ザ・グレート・展開予測ショー

乱れ衣 中編


投稿者名:ユタ&フチ
投稿日時:(02/12/24)

「氷室・・・・・・」

「キヌ・・・」

シロとタマモが汗をタラタラ流しながら何とか口を動かした・・・

「すると・・・・・・この子は・・・・・・」

どこから出したのか・・・・・・横島はゆっくりマイクを持ち上げた・・・・・・

「おキヌちゃんの隠し子かああああああっ!!!!(血涙)」

「んなわけないでしょっ!!!」

ズガンと横島の後頭部に美神のエルボーが炸裂した。

「ほ、本当におキヌちゃんなの・・・?」

横島を沈めながら美神の額から汗がタラーと流れた・・・

「もう、さっきから皆さん変ですよ?・・・・・・にしても・・・みんな随分大きくなりましたね・・・」

「そ、それは・・・」

シロが言いにくそうにおキヌに鏡を手渡した

「・・・・・・?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え゛!!!!!?」

鏡に映る自分の姿に思わず声が上ずった・・・・・・
それはそうだろう、寝て起きたら子供になっていれば、動揺しない人間なんてまずいない。

「こ、こ、これはどどどいうことでせう!!!?」

「私達のほうが聞きたいわよ・・・・・・とにかく私のときとは違って記憶はあるみたいだから・・・
何か思い出せることある・・・・・・?何か変わった事とか・・・・・・」

「変わったことですか・・・・・・今日は学校に行って・・・その帰りに買い物して・・・
それから・・・・・あ、テーブルの上のクッキーを一つ食べました!」

「クッキー・・・?」 

考えるような表情の美神の隣で、ビクぅ!と横島の肩が激しく動いた。
幸いにしてその動きに美神は気付いていない。

「あれ?美神さんじゃなかったんですか?・・・私、お腹が空いててついつい・・・」

まるで親に怒られたように肩を落とすおキヌ。

「そ、そんなに落ち込まないで!!絶対なんとかしてあげるから!ね!?」
「は、はい・・・・・・・・・」

ウルウルと目を潤ませ美神を見つめるおキヌ。
子供の純真さも混じり、いつもより120%増しで輝いてみえる。
その瞳に・・・

(いやあああ!!そんな純粋な瞳で汚れた私を見ないでええええ!!!)

と、美神が心で叫んだのはここだけの話。

「とにかく、そのクッキーが怪しいわね・・・」

(うううううう、何か言いづらい雰囲気になってきた・・・・・・・・・(汗))

美神の推理が進む中、まるで追い詰められる犯人のように汗を流す横島。
そしてそれに追い討ちかけるように・・・

「もしかして、これ?」

クッキーの入った箱をタマモが差し出す。

「はい!これです!」

(あうあうあう!タマモ・・・・・・・・・せめて隠蔽する時間をくれ〜〜〜)

そんな横島の気も知らず、今度は愛弟子が・・・

「う〜ん・・・微かに霊薬の匂いがすでござる・・・・・・・・・それと・・・・・」

「それと?」

「え、ええとお〜〜〜・・・・・・」

シロはチラっと視線を横島に向ける・・・どうやら気付いたらしい・・・
そんなシロに目でサインを送る横島。

「そ、それだけでござるよ〜・・・ははははは〜〜〜・・・」

(シ、シロ・・・・・・お前と言う弟子を持てて誇りに思うぞ!!!)

後で散歩に付き合い、肉でもおごってやろうと思う横島であった・・・・・・
だが・・・・・

「で、横島クン・・・?このクッキーはどうしたの?」

「ぶっ!!」

美神のいきなりの質問に吹き出す横島。

「あうあう・・・!!!な、何のことでせう!!!?(大汗)」

滝のような汗を流す横島。
美神はそんな横島をさらに追い詰めていく・・・

「あんたね〜・・・シロがあんな視線を向ければ誰にだって分かるわよ・・・
さ・・・自白のほうが罪は軽いわよ?それとも人工幽霊一号に一部始終の映像を流させたほうがいいかしら・・・」

美神の声で横島の体温が5度下がった・・・・・・気がした。
最早、極限の状態に追い込まれた横島・・・すでに自分が何を言っているかも分からないだろう・・・

「ち、違うぞ・・・」

何とか息を漏らすように口を動かす

「け、決して!美神さんとはここままじゃ進展がないから、
厄珍から実験として手に入れた『男が飲めば10歳年を取り、女が飲めば10歳若返る薬を使ったクッキー』を食べて、
美神さんの弱い『甘えさせてくれる中年』になってデートに誘おうなんて企んでないぞおおおおおおおおおおおおおお!!!?」




3分後・・・・・・・・・

美神除霊事務所のオフィスに一つの血の海が出来上がった・・・・・・・・・・・・









「それにしても男と女で効果が逆だなんて、妙な薬もあったものね・・・・・・」

タマモが、クッキーを片手に弄びながら呟く。

「10歳以下の私が食べたら、どうなるのかな・・・・・?」

「ぐぅ・・・あ、あんまりつっこむな。色々と都合ってもんが・・・」

タマモの危険なつっこみと、冷や汗を流す横島のギリギリの返答。

「タマモ!問題はそんなところではないのよ!」

そんな二人のやり取りに、美神が多少強引な横槍を入れる。

「あんたねぇ、ただ10年かそこら歳とったくらいで私がなびくと思ってんの!?
見た目だけシブくなってみせたところで、私が横島クンに甘えるなんてことは・・・・・物理的にありえないのよ!」

