ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−22


投稿者名:NAVA
投稿日時:(02/12/18)



 プシューッ


 エレベーターの自動ドアが開いた途端に飛び出すのは美智恵とワルキューレ。

 唐巣、冥子、西条の3人はエレベーター内で結界を張っている。

 ジーク、ピート、タイガーはいつでも飛びさせる態勢を維持。


 「大丈夫のようだな?」

 ワルキューレが美智恵に同意を求める。

 「そのようね」

 短く応じて、手振りで後続を促す。

 目前には一本道が続き、奥には両開きのドアが見える。

 「私なら、この一本道にトラップの1つも仕掛けるがな」

 それは美智恵も同じこと。

 しかし進まなければ何も得られない。

 「まずは僕が行きましょう。
  バンパイアミストになれば、大概の罠はすり抜けられます」

 「いや、僕が敵なら液体窒素の用意もしておく。
  そしてここは研究所。
  碌でも無いところだが設備は一流だ。
  そのくらいの備品はあると考えるべきだね。
  当然、僕達のパーソナルデータもあるだろうし」

 西条がピートの案を否定する。

 「これは確証も無い私の推測だけど・・・」

 そう前置きして美智恵が反論した。

 「どうも実験体の実戦データを取ってるように思えるの。
  戦力を小出しに小出しにしてくるのがその証拠。
  だから戦闘以外で私達の戦力を削る可能性は低いんじゃないかしら」

 「これだけ大それたことをしておいて実験であると?
  確かにここにいる面子はトップクラスのGS達ですが・・・」

 西条が半信半疑で問う。

 「仮に美智恵殿の言っていることが事実だとしたら・・・。
  この先の扉には相当な自信作が待っていると思った方が良いだろうな」

 さすがにワルキューレ=リリスもそこまでは把握していない。

 ちなみにこういう頭脳労働は冥子もタイガーも参加していない。

 というか期待もされていない。

 「通常兵器による迎撃が無かったのも、そういう理由なら納得が行くと思わないかね?」

 唐巣の言葉に一同は黙り込む。

 否定する要素はない。


 「やはり、まずは僕が行きましょう。
  どうせ誰かが行かねばならないのでしょうから」

 今度はピートの決断を止める者はいなかった。



 慎重に廊下を進むピート。

 全方位に意識を集中させ、ゆっくりと歩を進める。

 彼の中で横島という人間の存在は軽くはない。

 唐巣は尊敬の対象であり、横島の友愛の対象。

 数百年の生の中、ピートが得ることの出来た数少ない親友だ。

 彼を通して雪乃丞達とも親友となれた。

 親友のいる時間。

 ここ数年の時間はあっという間に過ぎてきた。

 数百年の生で一番充実した時を過ごしていると自信を持って言える。

 それに欠くべからざる人物こそ横島忠夫。

 ピートは自分から親友を奪いかねないこの状況を心底嫌悪していた。


 

 フーッ

 扉の前に無事着いた。

 緊張を解して肩の力を抜く。

 美智恵達を振り返り、手信号で安全だと伝える。

 ――――この先に彼がいる。

 そう思うと武者震いが止まらないピート。

 ・・・さっきの溜息は決して薔薇色でわない。

 ――――さて、美神さん達にも連絡を入れないと。






 「この扉の向こう。
  確実に強敵がいるけど準備は良いかしら?
  令子達が来たら突入するわよ?」

 美智恵が全員の様子を窺う。

 それぞれに緊張はしているようだが、尻込みしている者はいない。

 しばらくして令子達が合流する。

 その面々にも戦意の高さは感じるが、怖気づいてる様子はない。

 それに満足して扉に手をかける。

 その先には・・・・・・・・

























 ヤマサキがいた。












 「いや〜♪
  ようこそいらっしゃいました♪
  改めてハジメマシテ♪
  私がヤマサキヨシオです♪」

 言うや否や、無言でシロが霊波刀、タマモが狐火、雪乃丞・ピートが霊波砲で襲い掛かる。


 スルッ!・・・・・・・・・ズドドドドドドッ!!


