ザ・グレート・展開予測ショー

魂の行方〜輪廻〜


投稿者名:ライス
投稿日時:(02/12/20)



 私は蟻だった……。
 春の穏やかな日の光の下を餌を求め活発に歩いていた…。
 しかし巣に帰る途中、大きな生物に踏みつけられ死んだ…。






 私は蚊だった……。
 夏の蒸し暑い夜空を彷徨い飛んでいた…。
 しかし血を吸っている途中、大きな生物に叩かれて死んだ…。 






 私は魚だった……。
 秋の波打つ海を猛然と泳いでいた…。
 しかし泳いでいる途中、大きな生物に捕らえられ、鋭い金属で切られて死んだ…。





 私は鳥だった……。
 冬の夜空に照っている満月を後ろに飛んでいた。
 しかし飛んでいる途中、大きな生物に長い筒で打たれて死んだ…。





 私は鹿だった……。
 雪降る山奥を悠然と歩いていた…。
 しかし餌を探している途中、大きな生物の仕掛けた罠に捕まり、力つきて死んだ…。







 …………私は幾度と無く死んでいった。姿形を変え何度も死んでいった…。虫にもなった、鳥にもなった、魚にもなった、動物にもなった。そしてそのどれもがあの大きな生物の手によって殺されていった…。私ももう、何度死んだのか覚えていない。自分の名がなんであったかも、何者であったかも覚えていない。私はこれからもあの大きな生物によって殺されていくのだろうか…。

























 ………長い月日が過ぎたようだ。あれからも(いつから?)私はさらに様々な種類の生物に形を変え、そして殺されていった。絶望と苦しみの連続だった。そして致命傷を負うとやってくる静寂。ただ無言の、真っ暗な世界。息絶えると周りの世界がフッと消えて、その「闇」が来る。それを何度となく、私は繰り返してきた。辛い。そして苦しい。私は新しく生まれかわるまで、その「闇」にしゃがんで待つ。私は永遠にこれを繰り返していくのだろうか…。













 ……私は今、なにか暖かいものに包まれている。それは今までにない、優しく暖かなものであった。私の身体は脈を打ち、鼓動を放っている。その暖かなものの中で私はひたすら外へ出られるよう、動いてみたが無理だった。私はじっと待った。そして時が段々と流れていく間、どこから私に話しかけてくる声が聞こえてきた。

『目覚めなさい……。』

「……誰だ?」

『目覚めるのです……。』

「目覚めろ、だと?ハッ、何を言ってるんだ、私はこうして目が覚めているではないか?」

『……あなたは今まで、ありとあらゆる生き物に生まれ変わり、死んでゆきましたね?』

「あぁ、何度と無く死んでいった。それも無意味にな……。」

『それはあなたが望んだこと……。』

「冗談はやめてくれ……、どうしてこの私があのただ辛く、苦しいだけの死≠望まなければならないんだ?」

『あなたは生前、自分の存在≠ニ言うものに耐えられず、死≠選び、今まで自分の犯してきた業を償ってきたのです…。』

「いい加減にしろ!!誰だ、貴様は!!」

『そして同時に魂の浄化、力≠フ軽減を行ってきました……。そして今再びあなたは生まれ変わろうとしています…。ですが…、』

「ですが、なんだ?」

『……あなた≠ニいう存在は消え、別の存在へとなります……。』

「なんだと?」

『神はあなた≠フ罪を許し、死ぬ≠アとを認めました。しかし、死ぬと必ず魂は転生します。普通の動物ならそれで構わないのですが、あなたは大きすぎる¢カ在であったので、転生すると自然界のバランスを崩しかねません。だから神はバランスを上手く保つため、あなたを別の存在へと変える手段を考えついたのです。それは…』

