ザ・グレート・展開予測ショー

乱れ衣 後編


投稿者名:ユタ&フチ
投稿日時:(02/12/24)

「美神さんもけっこう無責任だよな〜。『絶対なんとかしてあげる』なんつって・・・
大金稼げる仕事があれば、おキヌちゃん放っといてそっちに行っちまうんだから・・・」

「そんなことないですよ。代わりに横島さんを残して行ってくれたじゃないですか」

霊薬の効果で小さくなってしまったおキヌと、それを元に戻すべく事務所に居残りさせられた横島。
二人は今、唯一の手がかりにして事の元凶たる霊薬の出所、厄珍堂に向かうところだった。

「俺なんか、オカルトの知識ぜんぜん無いんだから役に立たねーって。
文珠でどうにかしようにも、さっき美神さんに取られたのが最後だったし・・・最近美神さん、タダだからって使わせ過ぎだよな・・・」

「ごめんなさい。私・・・横島さんに迷惑かけてばっかり・・・・」
並んで歩いているおキヌが俯き加減になる。こうなると身長差がありすぎて、横島の目からは頭しか見えない。
それゆえ表情など伺い知りようもないが、それでも横島には辛そうなおキヌの顔が想像されて胸がきゅぅっと痛む。

「迷惑なんかじゃないって!むしろ謝らなきゃいけないのは俺の方だよ。まさかこんな事になるなんて・・・」

確かに今回の事は、そもそも横島がロクでもない目的のために霊薬入りクッキーを事務所に持ち込んだことが原因で・・・
いつもながらにかなり自業自得と言える。
しかし・・・

「横島さんのせいなんかじゃないです!こうなったのも、勝手に食べちゃった私の自業自得ですから・・・」

あくまで自分に責任を感じるおキヌ。
横島をキッと見上げる表情は硬く張り詰めていて・・・強い意志を感じさせる一方、今にも糸が切れたように泣き崩れそうで・・・

「そ・・・」

(そんなこと、あるもんか!)
悪いのは全て自分であること。おキヌちゃんには責任など無いこと。なにより、辛そうにしていて欲しくないこと。
横島は声を大にして叫びたかったが、切なさに胸が詰まって後が続かず・・・
ただおキヌの手を・・・小さな、本当に小さな手を・・・ぎゅっと握り締めた。

(横島さん・・・!?)
突然手を繋がれて、おキヌは驚きに目を白黒させる。
でも、掴んだ手は大きく、力強く、温かくて・・・
まるで横島の優しさが直接流れ込んでくるかのように、温かさがおキヌの掌から体中に広がっていった。

「あ・・・いや、違うっ!これは・・・別にやましい気持ちとかがあったわけじゃなくて・・・
そりゃあ、ちっちゃいおキヌちゃんもかわいいな〜とか思うけど・・・いや、断じて違うっ!!」

自分を見上げるおキヌの顔がみるみる紅潮して行くのを『怒っている』と勘違いした横島が、見当違いの言い訳をする。
でも、その言葉が嬉しくて、焦る様子がかわいくて、おキヌの目はますます横島に釘付けになる。

そしてそのとき・・・・『それ』は起こった・・・



「あっ・・・」

上ばかり見て歩いていたおキヌが、ちょっとした地面の凹凸に足をつっかけたのだ。
頭が重くてバランスの悪い小さな体では体勢の立て直しようがなく・・・

(だめっ・・・)

固い地面との衝突をイメージして、おキヌは思わず目を瞑った。
しかし・・・







ドサッ

衝撃は想像していたより遥かにソフトで・・・

「・・・っと。おキヌちゃん、大丈夫?」

頭の上から、温かい声が聞こえた。
そっと目を開けてみると、大きな手が自分を支えてくれているのが見える。

(横島さんが・・・支えてくれたんだ・・・・・・)

