ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−23


投稿者名:NAVA
投稿日時:(02/12/25)






 「い、今時のマンティコアって超加速まで使うわけ?」

 美神がたら〜りと汗をかきながら誰にともなく愚痴る。

 「身体が霞む理由は分かったけど、超加速までは防げないのねー」

 ヒャクメが応じる。

 今回は珍しく仕事をしていたようだ。

 「霞む理由は?」

 すぐさま美智恵が問い質す。

 「どうやってるのかは分からないけど、自分の存在確率に干渉してるのねー」

 「何だそりゃ?」

 雪乃丞達には初めて聞く単語だ。

 「存在確率と存在とは一つ。
  従って存在確率の存在確率とは存在の存在確率と同じこと。
  顕在と潜在の違い、つまりは気づいているか否か、歴史の分岐を促すパラレルワールドへの入り口よ。
  過去も現在も未来も同時に進行している。
  それを別つ時間とは幻である」

 量子力学のシュレディンガーの猫でも有名よね。そう解説を終える美智恵。




 『・・・・・・・・・・・・・・』




 戦闘中にも関わらず奇妙な沈黙が走る。

 「すまん。
  日本語で話してくれ」(最初から日本語で話してます)

 雪乃丞もピートもタイガーもおキヌも・・・というか、美智恵とヒャクメとワルキューレとカオス以外は全員涙目だ。

 「つまり、ここに一匹の猫がいるとしましょう。
  その猫を真っ黒な箱で隠します。
  当然その中は見えません。
  さて、問題です。
  その箱の中に猫はいるでしょうか?」

 「いるに決まってるじゃねぇか」

 雪乃丞が何を馬鹿な質問を?といった風に答える。

 「半分アタリで半分ハズレ。
  箱の中に猫はいるかも知れないし、いないかも知れない。
  実際に箱を開けてみないと分からないのよ。
  本当にそこにいるかどうかはね」

 「はぁ?」

 「マジックでも何でも良いのよ。
  いるべきところに猫がいなかった。
  良くあることじゃない?
  だから実際に見て、触れて、確認しなきゃ、本当にあるかどうかはわからない。
  それが存在確率って奴よ」









 「ソンナ理屈ダッタノカ・・・・」

 






 「「「「「「「「「「お前が言うな!!!」」」」」」」」」」






 マンティコアの呟きに突っ込めた人間はマシな方だった。








 「シクシクシクシク・・・・分かりませ〜ん」

 「エミさんはどうしてますかのー」


 こんなことを言っている人間が一人や二人では無かったことを追記しておく。



 更に一方では親子喧嘩勃発。

 「だから大学くらい出ときなさいって言ったのに!!!」

 「ママだって高卒でしょーが!!!」

 「私は公彦さんから直接教わったから良いの!!!」

 「そもそも量子力学なんてあの人も専門外でしょうが?!」

 「あの人は生物学が専門ってだけで、複数の分野で博士号を取ってるんです!!!!」

 「私は高卒でもGSとして成功してるんだから良いじゃない!!!」

 「今までは!でしょ?!現にピンチじゃないの!!!」

 「そ、そうよ!ピンチよ!ピンチなのよ!!ヒャクメ!!!」

 旗色が悪くなったところで戦術撤退を余儀なくされる美神。

 「はいなのねー?」

 「結局どうすれば攻略出来るのよ!
  早く説明なさい!」

 「ちゃんと話は聞いて欲しいのねー。
  私はこう言ったのねー。
  『身体が霞む理由は分かったけど、超加速までは防げないのねー』って」

 「・・・つまり超加速も防げなければ、霞むのも防げないってこと?」

 「そうなのねー。
  ちゃんと話を聞けない人間は大学に行っても無駄なのねー」

 やれやれ。そんな風情で肩を竦めるヒャクメ。





 「「・・・・こんの役立たずがぁーーーー!!!!!」」




 美智恵と令子のダブル神通棍で吹き飛ぶヒャクメ。



 「・・・ソコノ眼鏡。
  ソロソロ再開シテモ良イカ?」

 「・・・そうしようか」







 「フム・・・」

 美神親子やタマモ達が激戦を繰り広げている中、

 小竜姫はフォローを入れながらマンティコアを観察していた。

 時には存在確率への干渉、時には超加速で攻撃を避けるマンティコア。

 戦闘が始まって5分近く経つが、まともな一撃を加えることは出来ていない。

 逆にこちらは軽いとはいえ、少なからず手傷を負わされている。

 「小竜姫様!ちゃんとマジメにやってよ!」

 美神から苦情が来るも無視。

 こちらの攻撃が通用しないわけではない。

 攻撃が当たらないのだ。

 存在確率への干渉や超加速が間に合わなかったりで、こちらの攻撃はかすめたりしている。

 問題はどうやって攻撃を当てるかだ。

 「ふう・・・仕方ありませんね」

 そう言って、マンティコアに強襲をかける小竜姫。

 マンティコアは身体を霞ませて攻撃を避け、その後に実体化。

 空振りして背中を見せている小竜姫に襲い掛かる。







 ドガッ!!!!






