ザ・グレート・展開予測ショー

横島 IF  第二話


投稿者名:777
投稿日時:(02/12/24)

おキヌちゃんが同僚になってから、一ヶ月ほどが経過した。

除霊に関しては特に役に立つわけではないが、家事雑用なんかはかなりの腕前を披露している。

特筆すべきは料理だろう。何というか…そう、家庭的なのだ、彼女の料理は。

あれで日給30円は安すぎる気もするが、幽霊は食費も家賃もいらないので純粋に小遣い月900円、なんだ俺より多いじゃないかと言うことで同情するのはやめにした。

ついでに、おキヌちゃんは冗談が通じないことも発覚。

こんなことがあった。

おキヌちゃんが人間界にやってきてから数日後、彼女は絵本や昔話を漁り始めた。

なんでも、人間界にやってきた幽霊の生態について知りたかったらしい。

それで図書館で借りた『蛤女房』を渡して反応を見たところ、次の日泣きながらやって来て『ごめんなさい、無理でした…』と言われた。

さすがに可哀想なことをしてしまったと反省。まぁ、満面の笑顔で『さぁ飲んでください横島さん』とか言われても困っただろうが…ごめん、おキヌちゃん。

ま、そんなこんなで俺とおキヌちゃんの関係は概ね良好だ。






さて、前置きが長くなったが、今日は美神さんの数少ない友達の話をしようと思う。

名前は六道冥子さん。

冥子さんは、美神さんの友達とは思えないくらい良い子で…そしてとても優しい人だ。

よくメシ奢ってくれるしな。

とりあえず、俺が冥子さんと初めて出会った時のことを話そう。


あれは、ある新築マンションでのことだった………



――リポート2 ゴーストスイーパー六道冥子登場!!――




「きょ…共同作戦!?待ってよ!そんな話聞いてないわよっ!!」

その日、珍しく美神さんが焦った声をあげた。

原因は目の前にいる小柄な女性。雰囲気から金持ちの匂いがする。きっと肉なんて『松阪牛』しか食べないんだろう。(←偏見)

「――――じゃ、私はこれで・・・」

「私は〜令子ちゃんと一緒にお仕事できるのを〜楽しみにしてたのよ〜〜。そんな言い方ないじゃないの〜〜〜」

くるりと回れ右をして逃げ出そうとする美神さん。それを引き留める松阪牛子さん(仮名)。

うん、しゃべり方からして温室育ちだ。

「あの〜〜おとりこみ中ですが、その美味…いや可愛い方は美神さんのお友達で?」

とりあえず挨拶はしておこう。美神さんの友達ならメシ奢ってくれるかもしれんしな。

「お友達というか…ま、知り合いよ!」

苦笑しながら答える美神さん。珍しいな、友人関係で美神さんが言い渋るなんて。

いつもならやくざでも『私たち友達よね』とかって無理矢理友達にするくせに…。

「ひどお〜い。お友達じゃないの〜〜。 はじめまして〜〜。六道冥子です〜〜」

『ぺこり』

美神さんにやんわりと抗議したあと、俺とおキヌちゃんに向かって頭を下げる冥子さん。

「初めまして、美神さんの義弟の横島忠夫です。姓は変えてません。よろしく、冥子さん」

ここぞとばかりに『義弟』をアピールしてみる。さぁ、俺はお友達の義弟だぞ。はよぅメシを奢るのじゃ。

「はじめまして、美神さんの幽霊のおキヌです。姓はありません。よろしく、冥子さん」

ここぞとばかりに『幽霊』をアピールしてるなおキヌちゃん。しかし意味不明だぞ?

「義弟君と〜幽霊ちゃんね〜〜。よろしくね〜〜」

………。いや、間違っちゃいないが。俺としてはそう呼んで欲しかった訳じゃなく。

「・・・冥子は『式神使い』といって、12匹の鬼を自在に操る能力があるのよ。あんまりからかっちゃダメよ」

美神さんが呆れた顔してる。別にからかってたわけじゃないんだけど。

「〜〜〜と、そんなことより令子ちゃん〜一緒にお仕事してよ〜〜。でないと〜私〜〜」

『じわっ』あ、冥子さん泣きそう。

「わかった!!やる!!やります!!」

「令子ちゃん好き〜〜〜」

へぇ、美神さんって泣く子には弱いんだ。

意外だな…泣く子を鼻で笑いながらむしり取っていくような人なのに。

今度泣いてみよう。

「なんのかんの言っても、やさしいんですよね、美神さんって」

くすり、と笑いながらそう言うおキヌちゃん。美神さんが優しい云々はおいといて、確かにほほえましい光景だったよな。

「・・・あんたは式神使いの恐ろしさを知らないのよ!!式神使いを泣かすとね――――えいっ!」

突然、美神さんに突き倒された。倒れた先には冥子さん。当然、俺は冥子さんを押し倒す感じになってしまう。

「おおっ!この肉のや〜らかさっ!この肌ざわりっ!!まさに松阪牛っ!!」

極上です(←何が)

「あ〜〜〜そんなことなさっては〜〜〜」

『バシュッバシュッ』

「でーーーーーーっ!?なんだあーーーーーっ!?」

冥子さんの影から異形の者達が飛び出して来て、俺をたこ殴りにし始めた。

「――――ああなるってわけよ」

「あぁぁっ!横島さーーーんっ!!」

冷静にそう語る美神さんと、巻き込まれるのを恐れてか遠巻きに俺を見るおキヌちゃん。

美神さん、久々に非道いっす。

「あ〜〜〜〜〜〜だめですよ〜〜あなたたち〜〜〜」

冥子さんの声が遠くなっていく。

ああ、俺はここで死ぬかもしれない。

最後に、もう一度周りの景色を確認して――――











――――獲物を見つけた――――










――――白い毛玉のような式神――――










――――あいつの肉は美味そうだ――――










そして俺は意識を手放した。

後日、某巫女幽霊は語る。

あの時の横島さんは、一流の食材を見つけたコックさんの目をしていました、と――













――――――――――――


俺と冥子さんの出逢いは、大体こんな感じだったと思う。

あのあと、覚醒した俺の前にあったのは崩壊した新築マンションだった。

冥子さんが暴走した結果らしい。

冥子さんは失敗したのににこにこしていた。お金持ちの余裕、ってやつだろう。

この出逢い以降、俺はよく冥子さんのところへ遊びに行くようになる。

会う度にいろいろ奢ってくれるのだ、冥子さんは。

『令子ちゃんの次に好きなお友達〜』の座もゲットした。

式神の名前も全て教えてくれた。





ただ、何故かあの白い毛玉だけは出てこなかった。







いいさ、俺にはおキヌちゃんがいるし。(←?)












――――――――――――

第二話、冥子さん登場、です。

感想、お願いします。


次回はドクターカオス登場、ですが…さて。

あの話は少々弄りにくいので…どうなるかはわかりません。

では、第三話で会いましょう。

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