ザ・グレート・展開予測ショー

spirit of the globe -1-


投稿者名:小梅
投稿日時:(02/12/25)

 月明かりに照らされた夜の海は、水面がキラキラと光り輝き、見事なまでに美しかった。
 時折感じるそよ風は、潮の香をたっぷりと含んでいて、とても心地いい。
 「綺麗ね・・・」
 美神は思わず呟いた。
 誰かに話しかける、という感じではなく、ただ単純に自分の感動を口にしただけだった。
 それは横島にもわかっていた。
 だが、ほぼ無意識に、
 「そうっスね・・・」
と、やはり独り言のように呟いた。


 それは仕事を終えた帰り道だった。
 すっかり深夜になってしまい、海沿いの道を美神愛用のコブラで事務所へと飛ばしていた。
 今回はおキヌは同行していない。
 2人で充分だ、楽観的に見ていた仕事が、予想外にもずいぶんとてこずってしまった。当然帰宅時間も遅くなる。
 早く熱いシャワーを浴びたいなーと思っていた美神だったが、ふっと横を見ると、そこには今までに見たこともないような美しい景色が広がっているではないか。


 そういえば、今回の仕事の依頼人が言ってたっけ・・・。
 美神は思い出した。
 「この村は何もねえところだが、あの海だけは私ら村人の誇りだ。あんたがたも  見ていきなさるがええ、私らの自慢のあの海を」
 美神は海を見る気など毛頭なかった。
 「それは結構ですわね」などとにこやかに言ったものだったが、内心、こんなド田舎、とっとと除霊してとっとと帰ろうと思っていたのだ。


 しかしどうだろう。
 実際にこの光景を目の当たりにしてみると・・・。
 美神は思わず車を止めた。


 波の音だけが静かに聞こえる。
 美神は時間を忘れ、この空間を楽しんでいた。
 

 ・・・どれくらい時間が経ったのだろう・・・。
 しばらく海を眺めていた美神だったが、隣に立っていたはずの横島が姿を消しているのに気がついた。
 「・・・横島クン?」
 ガードレールの向こうは高い崖である。
 まさか、私の気づかないうちに、崖から落ちたんじゃ・・・?
 そんなアホな、いくら横島クンとはいえ、それはありえないわよね。
 と思いながらも、自分の思考とは逆に、そっと崖の下を覗き込んだ。
 急に、横からヌッと横島の腕が飛び出した。
 「きゃっ!!」
 「わっ!?」
 まさか美神がそんなに驚くとは思っていなかったので、当の本人の横島が逆に驚いてしまった。
 「あービックリした!・・・もっと気配出して来なさいよ!」
 「す・・・すんませ〜ん!別に驚かすつもりじゃなかったんですけど・・・」
 横島の両手には缶ジュース(お茶)が握られていた。
 「どうしたのそれ?」
 「いや、自販機がそこにあったもんスから」
と、相変わらずの軽い笑顔で、
 「美神さん、なんか寒そうにしてたし。これあったかいですよ」と横島は美神に一本手渡した。
 「あ・・・ありがと・・・」
 美神はぼそっと呟いたのだった。


 肌寒いこの季節、熱いお茶を一口ずつ飲むと、体の芯から温まってくる。
 美神は停めてある車に寄りかかって飲んでいた。
 横島はガードレールに片手をつき、
 「いやー、ホント、絶景っスねー」
 と、先ほどと同じように海に見入っていた。
 しかし美神が眺めていたのは、海ではなく、同じ視界に入ってくる横島の後姿だった。
 あたたかいお茶を買ってきて、何気ない、当たり前のような笑顔で「ハイ」と美神に手渡す。
 その何気ない彼の一連の行動に、美神はちょっぴり感動したのだった。
 いや、このお茶は美神のことを思って、だけではなく、ただ単に横島自身も飲みたかっただけに違いないのだが。
 しかし、そこに彼の潜在的な優しさみたいなものが感じられた気がして、何となく嬉しくなってしまった。
 
 なぜだろう、たったこれだけの、こんな些細なことなのに、美神は瞬間、横島がとても好もしく見えた。
 いつもの美神ならば、瞬時にこの気持ちは無理やり押しつぶしてしまうだろうが・・・。
 この美しい海を長時間眺めていたせいだろうか。
 美神にとってこの「おもしろくない」気持ちは、押しつぶされることなく、彼女の心の中に留まっていた。
 お茶を車のシートに置き、車に寄りかかるのをやめ、美神はスタスタと横島の隣へ移動する。
 ・・・本当に綺麗な海だ。
 波のまにまに、魚がキラキラと漂っているのが見える。
 唯一の明かりはわずかに照らされている月明かりだけなので、視界は悪い。
 けれどもそれが逆に幻想的で、まるでおとぎ話のような光景を創りだしていた。
 あまりにも非現実的なのである。
 「横島クン」
 「はい?」
 横島も美神も、お互い顔を合わせずに、海の方を見ながら会話する。
 少し間を置いたあと、ふっと、美神は口を開いた。
 「私にキスしたかったら、してもいいわよ」

   −続くー

 初めまして、小梅と申します。
 勢いで書いちゃったものの、なんかヘタクソな話でごめんなさい。
 実は赤川次郎先生の「三毛猫シリーズ」、石津さんと晴美ちゃんのエピソードを参考にしてます。
 なんか素直じゃない言い方が美神さんみたいだな〜と思ったので、思わず書いてしまいました。
 これからももっと書いてみたいな、と思うので、見かけたら読んでみてくださいね。
 ちなみに私は美神さんと横島くんを応援してますv

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa