ザ・グレート・展開予測ショー

涙を誘う理由(わけ)


投稿者名:稀有
投稿日時:(02/12/24)



  『涙を誘う理由(わけ)』









 ふと、思う。
 自分は、何かを忘れてはいないだろうか。


 自分の部屋で。
 学校で。
 事務所で。
 或いは、道端で。


 そして、目の前にある夕日を見て、そう思う。



 何気ない日常の中で、それでもその日常が何処か、自分の望まない、違うモノとして写る。
 その時、自分が何かを忘れてはいないだろうか。
 ふと、思うのだ。





 『自分が何を忘れているのかも』忘れてしまった。
 それは、例えようもなく大切なコトだったのかもしれない。
 大切なナニかを何処かに置いてきてしまった、そんなキズアト。
 そんな心を抱えている自分がいる。


 けれど。


 同時に、心の中では納得してしまっている自分がいる。
 思い出すことは禁忌であるかのように、頑なな自分がいることを容認している。
 自分の心を知ることに対する、恐怖。
 ナニを、恐れるのだろうか。
 自分は、浅ましい、この上なく単純な心しか持っていない『はず』なのに。
 それでも、自分の心の奥底には、未だに触れる事ができない。



 忘れてしまったコト。
 忘れなければならなかったコト。
 それを、自分は知りたいと思っているのだ。
 コワレそうな、心の中を覗いて。






 日々は滞りなく過ぎていく。
 当たり前の日々は、つまり、日常で。
 疑うべきもなく、自分はそんな世界の中で生きている。

 そして、これからも気ままな人生を歩むのだろう。
 できれば、美人な奥さんをもらって、退廃的な生活を。
 これからもへらへら笑って生きていければ、とも思う。



 だけど。
 そんな、不満のない生活の中で、やはり思ってしまうのだ。
 




 何故
 夕日が
 こんなにも
 涙を誘う理由(わけ)を
 知りたい、と。








  −終−

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