じ〜んと来るおキヌ。しかしそれも束の間

「!!!!」

横島が支えているのが自分の胸のあたりであることに気付き、狼狽する。
もちろん今は胸のふくらみなどは無いが・・・それでも一瞬思考が停止してしまう。

「そっか・・・いきなり小さくなったんじゃ歩きづらいよな。・・・よしっ」

しかし横島はそんなことには全然気付いていないようで・・・
おもむろに腰を落としておキヌの両足を自分の両肩にかけると、スッと立ち上がった。

「!!!!????」

おキヌの思考停止にさらに拍車がかかる。

処理されること無く頭に飛び込む情報は・・・
今まで経験したことが無いくらい遠くに見える地面。
お尻の下には、がっしりとして安心感のある両肩の感触。
目の前でふさふさ揺れる黒髪の、心休まる香り。

それらの情報を繋ぎ合わせて得られる結論は・・・

(私、横島さんに肩車されてる・・・!?)

横島は何食わぬ顔で歩いているが、手を繋ぐよりも遥かに大胆な事をしているのに気付いていないのか・・・

「お、おろ・・・!!」

(降ろしてください!)
おキヌは言いかけて、口をつぐむ。
・・・なんだかちょっと勿体無いような気がした。

「ん? おキヌちゃん、どうかした?」

「いえ、なんでもないです・・・・・・・ありがとう、ございます」

「いいって。悪いのは、俺なんだからさ・・・」

横島の温かい言葉を聞いたおキヌは胸が一杯になって・・・・・・
返事の替わりにバンダナに沿ってか細い腕をおでこに回して、横島の頭をぎゅっと抱え込んだ・・・









「解毒剤? そんなもん、あるわけないある!」

「だあぁああ! ここまで来てそれかぁ!?」

厄珍堂に辿り着いた横島たちを迎えたのは、厄珍の身も蓋もない一言だった。

「実験で解毒剤まで作っとく人間なんて、まずいないね!」

「じゃあ・・・・・・私はずっとこのままなんですか・・・?」

おキヌが不安そうな顔で問う。

「おおっ、お譲ちゃんホントに若返ったあるか?どうやらあの薬、ホンモノだったらしね!」

厄珍がなにやら不穏なことを呟くが、今の横島はそれにつっこんでいる余裕は無い。

「なにか、なにか方法は無いのかっ!?おキヌちゃんの人生がかかってるんだぞ!?」

厄珍の襟首を掴んで体ごと持ち上げ、ガクガクと揺さぶる。

(横島さん、私のために・・・)

おキヌは必死になる横島の姿を見て、ちょっとじ〜んと来た。

「お、落ち着くある!このテの霊薬は、種類や個人差もあるけど、たいてい時間で効果が切れるあるよ!」

「な・・・なんだ。それを早く言えって。・・・んで、どんくらいだ? 2〜3時間か? それとも半日くらいかかるのか?」

落ち着いた横島は、揺さぶるのをやめる。

「ハッキリとは分からないよ!ただ、見た目の年齢を変えるだけだなんて効果がセコい分、長く続くと思うね!1ヶ月か半年か・・・」

「アホ〜〜〜!!今日の夜までに直しとかんと俺が美神さんに殺されるんや〜〜〜!!」

襟首を掴む手に、ぐぐっと力がこもる。
横島はこれ以上ないほど必死だが、おキヌは当てがはずれてちょっとずっこけた。

「ま、待つある!・・・・あ。い、いま思い出したよ!お譲ちゃん直す方法はちゃんとあるね!」

「「ホント(です)か!!??」」

おキヌと横島が同時に反応する。

「ほ、ホントね!古来からお姫様の呪いを解くのに用いられる、伝統的な手法あるよ!」

「そ、それって・・・・」

「まさか・・・・」

それを聞いて思いつく手段など、一つしかない。

「そう!『王子様のキス』!これしかないある!」

「「き・・・・!!!」」

予想通りの答えに、二人は完全に凍りついた・・・

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