ザ・グレート・展開予測ショー

AFTER DAYS!!(4)<老練>


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(02/12/26)

<老練>



「仏罰ですーーーーーーっ!!!!!」

「かんにんやーーーーーっ!!!!!」

俺と小竜姫様がドタバタやっているとその騒ぎを聞きつけて
猿神(ハヌマン)が奥から出てきた。

「なんじゃい、騒がしいのぅ。
 おお!!横島か。
 さっき、美神美知恵から連絡があったぞ。
 お前さんもえらい事になっとるのう。」


俺はそこで初めて俺の体が魔族化していることを聞かされた。


「すいません、横島さん。
 時期が時期だけにてっきり横島さんの姿をした魔族が襲撃に来たものだと・・・・・」

それを聞いて小竜姫様がふかぶかと頭を下げる。

「いいんですよ、小竜姫様。
 頭をあげてください。
 はあ・・・・
 しかしそんな事になってたんですか、俺の体は。
 だからオカルトGメンが追ってきたのか・・・
 でも、それよりもルシオラ達のことを教えてください!!
 ルシオラとパピリオが何物かに連れ去られたんです!!
 隊長の話だとなにやら神族が関係しているらしいんすけど・・・」

そうだ。俺はそのことを聞きに妙神山へやってきたんだ!!
ルシオラ・・・・パピリオ・・・・・無事でいてくれ!!

「そうなんだ。私もそのことについて報告しに来たのだ!」

俺の言葉に反応してワルキューレが話を進める。

「先日、魔族正規軍の私の隊に入隊が決定していたベスパが
 神族正規軍を名乗る者達に連行された。
 だが、そんなことは事前に報告を受けたわけでもない。
 神族の代表として納得できる答えをもらいたい。」

俺とワルキューレの質問に小竜姫様は青い顔をして
驚きの声を上げた。

「ええ!!??
 もう行動に出てしまったんですか!?
 ・・・・・・実は一部の神族上層部、
 主に反デタント派や過激派が不穏な動きをしていて
 暴走しかねないと言う情報が入ってきたんです。
 そんなことを食い止めるために
 情報収集や時間稼ぎをしていたところなんですが・・・・・遅かった様ですね。
 ・・・・・・・今回の事件に荷担している神族上層部の中には正規軍とも
 かかわりが深い者もいると聞きます。
 おそらく、その3人を連れ去ったのは
 神族正規軍と見てほぼ間違い無いでしょう・・・・・・」

小竜姫様は本当に申し訳なさそうな表情で話している。
同族とよべる存在がそんなことをするのを見るのはやはりつらい。

「ええ!?正規軍ってそんな簡単に動くもんなんすか!!?
 だってそいつら、神族から見たら反逆者でしょ!?」

「実は本当に情けない話しなんですが
 アシュタロスの一件で神・魔界とチャンネルを完全に遮断されたことを
 危険視して今回のことを黙認したり後押しする神族や
 もともと反デタント派で神話級崩壊(ハルマゲドン)をおこす口実を
 欲しがってる神族がかなりの数いるんです・・・・
 もちろん全ての正規軍がそうではありませんし、
 表だって行動はできないでしょうが
 もしもベスパさん、ルシオラさん、パピリオの3人を連れ戻しに行くのであれば
 小隊の2つや3つの妨害はあると思われます。」

小竜姫様の表情には怒りの色さえ見える。
同族であるだけにそんな輩がいるということが許せないのだ。

「クッ・・・!!
 神族正規軍が相手となると私は直接手が出せない!!
 魔族と神族の正規軍どうしがぶつかればハルマゲドンまで一直線だ!!
 それこそ反デタント派の思うツボだからな。」

ギリッとワルキューレが歯をならした。
下唇からは血がにじんでいる。
仲間が連れていかれ、敵の姿は見えているのに手を出せない・・・・・
軍人として、そしてなによりワルキューレ個人としてこれほど悔しい事は無い。

「な、なら私が・・・・・・」

「ならん!!ならんぞ!小竜姫!!!!
 わし等のすべきことは今回のことに力を貸している神族を
 見つけだしてその証拠を掴むことじゃ!
 今、下手に動けば状況が悪くなるだけだという事が分からんのか!!?」

小竜姫様が声を上げようとした瞬間に老師がそれをさえぎった。

小竜姫様はやるせない顔をして老師をにらんでいる。
だが、老師の言うことが正論だ。

「あの・・・・
 お気持ちは嬉しいんですけれど、やっぱり俺一人で行きます。
 それが一番いいと思いますので・・・」

「何を言っているんだ!!
 貴様は今、自分がどれだけ危険な状況にあるのか分かっているのか!?」

「何を言ってるんですか!?横島さん!!
 そんなに私の事が信用できないのですか!?
 もっと私のことを信用してください!頼ってください!!
 私だって横島さんの力になりたいんです!!!!」

俺がおずおずとワルキューレと小竜姫様に返事をすると二人から
激しい返事が帰ってきた。

自分の言った言葉に気付いてボンっと真っ赤な顔になる小竜姫様。

ワルキューレは『やれやれ』という顔をしたが
急に真面目な顔になって真剣に俺に話し出した。

「いいか、横島!!
 貴様は何か勘違いをしているようだが
 魔族化=パワーアップというわけでは無いんだぞ!!
 さっきも言ったが貴様は今、非常に不安定で危険な状態にあるのだ!!」

