ザ・グレート・展開予測ショー

大氷原から帰ってきたら


投稿者名:志狗
投稿日時:(02/12/17)

【注意】
このお話は展開予想にある『南極物語』から分岐した『仔犬(狼)物語』、またの名を『大氷原の小さな家』のその後のお話です。

本編なんぞどーでもよいですから、少なくとも『南極物語(1)』のコメント欄を見てからお読みになられることをお勧めします。












南極から帰還した数日後、横島は久方ぶりに学校へ登校する。
長い間休んでいたので顔を見せに、ぐらいのつもりだったのだが・・・・・

登校した横島が見たものは―――――――



以前より“一学年上”の教室にいるクラスメート達の姿だった。



「し、しまった〜〜〜〜!」

一年たてば普通は学年が上がる。
例外は・・・出席日数が足りないとか。

「なんてこった!せっかくコツコツとギリギリの出席日数を保ってきてたのに!あの努力は何だったんだ〜!」

その叫び声を聞きつけた者が教室から顔を出す。

「あ、横島さんじゃないですか!」
声を上げたのはピートであった。

「何!?横島!?」
「えっ!?横島クン!?」

つられる様に次々に声が上がり、横島はしぶしぶ教室に入る。


「一年間お勤めご苦労だったな。」
「へ?」
入るなり声をかけてきたクラスメートの言葉に、呆けた声を上げる。

「いや、とぼけなくてもいいぞ。たとえクラスから犯罪者が出たとしても俺達は温かく見守ってやるから。」
同情の涙を流しながら、ポンポンと横島の肩をたたく。

他にもあちこちから声が上がる。

「えっ?借金取りに追われて夜逃げしたんじゃなかったの?」
「悪霊に取り憑かれて野生化したって―――――――」
「ヤバげな宗教にはまって―――――――」

「お前ら、俺を何だと思ってんだ!」
次々に上がる声に怒鳴り返す。

「何って・・・・・」
一同顔を見合わせて告げる。

『横島。』

「ぐっ!」
全員一致の意見に呻く。


「ま、まあ冗談は置いといて、どうしてたんですか?」
落ち込む横島に、ピートが助け舟を出す。

「仕事で南極に行って、遭難してたんだよ。」
「南極?しかも遭難?青春ね〜。」
メチャクチャな感想をいう愛子。

「青春の一言で片付けるなっ!大体、遭難のどこが青春――――」
言いかけて、ふと考え直す。

(そーいや遭難中になるよーになって、しかも娘が四人も・・・・“大人になる”どころか親にまで・・・・)

「よく考えたら、遭難も青春かもしれねーな。」
「な、なによ。黙ったと思ったら急ににやけだしちゃって。」
“いろいろと”思い出し同意する横島を、気味悪そうに見る愛子。


「で、もう一度二年をやり直すんですカイノー?」
タイガーの言葉にはっとする。

「そーだ!どーなんだ!俺は留年なのか!」
手近にあったピートの胸倉を掴んでガクガク揺らす。

「ちょっ・・・横・・・苦し・・・」
「どーなんだ!どーなんだ!どーなんだ!」

ゴギンッ!
我を忘れてピートを問い詰める横島の頭に、愛子の机が叩きつけられる。
「それじゃ喋れないでしょーが!」

「だからって、こーゆーやめさせ方をされると俺の方が聞けなくなるだろーが・・・・」
どくどくと流血しながら、横島が呻く。



「で、どーなんだ?」
瞬く間に復活し、再び問いかける。

「僕達は何も聞いてませんよ。先生に聞いたら「あいつの事は忘れるんだ。」とか冗談で返されましたし。」
「本当に冗談か・・・・・?」
疑わしげな表情で呟く横島。

「うう、一刻も早く稼げるようにならんとイカンとゆーのに!家族に貧乏はさせられん!」

わめく横島の言葉にピートが訝しげにきく。
「家族って、誰を養うんですか?」
その問いに「何いってんだ」と返す。

「誰って・・・自分の子供を養うのは親として当然だろーが。」
『は?』

その場にいる全員が呆けた声を上げる。

「こ、子供って・・・・・よ、横島さんの?」
辛うじて口のきけたピートが恐る恐る尋ねる。

「なんだ、聞いてなかったのか?南極にいる間に生まれたんだよ、娘が。四人。」


どよっ!
クラス中にざわめきが走る。

「ふっ、悪いな。俺は大人への階段を一気に、もー四段飛ばしぐらいの勢いで駆け上っちまったのさ。」
うらやましがられていると思った横島は、格好つけて髪を掻き揚げながら言う。


しかしクラスメートの顔にあったのは・・・・恐怖であった。

「わはははは!ひがむなひがむな。」
それに全く気付かずに、仰け反りながら大笑いする横島。


「横島、お前・・・・・前々からヤバイ奴だとは思っていたが・・・」
一人が、勇気を振り絞って言う。



『ペンギンだかアザラシだかと異種族間交配にチャレンジして、しかも成功しちまうよーな奴だったなんて!』


ピシ!
仰け反った姿勢のまま、横島の時が停止する。



「一年も南極にいて、煩悩もおかしくなっちまったんだろーな。」
「そんなこと言っちゃいけませんよ!せめて僕らは祝福してあげないと!」
「そーよ!横島クン、おめでとう!」
「世間の風は冷たいが頑張れよー!」
「横島さん!結婚式には呼んでツカサイ!」
「種族を超えた禁断の愛・・・青春ね〜!」
あふれる涙を拭おうともせずに、拍手なんぞ始めたりする。

「ふざけんなーーーーー!!」
一方復活したこちらは、血の涙を流しながら必死に反論する。

「誰がペンギンやアザラシとヤるか!相手はちゃんと・・・・あ、それでも人間じゃねーや。」
「それみろっ!」
「違うっていってんだろーが!シロだよ、シロ!俺の弟子の!人狼の!」
「「え!」」
シロを直接知っているピートとタイガーは声を上げる。

だが、知らない者は非難の視線を向ける。
「横島!貴様、師匠の立場を使って弟子に手を出すとは何事だ!」
「サイテー!」
「師弟間の禁断の愛・・・・青春ね〜!」
 
「だーっ!どう説明しろっていうんやー!」


ドドドドドドドドドドドドッ!

横島が頭を抱え込んでいると、外から土煙を上げながら駆けて来る一団があった。

「せんせ〜!」
「「「「ちちうえ〜!」」」」
とか言っている。

そして迷うことなく真っすぐに横島のいる教室に向かってきた。

「せんせ〜!会いたかったでござるよ〜!」
「「「「ちちうえ〜!」」」」

シロは横島に飛びつくとその顔を舐め回し、娘たちは足にまとわりつく。
「おっ、お前ら!今日は都内観光じゃなかったのか!」
「だから先生の学校に観光に来たでござるよ。」

「よ、横島クン?その子が横島クンの・・・・」
その勢いに圧倒されながらも、愛子が尋ねる。

「あ、先生のご学友に挨拶もせずに、とんだ無礼を。拙者、犬塚シロと申します。」
ぺこりと頭を下げるシロにつられて、一同礼をし返す。
横島はというと「何だかはずかしーな。」などといって、頭をかいている。

続いて、頬を少し染めながら・・
「で、この四人が・・・その・・・・先生と拙者の・・・こっ、子供の・・・・プチ、チロ、リン、コロでござる。」
「「「「こんにちはでござる!」」」」



「かっ、かわい〜〜!!」
しっぽをパタパタ振りながら挨拶する四人に女子たちが殺到する。

一方男子も放心状態から復帰すると、横島にくってかかる。
「横島っ!この○リコンがー!」
「うるせー!犬飼ポチの年なら○リコンかもしれんが、俺はセーフだ!第一、シロはもう俺のもんじゃー!」
掴みかかられて、横島は相手の知らないネタで開き直る。

「横島さん!わっしは、わっしは・・・・仲間だと思っていたのに!」
「タイガー!てめーだって、一文字さんがいるじゃねーか!」
「なんだとっ!タイガー、お前までっ!」
「わ、わっしは無実ジャー!」
不用意な発言で墓穴を掘るタイガー。

ピートは作為的に会話から除外されているようだ。


タイガーに目がいっている隙に抜け出した横島は、女子に質問攻めにされている娘たちのところへ行く。

「ねえねえっ!お父さんとお母さん仲良いの?」
「ちちうえは、ははうえをよくぎゅ〜ってするでござるー。」
「夜はいっしょにねてるでござるよ!」
「せっしゃ、のーこーなきすしーんをみたことあるでござる!」
「ちちうえがははうえをなでると、「く〜ん」っていってきもちよさそーでござるよ!」

「こら!親の私生活をみだりに話すな!」
慌てて、ストップをかける横島。
「まったく・・・・あれ?シロは?」
と、辺りを見ると・・・


「で、横島クンのどこが好きなの?」
「え〜っと、拙者の散歩に文句を言っても付き合ってくれるし、優しいし、拙者のことを大事にして守ってくれるし・・・
えーと、えーと・・・・・ともかく、全部大好きでござるっ!」
「う〜ん、青春ね〜。」
愛子に尋問されてペラペラ喋っていた。

「あああ!シロまで!やめんか〜!」

怒鳴りつけると、シロの瞳がじわっと潤む。

「拙者がせんせーを好きなのを話しちゃいけないんでござるか?」
娘たちもそれに続く。
「せっしゃたちも、ちちうえとははうえのなかがいいのをしってもらいたいでござる!」
「ちちうえおこってるでござるか?」
「せっしゃたちわるいこでござるか?」
「ちちうえ、せっしゃたちのこときらいになっちゃうでござるか?。」

一瞬で横島は折れた。

「いけなくなんてないぞ!悪い子でもないし、怒ってもいないぞ!俺は五人とも愛してるぞ〜!」
言って、五人をがばっと抱きしめる。

クラスメート達は呆然としているが、そんな事はお構いなしだ。


「じゃあ」
「ちちうえも」
「さんぽに」
「いくでござるー!」
口々に言う娘たち。

「え?あ、いや、俺はこれから授業が・・・・・」
口ごもりながら返すが・・・・・・


「「「「ダメ?」」」」

横島には、潤む八個の瞳に抗う術はなかった。








シロ達に引きずられるようにして横島が消えていった教室の扉を見ながら、ピート、タイガー、愛子は呟く。

「横島さんって・・・・・」
「結構・・・・いや、かなり・・・・・」
「親バカだったのね・・・・・・・・・・・・・・青春だわ。」

ぼーっと佇むクラスメート達も「青春」以外の所に深く頷いた。








そして横島の留年問題は

美神の手配で、ドリアングレイの絵の具によるドッペルゲンガーが登校していたため無事進級。


ちなみに皆偽者だとわかっていたが、ほっといたそーな。

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