 その全ての攻撃がすり抜ける。

 「あっはっはっは〜♪
  申し訳ない。
  これは立体映像でして〜♪
  私自身は地下3階なんですよ♪」

 「で、何の用よ?
  まさか挨拶だけじゃないでしょう?」

 美神がキレ度120%で問う。

 「う〜ん♪
  美神家の女性はみんなこんなにお美しいんですか?
  横島君が羨ましいですな〜♪」

 横島の名に令子がキレる前に、咄嗟に美智恵が口を挟む。

 「そう、その横島君よ。
  近くに居るんでしょ?
  その立体映像で見せてくれないかしら?」

 「ああ、そうでしたそうでした♪
  実はみなさんに横島君の元気な姿を見せてあげようと思って待ってたんでした♪
  ではご覧あれ♪」

 そう言って、ヤマサキの立体映像が消える。

 代わって現れたのは一辺が5mくらいの淡く光りを放つ立方体の箱。

 色は白っぽい灰色をしており、表面にはルーン文字、ヒエログリフ、ラテン語、古代アラビア語など古今東西の秘術が施されている。

 そしてその立方体の箱から飛び出している石像がある。

 上半身だけのその石像は横島を象っていた。



 それを見て一同は絶句する。



 その横島像の隣に再びヤマサキの姿が映し出される。

 「どうかご安心を♪
  ただの仮死状態であって死んではいませんよ♪」

 「何なんだね?これは」

 唐巣が声を振り絞って問い質す。

 「文珠生成機ですよ♪」

 「そんな物を作ってどうするんだね?」

 「どうするって・・・便利じゃないですか?
  そこにいる美神令子さんだって、破魔札や精霊石の代わりに文珠を使ってたはずですが?」

 「なっ?!私は本人の承諾を得てやってるのよ!!!」

 令子は自分と一緒にするなと声を張り上げる。

 「やだなぁ〜♪
  私達だってちゃんと本人の承諾は得てますよ〜♪
  彼も人類の地位向上のため。
  魔法科学の進歩のためにその身を捧げたんですよ〜♪」

 「そんなの信用できるか!!!!」

 「それは残念ですね〜♪
  ま、それはさておき、そろそろ始めましょうか?」

 ヤマサキがそう言うと、部屋のさらに奥にある両開きのドアが自動的に開く。

 そこから出てきたの一匹のマンティコアであった。

 その姿は獅子の身体と耳を持ち、顔は老人、歯は三列に並び、背にはコウモリの翼を羽ばたかせ、尾はサソリで猛毒を持っている。

 エチオピアやインドの伝承に残る獣。

 人語を解し、言葉巧みに人を誘いこんで食い殺す。


 「出番カ?」

 「ええ、お願いしますよ〜♪
  あ、出来れば死体は残してくださいね〜♪
  是非、調べたいですから♪」

 そう言って、ヤマサキと横島の立体映像が姿を消す。

 それと同時にマンティコアのファイアブレスが美神達に襲い掛かる。







 それが戦闘開始の合図となった。

 
  





 ファイアブレスをかわして左右に散った美神達。

 お返しとばかりにタマモの狐火がマンティコアを中心に炸裂する。


 「ЭЯК」


 マンティコアが人間では聞き取れない言葉を呟く。

 それと同時にマンティコアの周囲に青い壁が展開される。

 狐火をそれで相殺したマンティコアは翼を羽ばたかせておキヌに迫る。

 態勢を整えていないおキヌは無防備のままだ。

 「悪イナ」

 そう言いながら尻尾の針を突き刺す刹那、令子の神通鞭(神通棍の鞭状展開状態)がマンティコアを吹き飛ばさんと迫り、

 反対側からはシロが霊波刀で襲い掛かる。

 「Ω」

 マンティコアがポツリと呟くと、マンティコアの姿は霞み、令子の神通鞭は通り抜け、シロの霊波刀は行き場を失う。

 霞んだ姿が元に戻ったマンティコアは今度こそとおキヌに襲い掛かる。

 しかしおキヌは既に霊体ボウガンを構えており、目が合った瞬間に発射。

 咄嗟に飛び退って距離を取るマンティコア。

 着地点には雪乃丞が構えており、カウンターの準備をしている。

 それを確認したマンティコアは再び呟く。

 「Ω」

 力ある言葉の発動で再び体が霞むマンティコア。

 雪乃丞のカウンターどころか、雪乃丞の身体そのものをすり抜けて着地。

 さらに距離を取るが、その頃には身体ははっきりとしている。

 ――――それなら身体が霞む前に倒す!! 

 マンティコアの術の正体が掴めない小竜姫達は一斉に超加速に入る。

 それに応じてマンティコアがまたしても何事か呟く。

 「ий」

 そして超加速(?)に入るマンティコア。








 一瞬の激突音の後、美神達の目に写るのは悠然としているマンティコアと、呆然としている小竜姫達の姿であった。









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ロシア語って機種依存文字でしたっけ?
もしそうならごめんなさい。
良く分からない言葉を使ってると思ってください。
便宜上ロシア語の文字を使っただけですので。

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