ワルキューレの言葉を聞いて小竜姫様は真っ青な顔になった。
どうやらワルキューレの話に心当たりがあるらしい。

「な、なんだよワルキューレ!?危険な状態って!?
 それに魔族化すればパワーアップする事だって間違いじゃないはずだろ!?
 陰念や勘九郎の例だってある!!
 魔族になったって俺は何も変わらない!!
 あの3人を助ける為なら喜んで魔族になってやるさ!!」

ワルキューレの言ったことは図星だった。
俺は魔族化することで確実にパワーアップできると思ってたし
神族正規軍だってパワーアップした力と文珠を使えば
勝てないまでも戦闘を回避したり、逃げ出すくらいはできると思っていた。

そしてあまりにも思っていたとおりのことを言われてしまったので
つい激昂して声を荒げてしまった。
そこへ老師が俺をなだめに声をかける。

「おちつけ!小僧!!
 ・・・少々混乱してる様じゃな。
 おぬしがパワーアップしない理由と危険な状態にある理由をこの二人の口から話すのは
 この二人にとって少々酷というもんじゃろ。ワシが説明しよう。」
 
老師がゆっくりと腰を上げ、俺の前まで来て説明をはじめた。

「まずおぬしがパワーアップしない理由じゃが
 勘九郎達は完全に魔族化する事で魔装術の力を取り込んだわけじゃな。
 しかし、おぬしは半分人間であるためにそれ以上の力を取り込むことができない。
 つまりおぬしの120〜130マイトの人間としての霊力の器は
 アシュタロスの結晶の力を取り込むにはあまりにも小さすぎるということじゃ。
 そして、人間の霊力と魔族の魔力は反発しあう性質をもつ。
 小さな出力で、すなわち人間として霊力を放出している間はなんともないじゃろうが
 限界以上の出力で霊力を放出すれば足りない分を魔力で補うことになるな。
 反発する性質をもつ霊力と魔力を体内で練れば凄まじい激痛がお前を襲うことになる。
 この反発力はおぬしが考えるよりもずっと大きいぞ。
 もしも全開で魔力を使おうなどとすれば
 おぬしの肉体など跡形もなく吹き飛ぶじゃろう!!
 これがおぬしが危険な状態にある理由じゃ。」

俺は老師の説明を受けて
病院で文珠を使おうとした時、激しい激痛が俺の心臓を襲ったことを思い出した。

小竜姫様とワルキューレも暗い顔をして下を向いている。
・・・・・どうやら老師の言葉に間違いは無いようだ。

「さらに、ワシ等はおぬし達との接触を一切絶たねばならん。
 どうせおぬしは止めたたころであの3人を助けに行くじゃろ。
 この件の黒幕を探し出すまではワシ等は絶対に目立つわけにはいかんのじゃ!!」

「ろ、老師・・・・!!
 それではあまりにも横島さん達が・・・・・」

老師の非情な言葉に小竜姫様が抗議の声を上げる。
老師はニヤリっと笑って話を続けた。

「ワシ等はおぬし達に力を貸すことはできん。
 ・・・・・ただし、竜神の装備を盗まれたならそれは仕方が無いじゃろうな。
 『怒り狂ったおぬしが知り合いの神族から
 竜神の装備を盗んで犯人を探そうとする・・・・』
 よくあることじゃろ。
 ついでにワシは翌日、竜神の装備が盗まれたことを報告に神界へゆかねばならん。
 その時に何者かが神界とのチャンネルを一緒に通過しても
 それは不可効力というものじゃろう?」

老師が再び嬉しそうにニヤリと笑う。
さすが老師!伊達に歳は食っていない!!

「・・・・なにかめちゃくちゃ楽しそうだな。」

「久々に暴れてみたくなっただけじゃよ!!
 上層部のいけすかんヤツ等に一泡ふかせてやるわい!!」

ワルキューレが老師に声をかけると老師の楽しそうな声が返ってきた。

「では、ワシと小竜姫は引き続き黒幕の洗い出しに全力を注ぐ!!
 ワルキューレも協力してくれ!!」

老師は更に老師は言葉を続ける。

「“小竜姫、明日午後六時に神界へ『定時報告』へいく。遅れるなよ。”」

老師はわざとらしく俺のほうを向きながら『台詞』を喋る。
妙神山に住んでいる小竜姫様が遅れるはずはないのだから。



つまり俺に明日の午後六時までに仲間を集めてここへ戻って来いと・・・。



こんな言い方をしたのは盗聴を防ぐためか、それとも老師の性格のためか。
とにかく、全ての準備は整った。後は実行に移すだけだ。

俺はあらかじめ老師が用意してくれていたであろう竜神の装備を
受け取って(わざとらしく入り口付近にフロシキでまとめてくれてあった。)
妙神山を後にした。
文珠の生成が危険だと分かったので
美神さんの事務所まで歩きと電車で帰らなくてはいけない。
事務所には文珠のストック(美神さんのヘソクリ)があったはずだ。


俺が後にした妙神山で楽しそうに計画を練る老師と
黒幕の洗い出しに全力を注ぐワルキューレの横で小竜姫様だけが
心配と不安の色を隠しきれなかった。

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