『平安宮の薔薇』 (やや長)
投稿者名:尉雄
投稿日時:(99/ 7/ 8)
時は平安末期。鳥羽上皇の治世。
宮廷のいずこかに巣くい、政に乗じて
日の本の霊的秩序の解体をもくろむ者がいる。
そこに魔族の匂いを感じ取った神族は
その暗躍を暴くべく、一人の若き龍神を地上に遣わす。その名は小龍姫。
小龍姫は伊勢の阿部泰成の協力を得て
その弟、阿倍泰重と名乗り、都の宮内に参内することに相なる
そして調査を進めてゆくなかである聡明な宮女に出会う。
その名こそ玉藻御前。
龍神と妖狐。お互いの正体を見抜いてしまったところで
もはやこれまでと小龍姫は目的をあかし、任務の失敗を悟り、
危機をしらせて立ち去ろうとする。
しかし一転、玉藻御前はその秘密を漏らさないどころか、協力を申し出る。
紆余曲折、
二人は数々の危機と戦いを乗り越え、鳥羽上皇に呪いをかけている黒幕を突き止め、
調伏に成功する。
そして、いつしか力を持て余す孤独な魂同士は、深い心のつながりを持つ。
「玉藻御前。もはや我等、魔族には面が割れた身。どうぞ我が新しき山殿へともに参り、しばらく身を隠されては」
「…泰重の申すとおりにする…」
「まことで。では取り急ぎ準備しなくては。まだこれからの山殿ゆえ、
先に参り、用意と手続きを済ませてお待ちしております。
あとのことは兄の泰成に頼んでおきますゆえ。では。」
玉藻が妙神山に向かおうとする朝を迎えたその日。
迎えの阿部泰成の様子がおかしい。
訝しがった玉藻御前が
彼の背後の魔族の怨念に気づいたときにはすでに遅かった。
「あれこそが天竺、宋国を傾けし妖、白面金毛九尾の妖狐!射かけよ!」
襲いかかる呪と矢の雨。
這う這うの体で逃れ、血にまみれ、薄れゆく意識の中でくり返す言葉。
「泰重、なぜわらわがそなたに協力したか、聞いてたもれ」
「それは、疑わなかったから」
「妖狐というだけで、わらわを疑うことをしなかったから」
「わらわの正体をしりながら、魔族におもねる者とは疑わなかったから」
「わらわを知ってくれた」
「それがどれほどにうれしいことか どれほどに満たされたか」
「そなたにはわかるまい」
だがそれが永遠に小龍姫の耳に届くことはなかった。
魂を魔族に辱められぬように、玉藻御前は自害して石と果てる。
小龍姫は玉藻が妙神山に来なかったことをどう思っているのだろう。
殺された事実を知っているのだろうか。
妖狐の気まぐれだと思い伏したのか。
それとも今日も待っているのだろうか。
【サブタイトル:「りゅうじんとようこ」】
【協力(というか許可):中村氏】
【文体考証:感覚】
【時代考証:適当】
【ねらい:お耽美】
今までの 賛成:4 反対:1
コメント:
-
文章の流れだけでも、大変面白いので、是非、本編(もっと、本格的に)を
描いてください。 つーか、がんばれ〜(笑)
(中村 守博)
- 面白い・・・。
というか、尉雄さん、何者!?
文章力とか構想力が半端じゃないですね。
(青山)
- 花井悠紀子(だったかなぁ)「花伝ツァ」...
記憶違いかもしれない(^^;)
いや、好きだった作品を思い出したもので(15年以上昔の少女漫画)
(いーびる・あい)
- すごい!この一言につきます。
(YANA)
- 自分で書いておいてなんなのだが
玉藻御前が小龍姫をかばうなり、かくまうなりして
死んで行く、というプロットを入れるべきだったと思った。
かなり盛り上がりに欠けるような。
阿倍泰成が霊視したという設定にこだわりすぎたかも。
小龍姫の起用に?な人もいるかもしれんが
私の中では当然に近いのだった。
・タマモはひとりではドラマが発生しえない(内向的)
・男が好きだという設定は現在似つかわしくない(非肉感的)
ということで同じく潔癖で男嫌いの疑惑がある小龍姫×タマモ。
(尉雄)
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