心配そうな響きが混じる。よかった、『俺の身体』はまだ来てないらしいな。
けれど
そこまでの会話で、電話は唐突に切れてしまった。
いや、マリアに叩き壊されたのだ。
破片が頬をかすめ、血が流れ出す。
悠然とこちらを振り向くマリア。その姿に、俺は・・・
俺は…
「やぁってやるぜぇっっ!!!」
燃えてきたぁぁぁっっっっ!!!(←熱血漢)
これでも一応、戦闘法は学んでんだっ! 霊能力者には勝てないかもしれないけどなぁっ、力が強いだけの奴なら良い勝負が出来んだよっ!
この身体だって結構鍛えられてる。さっき駅まで走って確認した。
俺の拳を止めてみろぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!
『ガキン!!』
Ouuuuuuuuuuuuuuch!!!!
こいつ、ロボットか。見ただけじゃわかんなかったぞ。
ちくしょう、馬鹿なもん殴っちまった。
一瞬呆然としていた俺の腕が掴まれる。もう…逃げられない。
マリアが拳を振りかぶるのが見えた。激痛を覚悟して目をつぶる。
けれど、襲ってきたのは激痛ではなかった。
奇妙な感覚が全身を包む。
目を開けると、そこにはマリアでなく、怖い顔をした美神さんが立っていた。
「も、元に戻ったのか!?」
助かった…のか?
「クサい芝居してんじゃないわよっ!!」
「え゛………」
ぜんっぜん、助かってませんでした。
むしろマリアに殴られた方がましだったかも知れない。
30分くらい殴られ続けた気がする。
しかも生かさず殺さずで。
血だまりに沈む俺を見て、すっきりした顔で返り血を落としに行く美神さん。
うう、おキヌちゃん。お願い、介抱して…。
けれど、優しくて温かくて柔らかいおキヌちゃんは、いつまで経っても来なかった。
さっき電話したときは、確かにいたはずだ。
心配になり、ふらふらと立ち上がっておキヌちゃんを捜す。
嫌な予感がする。まさか…まさか………!?
本棚で『それ』を見つけ、俺はひどいショックを受けた。
おキヌちゃんの、変わり果てた姿…。
『瓶詰めおキヌちゃん』
やっぱり塩漬けかなぁ?
――――――――――――
これで物語は終わりだ。
今の状況が分かって貰えただろうか?
目の前に瓶詰めおキヌちゃんがあって、俺はそれをどう料理するか思考中、と言うわけだ。
BGMにメロドラマなんか流したせいで妙な思考も混じってしまったが。
ま、それはともかく。
塩はあるから塩漬けは可能…。焼酎と砂糖を入れて『おキヌちゃん酒』とかでも面白い…。
考えていると、美神さんがシャワーから上がってきた。
「あんた!まだ…」
「あ、美神さん。やっぱり塩漬けですかね?」
「はぁ?」
怒りの声をあげる美神さんを制し、俺は疑問をぶつけてみた。
美神さんは呆けた表情をして俺の手元を見て…全てを納得したかのようにため息をついた。
「はぁ、本物みたいね。食べちゃダメよ。出してあげなさい」
「え〜、でも…」
「でもじゃない!いいからだしなさいっ!!」
瓶をひったくられた。そのまま蓋を外す美神さん。
あ〜あ、勿体ない…。
モクモクモク…っと、煙と共におキヌちゃんが現れて…
「横島さんのバカぁーーーーっ!!!」
花瓶でどつかれた。
ふっ…良い攻撃だ、おキヌちゃん…。
そして俺は、本日二度目の夢の国へと旅立った…。
――――――――――――
第三話、ドクターカオス登場、です。
いやぁ、難産でした。
クリスマスにちなんで、少々『ラブ』を入れてみようと思ったのですが…どうでしょう?
今のところ正ヒロインおキヌちゃん、準ヒロインハイラ、サブヒロイン冥子さんって感じです。
カニバリズムに目覚めそうな横島君ですが、次回も読んでくださると嬉しいです。
次回は…どの話にしようかな?
あ、感想もよろしくお願いします〜。
今までの
コメント:
- お肉!・・・じゃないおキヌちゃん! いいな〜ぼけぼけですね。 横島君の価値観が変わるとこうなっちゃうんだ。 もうこの話最高です!! (狐)
- おキヌちゃん料理が一瞬でもいいかも、と思ってしまった私はダメでしょうか?(笑) ヒドイことを他人にしようとしても、今回の横島クンは被害に遭うことのほうが多かったですね。令子のシバキに30分も耐えた横島クン、哀れです...(泣)。「横島さんのバカぁーーーーっ!!!」と叫びながら花瓶でどつくおキヌちゃんがツボでした(爆)。次回も楽しみにしております♪ (kitchensink)
- 瓶詰めおキヌちゃん……いいね……すごくいい……俺的にはどっかに飾りたいけど…ここの横島君は潮漬け(笑)
次回も、楽しみにしてます。頑張ってくださいね♪ (リュート)
- 感想、どうもありがとうございます。
>狐さん
おキヌちゃんってカ行とナ行の順番を変えるとお肉ちゃんになるんですよね。
だから何だと言うわけじゃないですが。
最高、とまで言っていただき、恐悦至極であります。
>kitchensinkさん
おキヌちゃん料理…やっぱり塩漬けですか?
これからもきっとおキヌちゃんは横島君をどつくと思います。
それが定めなんです…。
>リュートさん
原作じゃ泣きながらガラスを叩いてるんですよね。
あの姿が可愛らしくて可愛らしくて…。
でも、横島君には美味しそうに見えるんです。 (777)
- あんまりといったらあんまりな・・・。シリアスな始まりかと思えばオチは瓶詰めおキヌちゃん・・・イイッ!!ただ、愛=食欲という間違った方程式は、もはや、美神さんのせいではなく元々そうだった(なにが)と思わずにいられないという・・・。
三大欲求のうちの二つが食欲に占められてしまった横島くんの図って感じですね。・・・っていうか、今はカオス? (veld)
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