ザ・グレート・展開予測ショー

横島 IF 第三話  (前編)


投稿者名:777
投稿日時:(02/12/26)

恋をしているのかも知れない。

血が滴り落ちるのもそのままに、俺はそんなことを考えた。

彼女と初めて出会ったとき、なんて優しくて温かい娘なんだろう、と思った。

二度目の出逢いのとき、なんて柔らかい娘なんだろう、と思った。

俺は彼女を求めている。それは間違いない。

ただ、俺は彼女の体だけを求めているんじゃないだろうか、という不安に駆られるときもある。

俺はいつも、彼女の体だけを見つめているような気がする。

柔らかくて温かい、彼女の体だけを。

俺が欲しいのは、いったい何なんだろう?

本当に俺は、『彼女』が欲しいのだろうか?

「どうなんだろうね?」

目の前の、捕らわれたままの彼女に問いかけてみる。けれど、彼女には伝わらない。

伝わるはずが無いじゃないか。俺は何も言葉に出していないんだから。

捕らえられた彼女は、何も答えずに涙目でこちらを睨んでくる。その視線が、痛い。



何故こんな状況になったか、それはこれから語る物語で明らかになるだろう。

古代の秘術を用いて不死になった、錬金術師ドクター・カオス。

この男が中心となる、血みどろの物語。

この物語が始まったのは、旅行から帰ってきた冥子さんが美神さんの事務所を訪れたときだった………





――リポート3 ドクター・カオスの挑戦!!――


「ドクター・カオス!?…ってあの錬金術師の!?生きてたの!?」

ケーキを食べながら、美神さんが驚きの声をあげた。

向かいに座っているのは旅行帰りの冥子さん。俺は美神さんの隣でケーキを食べている。

ちなみにおキヌちゃんはこの時間、浮遊霊達との茶飲み話に出かけている。多分、帰ってくるのは一時間後くらいだろう。

俺達は冥子さんの土産話を聞いている最中だった。

その土産話に出てきた一人の男の名が、美神さんを驚かせるだけの力を秘めていたらしい。

と、話は変わるが美神さんの今日の服は豹柄だ。つまり肉食獣。仲間、仲間。(←馬鹿)

「そうなの〜〜〜。古代の秘術を使って、不死の身体になったはいいけど、ここ百年ほど姿をくらましてじゃない〜〜〜? それが今日本に来てるのよ〜〜〜〜!」

頬に手を当てて長いセリフを喋る冥子さん。久しぶりに会ったけど、やっぱりどこか微笑ましいよなぁ、この人。

「へーーーー。どうして知ってるのよ、冥子?」

「空港で偶然会っちゃったの〜〜〜!!サインもしてもらっちゃった〜〜〜!」

『ドクター・カオス』と書かれた色紙を笑顔で見せびらかす冥子さん。すげーいい笑顔だ。

「錬金術師としてはすごく有名人ですもの〜〜〜。貴重でしょ〜〜〜」

有名人かぁ。いいなぁ、有名人のサイン。

「・・・有名ならなんでもいいのね」

美神さんが何故か呆れてる。しかも苦笑気味に。

そんな反応も気にせず続ける冥子さん。

「でね〜〜〜〜!!大変なのよ令子ちゃん〜〜〜!!」

精一杯深刻そうに話す冥子さん。ただ、生来の可愛らしさのせいか、どこか深刻に見えない。



冥子さんの大変な話をまとめるとこうなる。

ドクター・カオスが日本に来たのは『魂を交換して他人の肉体を奪う』という秘法を完成させたためで、それを使う場所として日本を選んだらしい。

奪う肉体は、強力な霊能力を持つ人間がいいらしい。

冥子さんはそう言う人物について尋ねられたらしい。





「………で、令子ちゃんのこと洗いざらい教えちゃったの〜〜〜〜!!ここは危険よ〜〜早く逃げて〜〜!!」

教えちゃったんだ、冥子さん。

「こらっ!!」

あー、怒られてる怒られてる。あ、冥子さん泣きそう。お、美神さんも気づいた。慌ててる慌ててる。あらら、美神さんどっかいっちゃった。

「ひどいわ〜〜〜。令子ちゃんてば怒ってばっかり〜〜〜。せっかく教えてあげたのに〜〜〜」

悪意がない分、余計タチが悪いよなぁ冥子さんって。

「まぁいいわ〜〜〜。義弟くん〜〜。一緒にご飯食べに行こ〜〜〜」

何とか暴走せずに泣きやんだ冥子さんが、きらきら輝く目でこっちを見つめて聞いてきた。

旅行帰りでお腹空いてるのかな? まだお三時だけど…まぁ、俺はいつでも腹減ってるし、全然OKだが。

あ、ちなみに俺の呼び名は『義弟くん』に固定された。

「もちろん、ご一緒しますとも、冥子さん」





念願の松阪牛を奢って貰った。

冥子さんはほとんど食べず、ずっと旅行の話をしていた。

きっと話し足りなかったのだろう。

楽しい旅行でしたか、と聞くと令子ちゃんや義弟くんに会えなくて寂しかった、ともらした。

今度みんなで一緒に旅行しましょう、と言うとすごく嬉しそうな顔をした。

別荘に招待とかしてくれないかなぁ。(←他人任せ)

その後、冥子さんを家まで送った。

冥子さん、松阪牛、美味しゅうございました。









で。







冥子さんを家に送って、事務所への帰途について数分後。

俺の目の前に、ピンク髪の女の娘が立ちふさがった。

今お腹一杯だから、さすがに入らないよ?(←肉?)

あ、腕掴まれた。

「ふっふっふっ…横島忠夫じゃな? わしはドクター・カオス!お主にはわしの道具になってもらう」

俺の背後から現れる謎のじーさん。 んー。 話が見えないんだが。

って、ドクター・カオスだとっ!?

「くそっ、放せっ!!」

慌てて逃げようとするが…俺を掴んだ手が放れない。ちくしょう、なんて握力だ!

「無駄じゃよ・・・マリアの握力は200sある。人間では振り解けんわい」

そう言うと、カオスは『にやっ』と笑ってコートの前を開いた。

高齢とは思えないほど鍛え上げられた筋肉と、その胸に書かれた魔法陣があらわになる。

魔法陣がかすかに帯電して・…

「ぎいいいいやあああああああっっっっっっ!!!!」

俺の意識は闇に落ちていった。

最後に考えたこと。それは。





ああ、松阪牛出ちゃった…。(←もんじゃ)








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字数オーバーのため、二つに分けます。

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