 吹き飛んだのはマンティコア。

 苦悶の表情を浮かべ、小竜姫に振りかざした右の前脚が折れ曲がっている。

 それを見てハテナマークを浮かべる一同。

 「な、何で?」

 見ると小竜姫の脇腹にはマンティコアの一撃が加えられた跡がある。

 「簡単ですよ。
  どれだけ早く存在確率に干渉したとしても相手に触れるためには、
  少なくとも相手に攻撃するための部位を実体化しなきゃ駄目ってことですね」

 「あの・・・そんな戦法、私達がやったら一撃で死にそうなんだけど・・・?」

 「分かってます。
  ワルキューレ、ジークを加えた我々神族が引き受けます。
  アナタ方は次に備えて休んでてください」

 「防御力なら自信がある。
  俺も加えてもらおうか?」

 雪乃丞が名乗り上げる。

 「ではお願いします」

 小竜姫たちが腹を括ってから決着が着くのは10分後のことであった。





 ちなみに・・・一番の重傷は美神親子のダブル攻撃でノビたまま戦闘を終えたヒャクメだったとか。

 



 「はぁ・・・派手にやられたわね」

 美神がぼやく。

 神魔調査隊の面々は満身創痍だ。

 とてもじゃないが、次に控える究極の魔体との戦いに耐えられるとは思えない。

 「すみません・・・・」

 「良いのよ。ただの愚痴だから。
  アンタ達がいなきゃ、私達だけでマンティコアの相手をしなきゃいけなかったし・・・。
  勝てる気しないわ」

 「私と小竜姫を優先してヒーリングだ。
  ああ、そこのヒャクメは最後で良い。
  最初から戦闘力は期待していない」

 ヒャクメがシクシク泣いているが、それは無視。

 「あら?別に急ぐ必要はないわよ?」

 美神は事も無げに断言した。

 「どうせ実験データの採取なんでしょ?
  だったら次の究極の魔体こそがメインディッシュってわけで。
  全開状態の私達を倒さなきゃ意味無いもの」

 「美智恵殿と同じ見解というわけか・・・」
 
 ワルキューレ=リリスは考え込む。

 ――――究極の魔体はまだ未完成だったはずだが・・・。
     マンティコアの強さを考えれば、その強さは相当な物と考えて良い。
     だとしたら、この面子で勝てるのか?
     場合によってはメドーサ達の援護を期待するか?
     ・・・ありえないな。
     恐らく奴らは奴らなりに別の手段を講じているはずだ。

 思索に耽るワルキューレを尻目に、全員が戦闘に耐える程度には回復していた。

 また、ヒーリングしている間にこの先の調査は完了している。

 地下へ進むエレベーターが2基あるとのこと。

 「もう変な罠があると考えるのは無駄ね。
  さっさと行きましょう」

 こうして美神達は地下2Fへ向かうこととなった。












 「さっきのと比べると小さいわね」

 目の前には2基のエレベーターがある。

 右側に○、左側に×と書かれている。

 しかもご丁寧に看板があり、そこには『それぞれ一度しか使えません』と明記してある。

 1Fから地下1Fへ来た際のエレベーターは全員が一度に乗っても大丈夫なくらい大きかったが、

 今度のエレベーターは1基につき半分の人数しか乗れそうにない。

 「・・・・変な罠云々と言ってたが・・・。
  これが罠臭いと思うのは私だけか?」

 ワルキューレがジト目で美神を睨む。

 「両方のエレベーターが同じ地点に着くとも限りませんしね」

 とは小竜姫。

 「そもそも今までが親切過ぎたような気もするよ」

 とは西条。

 「ま、ママだって同じこと言ったんでしょうが?!!」

 「あら?私は『罠が無い』なんて緊張感を失わせるようなことは言ってなくてよ?」

 「まあ、それはともかくだ。
  このエレベーターの○×ってのは正解のルートと不正解のルートってことだろうか?」

 唐巣が場の修正を図る。

 「立て看板から見てもそうなんでしょうね・・・。
  でも問題は何をもって正解と不正解を分けるかってことよね」

 そう令子が応じて一同は沈黙する。

 究極の魔体直行便という意味で○×なのか。

 それもと究極の魔体を避けて進めるから○×なのか。

 考え出したらキリが無い。

 結局、さきほどの美智恵チームと令子チームに別れて、それぞれ○と×のエレベーターに分乗することとなった。











 数分後、ベルゼブルからメドーサに連絡が行く。

 『美神美智恵達が究極の魔体と戦闘状態に突入。
  美神令子達はエレベーターの中で足止め中』

 と。



今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa