ザ・グレート・展開予測ショー

鯉。(ちゅ−へん)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/12/18)

「ったく馬鹿ねーなんで断らなかったの?」
自身がお見舞いにと持ってきた林檎をとり齧りながら女性。
鬼道の横にも、うさぎさん型に剥かれた林檎が置かれている。
(ちなみにこの林檎を剥いたのは女性より年少と思われる黒髪の少女である)
「なんでて、できる思うか…?ああ、りんごおおきに氷室」
前半の台詞と後半の台詞…見事なまでの温度差である。
少女にたいしては、年長の人間らしく穏やかな物言いだが、女性にたいしては恨めしげな、なにやら、怒ってるようなものいいである。
事の起こりは、この女性に遊びにいくのを断られて、自分にお鉢が回ってきたと言うものなのだから。
そらまあ、理不尽とはいえ、断るのが当たり前とはいえ
なんで引き受けてくれなかったのだろーか?と思うのは仕方ない。
それに、この女性に『断られたから』なのだ。
自分が誘われたのは。
そう思うと、まあむかむかというか、なにやら嬉しくなかったりもする。
が、女性はそんな鬼道の心理などお構いなしに不思議そうに首を傾げ言う。
「できないわけないでしょ?だって冥子はそりゃぼけっとしててトロくて国宝級の天然だけど、無理強いなんてしないわよ?」
つまりはちゃんと断れば、了承するのだ。
では、断らなかった鬼道に自業自得であるし、そんな物言いをされる覚えはない。
確かに、そのとおりである。
が、鬼道にはできなかったのだ。
「…あんなに嬉しそうにしとんのにか?」
あの時、誘われた時。
冥子は本当に、嬉しそうにしていたのだ。
嬉しそうに、笑っていたのだ。
「もちろん」
きっぱしと女性。
その顔には美しいいや、美しいだけではない、力強い、生命力にあふれた笑みを浮かべている。
それは自信に満ち溢れており、まるでこの女性には恐いものなどなにもないであろうと思わせるものがある。
が、
そんな表情のまま彼女が紡いだ言葉は─
「いくら、嬉しそうだからって、あんなに恐ろしいものに付き合わされたくわないわ」
というお言葉である。
そんなことを自信満々に言われてはかなわない。
鬼道は苦笑しながら頷いた。
確かに、あれはもう地獄絵図というにふさわしいものであるのだから。
「でも、まあこの調子でいくといいんじゃない?」
しゃりしゃりと黒髪の少女の剥いたりんごを同じくらいの少年が食べている音をBGMに女性は言った。
…どうでもいいがこの少年ここにある果物を全部たべそーな勢いである。
「なにがや?」
きょとんと目を見張り鬼道。
「だから、惚れてるんでしょ?」
再び首を傾げ女性。
「彫れてる?」
鬼道の頭に彫刻刀でなにやら彫ってる職人が現れる。
「そう」
うーんとなにやら違和感を感じながら、女性。
「え?俺が、冥子はんに彫れとるんか?…すまんけどおもいっきし日本語としておかしいわそれ」
「………えーっと」
なにやら、ある意味冥子と同じ種類の人間だわねえと、呟き。
そうして、なんでこんなことまで自分が言わないと、いけないのだろうか?と思いつつ女性は、ぴしっと鬼道へと指を差し

「だから、アンタが冥子のことすきってことでしょうが」


瞬間、鬼道の頭は瞬間冷凍されたかのよーな錯覚に陥った。

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