ザ・グレート・展開予測ショー

乱れ衣 前編


投稿者名:ユタ&フチ
投稿日時:(02/12/24)

「ふんふふ〜ん♪」

秋空澄みわたる土曜の昼下がり・・・
商店街に機嫌の良さそうな鼻歌が響いた・・・
いや、その鼻歌を奏でる男・・・・・・・・・・・・・横島忠夫は事実、気分がよかった。

(くっくっくっ・・・・・・・・・・・・・・・・これさえあれば・・・・)

鼻歌を中断し、声を抑えて笑う横島。
その視線は自分の右手に握られた紙製の箱に向けられていた。

「わはははははははっ!!!これさえあれば美神さんは俺のもんや─────っ!!
 生きてるって素晴らしい!!」

人目を気にせず大声で笑う横島。
周りの通行人はの視線は「危ない人を見る」それだった。
そして・・・・

「君、名前は?で、住所は」
「えー、現在不審者を尋問中」

(だから、こんな目にあったってもそんなにムカつないのさ(今までの0.98倍程))

警察に尋問されながら怒りを抑える横島だった・・・・









美神除霊事務所・・・

誰もいないことを静かに確認しながら入室する横島。
途中、人工幽霊一号に質問されたが「隠密行動の練習」ということで騙し通せた。


「さ、試しに一個食べてみるか・・・・」

先程の小さな箱を開けるとそこには15コ程の一口サイズのクッキーが無造作に詰められていた。
そのうちの一つに手を伸ばす横島。しかし、あと1cmというところでその手が止まる

「その前にトイレ、トイレ」

横島は独り言を呟きながら部屋を出て行く。どうやら排泄衝動にかられたらしい。
箱はふたを開けながらオフィスの円卓テーブルに置かれたままだった・・・・そこへ

「ふ〜、ちょっと買いすぎちゃったかな?」

ひょこっと現れたのは大き目の買い物袋を両手で持ったおキヌだった。
学校帰りだったのだろう、制服のままその袋をよいしょと机の上に置いた。

「誰もいないのかな?」

部屋を見回すおキヌ、すると美神の机の上にメモ帳の紙切れが一枚置いてあることに気付く。

「え〜と・・・」

それを手に取るおキヌ。

メモには・・・・・





「除霊現場の下調べに行ってくるわ、一時には戻ってくるから」 美神

「散歩に行ってくるでござる!同じく一時には戻ってくるでござる」 シロ

「一日20枚限定の油揚げ買ってくる。上手く行けば一時には帰ってくるわ」 タマモ








一通り目を通すと自分の左手の腕時計に目を移す。
時刻は『12:49』。

「う〜ん・・・・みんなお昼ご飯食べてくるのかなぁ・・・・?」

おキヌは先程買ってきたおかずの材料を見る。少しだけ「う〜ん」と考えるが・・・

「うん、やっぱり作っておこう!・・・それに私もお腹すいちゃったし」

袖をまくり、「ムンっ」と気合をいれる。
そして袋の中身を出しはじめてやっと気付いた。

「あれ?・・・・・・・・クッキーかな?」

袋の陰になってわからなかったが、同じテーブルの上に蓋を開けたまま置かれている小さな箱に気付いた。

「おいしそ〜・・・・でも食べていいのかな?う〜ん・・・・どうしよう」

おキヌは進退を悩む。そこへ



ぐ〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・



食べよう食べようとおキヌの体が要求する。そして・・・・

(一個くらい、いいよね?)

三大欲求には逆らえず、クッキーをパクっと口に入れた。
何とも言えない食感と、まったりとした味がおキヌの口に広がる。

「おいしー!」

至福の表情で頬に右手を添える。
目のにはまだ沢山のクッキーがある。美味と分かれば「もう一個」と行くのが人間だが・・・

「これ以上無断で食べちゃいけないよね」

そう言って、中断していた昼食の準備を再開するおキヌ。
必要以上の欲に流されない・・・・そこがおキヌの美点の一つだった。

「らら〜ら〜ら♪」

誰かと同じように気分よく鼻歌を奏でるおキヌ。
もちろん「誰か」とは違いその透き通った歌は周りの人を気分を楽しいものにするだろう。

「ら〜ら〜・・・・・・・・・っ?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、あれ?・・・・・・」

鼻歌が止まる。
おキヌは不思議そうな声を出すと、視界が歪んでいくことに気付いた。
いや、それだけじゃない・・・まるで熱があるみたいに体が熱くそれでいて重く気だるい気分に陥った。

(な、なんだろう・・・・・体・・・が・・・重い・・・・)

風邪かな・・と思い、オフィスの棚に常備している風邪薬を飲もうと歩きだす。
だが、歩くたびに倦怠感がしだいに増してくる。

(どうし・・・・・・・・たのかな・・・・・・・・・何だ・・か・・・・とても・・・・)