「…………」

『あなたの魂を器にして、別の魂の不足分を補うというものです。』

「………それで、私の存在は消される、と言うことか。」

『そうです。融合という形になりますが……』

「そうか………。」

『でも、あなたの魂のおかげで新しい生命が生まれると言うことでもあるのです。それに……』

「もういい。私が消えて上手くいくのであれば、好きにするがいい。」

『いいのですか?本当にあなたの存在は消えてしまうのですよ?』

「くどい!貴様が誰だか知らんが、それで新しい生命が生まれてくるのであればそれに越したことはないだろう?私は今まであらゆる生物になって死んでいった。だが死んで良かった、と言うことなど一度もなかった……。それに………、」

『それに?』

「それに私は生きていた時に大きな罪を犯したのだろう?そんな私が人の役に立てるのだ、これが大きな償いとならずに何になろうか?」

『……分かりました。では、融合する前にベースになる存在に会わせましょう。』

 そう『声』が言うと、私の前には、ショートカットの幼い少女が現れた……。

「(この子が………………)」

「? おじちゃん、だ〜れ?」

「おじ………、お兄さんって言ってくれないかな?」

「おじちゃん、ここでなにしちぇるの〜?」

「さぁ……。ただ君の役に立てるって事は確かだ。」

「ふぅ〜ん、じゃ、こまったちょきちょかにたすけてくえるの?」

「助けられないが、見守ってはいると思う。」

「じゃ、いっちょにあそんでくれるの?」

「…残念だが、それも出来ない。」

「え〜?じゃあ、なにしちぇくえるの〜?」

「そうだな………、君が健やかに成長する事が出来るのを手助けする、ってところだな。」

「う〜ん、よくわかんな〜い……」

『では、そろそろ………』

『声』が私を呼ぶ。すると少女の姿はいつの間にか消えていた。

『これから、私はあなたをここに存在するもう一つの魂と融合させます。その際にあなたの存在は消えなくなります、いいですね?』

「構わん、やってくれ。」

『それでは……』

 すると私は、光の玉となり、なにかに操られるように動いていく。そしてもう一つの魂の方へと近づき、私は魂へと取り込まれていった。自分がその魂に段々ととけ込んでいくのが分かる。しかし嫌な気分はない。むしろなにかこう、暖かく優しさにあふれるものであった。そして自分という存在≠フ意識が薄れていく中で、さっきの『声』とは別の声が聞こえてきた………。





































「ありがと、アシュ様……」
















 そして………、





































「オギャア、オギャアッ………!!」

「ホラ、元気な女の子ですよ〜っ。お母さん、よく頑張りましたねぇ〜。」

「これが私の子……。(クスッ)初めまして、私の赤ちゃん。」

「いやぁ〜、まさかアンタが母親になるとは思ってもみなかったな。しかし子供に悪影響がなきゃ……、ブベッ!?」

「アンタ、言って良いことと悪いことがあるの、知らないの?私だって母親になる時はなるわよ!」

「しゅっ、出産した後なんですから、あんまり動かない方が……」

「ところで、ウチのヤドロクは?」

「あっ、あの人ならこの分娩室の外で待ってるはずですよ。」

「そう……、じゃあ、入れてあげて。赤ちゃん、見たがってるはずだから……」

「分かりました……、キャア!?」

「(バカッ!!)う、産まれたのか!?は、早く見せてくれ!!」

「バカね、そんなに慌てなくてもちゃんと見せるわよ。ホラ……!」

「ほ、ホントだ……、ちゃんと産まれてる……。オレがパパだぞぉ〜〜〜っ!?」

「お父さん、抱いてみますか?赤ちゃん…」

「あぁ、もちろんだ!!」

「それじゃ…、ヨイショっと。はい、どうぞ…。」

「………あったかい。生きてるんだな、コイツちゃんと……。(お帰り……)」

「で、アンタ、この子の名前………………って、聞くまでもないか。」

「あぁ、そうさ。コイツの名前はもう決まってる。コイツの名前は………………、」

























「…………蛍だ……!!」



 〜FIN〜

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