ザ・グレート・展開予測ショー

聖なる夜


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/12/25)

聖なる夜、アナタは一年前のこの日を覚えているだろうか?
「覚えているわきゃないよなあああ…」
地の底までのめりこみそうな声で横島。
このまま地球の反対側のブラジルまでいきそーな勢いである。
(の、前に窒息死するだろうが)
今日は12月25日である。
恋人達にとっての一大イベント!(のつぎの日)
やろーは彼女を喜ばせるために、グレードの高いホテルを予約し、これまたホテル代にも勝るとも劣らないほど高価なプレゼントを用意するという、まあ男にとってはある意味ものすっごく痛い日であろう。
が、しかし、横島はそれをものすっごく楽しみにしていたのだ。
少ない給料を主婦のような慎ましさ(笑)でやりくりして、ホテルも予約したし、プレゼントも用意した。
なのにである!
、いちおう彼女であり、そしてまた雇い主でもある美神の鶴の一声。
「あ。25日よろしくね横島くん」
というものである。
しかも自分はパーティにいくという。
そして横島は、除霊現場である、くたびれた三流ホラー映画にでてきそうな洋館にいるわけである。
あんまりの仕打ちである。
さめざめと心のなかで涙を流しつつ横島は、目の前の悪霊をぎんっと睨みつけた。

(こいつらさえやっかいごとを起こさなければ。)
こんなところで依頼をうけなければ、もしかしたら依頼がなくてもしかしたら、ホテルに誘えたかもしれないのだ。
そしてあわよくばっ!
そう考えるとこの目の前の悪霊が全ての元凶のようなきすらしてくる。
(それはそれで、他の依頼を受けていただろうが、横島にとってはその可能性は頭から消えてると思ってよい)
思わず、悪霊ですら後ずさりそうな瘴気を身にまとっている。
哀れ、名もなき悪霊たちよ……。


この日、悪霊よりたちの悪いGS(見習い)にこてんぱんに、それはもう憂さ晴らしではなかろーか?と思わせるほどのひどい退治のされかたをしたという。


しんしんと─空から降ってくる雪が音を吸い込むのではないのだろうか?と思わせる空。
なんとか(そうか?)仕事を終えた横島は、空から舞い落ちる雪にぶるりと、肩を震わせて華やかなイルミネーションに彩られた街を歩いていた。
「うーさむっ」
首に巻いていたマフラーに顔を埋め、ポケットに手をしまい歩くさまは、どう見てもフラレ男である(笑)
「今ごろ、美神さんは……ぱーてぃでご馳走食べてるんだろうなあ…」
それに較べて、寒空の下一人歩く自分はなんだろう。
しかも、おきぬも、シロタマも(すずめまで)連れて行って自分だけ連れて行かないとはこれいかに。
「せめて。俺もいきたかったなあ」
はあっとため息をつきながら、横島。
まあ今日の仕事は、誰かがしなければならなかったのだ。
─なら唯一の男である自分がするのは仕方ない。

そっとポケットのなかにあるプレゼントに、触れる。
カサリと、乾いた紙の手触りになくしてないことを確認し、少しだけ、口元に笑みを刻む。
まあ、クリスマスにいっしょにいたかったんだよなあ。
そんなことを思いながら一年前とは、偉い違いだと思う。
くつくつと、笑い声を漏らし肩を揺らす。

一年前の今日、自分は、この感情のあり場に気付いた。
とてもじゃないが、馬鹿にされてお終いだと思っていたけれど─

だけど、今そのひとと自分は恋人と呼べる間柄で。


「まあ…扱いに差はないけどなー」
口から零れ落ちる言葉は、苦情めいたものなのに、その表情は楽しげだ。
と、その瞬間、まるで悪戯でも思いついたかのような表情になり、たんっと踵を鳴らしその場から走り始めていた。