それが目の前が暗転する前の最後の思考だった・・・・・・・・













「ふう〜、スッキリした〜」

ハンカチで手を拭きながら横島が再びオフィスへ入室してくる。

「さあ〜、じゃあ試してみる・・・・・・・・・・・・・あれ?」

横島の言葉が止まった・・・・・・・・・・・・・・そして目の前に落ちているモノを静かに拾う

「これって・・・・・・・・・・・・・・」

拾いあげたモノの名を呟く

「スカート?」

自分の手にあるスカートを不思議そうに見つめる。
そして、その視線を更にのばすとまた新しいモノを発見した

「これって・・・・・女子高生が着るブレザー・・・・だよな?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」

横島の視界にまた新たなモノが入る

「こ、これって・・・・・・学生用のカッターシャツ・・・・・しかも大きさからいって女子用・・・・」

その3点を床に並べじっと見つめる横島・・・・

「まず俺の女子高データによれば、この制服一式は『六道女学院』で間違えない・・・・
そして俺の知り合いでそこに通っているのは3人だけ・・・・」

それだけ呟くと机の上にある買い物袋を見つめる

「・・・・・・・・・・・・・・おそらく、その3人のうち買い物をして入室してくるのはただ一人・・・・・・・・・・つまり・・・・・」

「犯人(?)はおキヌちゃんだ!!」

一声あげると横島の鼻息が荒くなってくる

「なぜこんなところに服が散乱してるのかは知らんが、もしかしたらおキヌちゃんに何かあったのかもしれない!!
そうだ!今、俺は人命救助(?)という人として大切なことをしようとしてるんだ!
うんうん!決して欲望のままにおキヌちゃんの生まれたままの姿を見ようなんて思ってないぞ───っ!!」

誰かに必死に言い訳するように叫ぶ横島。
それが終わると懸命に部屋中を探し始める・・・そして

ソファーの死角になって全体は見えないが、ソファーのむこうにきれいなサラサラとした青みかかった髪が見えた。

「お、おキヌちゃん?」

横島はおそらく、あられもない姿であろうおキヌにドキドキしながら声をかけた。
だが、その少女からは返事がない・・・これはいよいよ緊急事態と踏んだ横島

「おキヌちゃん!ごめん!」

ついにソファーを乗り越える横島!そこには・・・・・・・・・

「え!!!?」

ソファーの陰になって人が倒れている・・・
だが、それはおキヌではない・・・・・・・なぜなら

「こ、子供!?」

そう・・・そこには5、6歳くらいの幼女が静かな寝息をたてうつ伏せに倒れていた。
その体にはブカブカ・・・というか必要ないだろうと思われるブラジャーとショーツが纏われている・・・

「と、とにかく・・・・・・・・」

室内とはいえ、こんな格好をしていたら風邪を引いてしまう。
そう思い自分のジージャンをかぶせようとしたとき・・・・・・・・・・・・・





キンっ・・・

横島の背後で甲高い音が響いた・・・・・・・・

危険だ・・・・

横島の本能・・・霊感がそう言っていた・・・
だが、人間には「恐いもの見たさ」という厄介な感情がある。
その感情に横島もギギギぃぃと首を回した・・・・そこには


神通棍にフルパワーで霊力を込める美神・・・
あうあう・・・とまるで見たくないものをみたという表情のシロ・・・
軽蔑の眼差しをむけるタマモ・・・・・

が、立っていた・・・・

「い、一応・・・言っておきますけど・・・ご、ごご誤解ですよ!お、俺は・・・ロリコンじゃな・・・・・・・・・・」
「この変態がああアアアアアアアあああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!!!」

1分後・・・・血だるまになった横島が床に転がった・・・











「で?この子どうしたの?」

「だから知らないって言ってるじゃないですか──!!」

横島は顔にバンソウコウを張りながら叫んだ。

「う〜ん・・・おキヌ殿の親戚でござろうか・・・」

「親戚がなんで裸で寝てんの?」

タマモはジロっと意味ありげな視線を横島に向けた

「だから違うってばーー!!」

泣き叫ぶ横島・・・その時・・・

「・・・・・・・・・・・・・・う、う〜〜ん・・・・」

ソファーに寝かされた幼女が重そうに上体を起こした。
もちろん体には先程買ってきた衣服が着せられている

「あ、あれ?」

幼女は4人を見ると不思議そうに声をあげた

「ふう〜。あなたお名前は何て言うのかな」

美神は珍しく優しい母性を見せながら幼女に名を尋ねる。
だが、幼女はさらに不思議そうに顔をしかめながら言った。

「へ?美神さん何言ってるんですか?氷室キヌですよ?」


ピシ・・・・・・・・・・・・・

4人の時が止まった・・・・・・・・・

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