なんだかよく分からない説得力を持つ言葉が、横島の胸に突き刺さる。
しかし聞きようによっては「もしも相手が横島じゃなかったら、どうか分からない」という、
『年上好み』自認の発言とも取れるのだが・・・それに本人が気付くはずもない。

「拙者は・・・・・ちょっと見てみたい気も・・・・・」

「あんたは黙ってなさい!私はもう見たことがあるからいいのよ!!」

「きゃぃん!?」

シロのささやかな要望も、シロが知るはずもない事務所移転の際のネタを持ち出してあっさりと却下。


「中身が変わらないと意味がないのよ。中身が!・・・おキヌちゃんを見なさい!
見た目は幼児だけど、べつに行動とかは元のままでしょ?だから横島くんが年取ったってどうせ・・・・・・」

美神はなんだかもはや言い訳の余地もなさそうな発言をしながら、ビシッと勢いよく部屋の隅を指差した。
そして・・・・・・



「「「「あ・・・・・・・・・」」」」



その指の先を見て、4人が同時に声をあげた。
そこには、おろおろとただ成り行きを見守っていたおキヌの・・・・・・・・・幼児化した姿があった。
大人しいのでスッカリ忘れてしまっていたが、いま一番の問題がコッチであることは明白だった。

「え? あ・・・えと・・・その――美神さん、もうそのくらいに・・・・・」

おキヌはいきなり全員の注目を受けて当惑しながらも、「会話が途切れた今がチャンス」とばかりに場を収めようとする。
自分が一番大変な状況なのに、いつも通りに周囲を気遣うのは流石と言うか・・・既に条件反射と言うか・・・
しかし、そのままスッキリとは場が収まらないのもいつものことで・・・・・・

「ゴメン!おキヌちゃん。別に忘れてたわけじゃないのよ?
ただ横島のヤツが聞き捨てならないこと言うから、私は仕方なく・・・・・・」

(((い〜や、忘れてた。この人は絶対に忘れてた!!)))

美神の余計な一言に、他の3人は声にならない心の叫びをあげるのだった。



「え、ええっと・・・・・私のことよりも、美神さん。
今日は午後から仕事が入ってたんじゃないんですか?今まで現場の下調べに行ってたって・・・・・・」

小さくなってもやっぱり事務所で一番しっかりしているおキヌ。
さながら世話の焼ける母親を持った娘のようだ。

「あっ、そっか。そう言えば、そろそろ時間ね・・・・・・」

美神はハッとして、デスクの上の時計を見た。
時刻は『13:49』。
今回の依頼は久々に大口のもので、ギャラは億単位。
それだけに美神もやる気を出して、わざわざ事前に現場まで出向いて下調べして来たのだが・・・・

「でも、困ったわね。おキヌちゃんをこのまま置いて行くわけにもいかないし・・・・」
これは美神の偽らざる本心だ。
しかし理性では分かっていても、美神に今回の依頼を断る事ができるはずもなく・・・・・
かと言って、至急という条件つきでギャラを多めにふんだくった手前、延期できるはずもなく・・・

「すいません。私、仕事に行けないばかりか、足手まといになっちゃって・・・・・・」

おキヌは非常に申し訳なさそうに小さくなって・・・・・・いや、もともと幼児化してこれ以上ないほど小さいわけだが、小さな体をいっそう縮めて今にも泣きそうな声を出した。

「え?あ・・・・お、おキヌちゃんが気にすることは何もないわ。ホントよ!元はと言えばこのバカが・・・・・・・・」

美神は頭の中で一生懸命おキヌとお金を天秤にかけていたが、おキヌの様子に気付いて慌てて慰めようとする。
しかし考えてみれば自分が悪いことは何もない。

「・・・・・・そうよ。今回のコトは全て横島クンの責任じゃない。
あんたはココに残っておキヌちゃんを元に戻しなさい!」

美神にも、おキヌの直し方なんて見当もつかないが、少なくとも仕事をキャンセルする必要はなくなる。

「え・・・?でも、俺は仕事が・・・・・」

横島はセリフを棒読みしながら、右手に霊波刀、左手に文珠を構えて、やる気満々の姿勢を見せる。

「今回の仕事は私とシロとタマモで十分よ。下調べで相手の実力は分かってるから」

と、言いつつ文珠だけはしっかり回収する美神。

「いや、でも・・・・荷物が・・・・」

横島はいつの間に準備したのか、いつもの大荷物を担いでみせる。

「それは今回はシロに持ってもらうから大丈夫! シロ、お願いね」

にっこりと重たい圧力のある笑顔を向けられたシロは、ちょっと迷ったが横島から荷物を取りあげる。

「シロ・・・お前とゆーヤツは・・・」

「先生・・・・・・がんばってくだされ」

シロは物凄く申し訳なさそうな顔で言い残すと、逃げるように部屋を後にした。

「そ、それじゃ、私も・・・」

タマモもそれに続く。

「美神さん・・・・・でも俺、何をどうしたらいいか・・・」

「じゃ、後は任せるわ。7時ごろには帰ると思うから、それまでには何とかしといて!」

美神も、逃げるようにドアに向かう。

「ちょっ、待っ・・・何かテはないんスか・・? 美神さ〜〜〜ん!!」

「おキヌちゃん。お留守番、お願いね」

「あ、はい。いってらっしゃい・・・」







バタン・・・・・・

横島は必死に食い下がったが、無情にもドアは閉じられ・・・
二人、事務所に取り残されて、ただ途方に暮れるしかなかった。

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