そうして約数十分後。
横島は事務所の前にいた。
肩こそ、軽く上下しているが息を乱している様子はない。
「ま。いないだろーけど」
外から見る分にはどこにも灯りが灯っている様子はない。
そりゃそうだ。
今ごろ、美神たちは、どこぞのぱーてぃにいってるのだ。
いるはずもない。
手には、先程までなかった紙袋がニ・三個増えている。
なにやら、サンタにでもなったような気持ちになり、わくわくとしつつドアを合鍵で開け。事務所のなかへと入っていた。
(まあ、やってる事は、サンタというよりも泥棒であるというほうが正しいかもしれない)


いつも、誰かいる事務所は。騒がしいと思うものだが、だれもいない事務所はがらんとしてどこか物悲しい。
寒々とした部屋に、少しだけ寂しげなものを感じるが直ぐにがさごそと、袋の中身をさぐる。
そして取り出すのは、四人(というか3人と一匹?)へのプレゼントである。
まあこれで、年末年始の生活が悲惨なものへになるのは決定だが─。
おきぬへには、一週間ほど前にマフラーを無くしたと言っていた。
そっと、暖かそうな、真っ赤なマフラーを置く。
まあ安物であるが、丈夫だし、いいだろう?と思う。
シロには、散歩の時に使う縛り紐(自転車とシロを繋ぐものである)がボロボロになっているのでそれの新しいもの。
─まあこれはある意味自分のためであるが。
タマモには、意外に寒がりなので、耳当てを。(これも安物だが)
前に欲しそうにしてたのを見ていたのだ。
そうしてすずめには、新しい水入れを(なんとなく)。

ひとつひとつ置いてにへらっと顔を緩ませる。
傍からみると怪しい事この上ない。

そして─
美神のところ(机)へプレゼントを置こうとした瞬間─
ぱちっと部屋の明かりがつく。
「ぅわあああっ」
びくっと身体を震わせ横島。
なんの予測もしてなかったところにこれは驚く。

「ったくなにしてんのー」
そして降ってくる声音は、少し低めのだけど誰よりも今聞きたい、声。
ぎくしゃくと、首をそちらの方に向けると
いるのは、黒のカクテルドレスを身につけた、美神。
その亜麻色の髪はアップにしており、身に付けている装飾品もシンプルだが、彼女の美しさを引き立てている。
頬は、ほんのりと上気しておりなんとも色っぽい。
「…な。なにって─美神さんこそなにしてるんですか?今はまだパーティじゃ…」
「んなの、途中で帰ったに決まってるでしょ?」
何がおかしいのか、くすくすと笑いつつ美神。
横島に近づき、両手を首に絡め、至近距離で、微笑む。
どっくん。
ほれてる女にこれをやられて、何も感じない男はいないだろう。
そんなやつは、男ではない。
そして横島もかあっと顔を赤く染めどもる。
どうにもこんな空気にまだまだ慣れてないらしい─いやどんなんがなれてるのか?と聞かれると困るだろうが?

「な、なんでですか?折角のただ飯なのに─」
「ん?そんなんをワタシに言わせる気?」
くすくすと笑いながら、言う。
それは、暗に誰のためかということを、答えていて…
じわりとこころにあたたかいものが、流れる。

横島は、ふわりと、嬉しげに笑い机に置こうとしていた、プレゼントを差し出す。
「ん?」
と首を傾げ美神。
「っと…プレゼントということで、まあクリスマスですし」
笑顔のまま横島。
「たいしたもんじゃないですけどね」
「アンタにたいしたもの、送られたら、そっちのほーが恐い」

そうして開けられた包みの中には、プラチナのネックレス。

「可愛いじゃない」
「…ほんとーは、指輪送りたかったんですけど、こんなんしか」
「なんで」
「横島くんが送ってくれたんでしょ嬉しいに決まってるわよ」
「…」


「有難う」
「………あと、ホテルも取ってるんですけど」
ぼそっと横島。
すると、美神は一面の笑顔で
「ヤダ」
きっぱしと言い切った。
「ヤダって…」
「ま、みんなかえってくるから…」
これだけ、一周年だしね
そう言い美神はそっと唇を近づけた

おわり
メリークリスマス
みなさまが幸せでありますように。

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