ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−21


投稿者名:NAVA
投稿日時:(02/12/16)




 今、目の前に巨大な筒状のエレベーターがある。

 念のためにマリアにスキャンをさせたが、罠らしきモノは一切検地されていない。

 「とりあえず、目に付く罠は無し・・・か。
  あるとしたら・・・
  いえ、確実にこの先に罠があるわね」

 美智恵は脳細胞をフルに回転させる。

 この得体の知れない研究所は用心し過ぎるという言葉は無用だ。

 見れば全員が乗っても問題ないくらいのサイズではある。

 ――――それが罠だったらどうする?

      一網打尽など御免だ。

      何度かに分かれて移動する方が良い。

 ――――順番はどうする?

      罠があるかも知れない場所に実力の低い者をやるのは危険過ぎる。

      罠を食い破るくらいの実力者が望ましい。

      しかしそれも一長一短だ。

      先に乗る者は要するに生贄だ。

      極端な話、失っても惜しくない者を囮に罠を見破るのが上策。


 惜しくない者。

 それを考えた時点で美智恵は思考を止めた。

 この素晴らしい仲間の中に惜しくない者がいるだろうか?

 馬鹿馬鹿しい。

 危険だとか犠牲を惜しむようなら、横島を見捨てて最初からこんなところには来ない。

 結局、美智恵と令子のチームに分け、まずは美智恵が先に進むことにした。

 (美神は美智恵の意図を見抜いてかなりごねた)

 チーム編成は次の通りである。


 美智恵チーム

 美神美智絵
 西条輝彦
 唐巣神父
 六道冥子
 ピート
 タイガー

 令子チーム

 美神令子
 氷室キヌ
 シロ
 タマモ
 伊達雪乃丞
 カオス
 マリア 



 「さぁ!
  ここからが本番よ!
  気を引き締めて行きましょう!!」



 ブーン!!!



 美智恵が発破を掛けた途端に、水を差すかのように凄まじい霊圧が地下から押し寄せる。
 


 「・・・・これ何?ママ?」

 嫌な汗をかきつつ、令子が疑問を口にする。

 「な・・・何でしょうね〜♪」

 同じく嫌な汗をかきつつ、美智恵が応じる。

 「アシュタロスほどとは言わないけど・・・、
  かなりの霊力、というより魔力を感じるのは私だけ?」

 さすがに一同も否定しない。

 「でも、どこかで感じたことある魔力なんだけど・・・」

 令子が答えを分かりつつ惚ける。

 所謂、現実逃避という奴だ。

 しかし現実は甘くない。

 そこに別の声が混じる。


 「究極の魔体だな。これは」

 「ワルキューレ?!小竜姫様?!」

 「遅くなりました」

 ワルキューレを先頭に、小竜姫、ヒャクメ、ジークと続く調査隊の面子。


 助かった。


 美神達の目に喜色が満ちる。

 神魔の援軍はこれ以上ないほど頼りになる。

 「情報収集は済んだのかしら?」

 美智恵が問う。

 「はい。神魔の上層部を納得させる材料も出来ましたから」

 「そんな凄い情報を?」

 「メドーサ、デミアン、ベルゼブルの3鬼がこの研究所に入り込んでいます」



 「「「「「「はぁ?」」」」」」」





 さて、美神達が驚いている頃、メドーサ達は未だに4階にいた。

 何やら怪しげな作業を繰り返している。

 「そろそろ教えてくれないか?
  これは何の作業なんだ?」

 デミアンが意外と熱心に作業をしながらメドーサに問う。

 「部屋の左端っこを見な。
  よく見るとエレベーターがあるだろ?
  地下からの直通さ」

 言われて見ると、それらしきものがある。

 「この研究所には究極の魔体を複製したモノが存在する。
  ま、所詮は複製さ。
  本物に敵うはずもないが、美神達を倒せるだけの力はある。
  力があるからと言って、実際に倒せるとは限らないがね」

 「それならここに居ても仕方ないんじゃないか?」

 「美神達が倒されたなら、横島救出はアタシ達が引き継ぐ。
  そして美神達の死体を見せてやるさ。
  それはそれで横島の絶望感を煽れる」

 メドーサは次のルシオラクローンへの細工へと移る。

 「だが、美神達が勝利したらヤマサキ達はここへ来るしかない。
  こいつらはヤマサキ達の切り札だからね。
  良い人質って奴だ」

 「フム。しかし美神達に人質など通用するのか?」

 「さぁ?どうだろうね。
  でも横島には確実に効くさ」

 「なるほど。
  面白い展開になりそうだ」

 「ま、それは次善の手さ。
  アタシ達が今やってる作業はねぇ。
  ヤマサキ達がルシオラクローンを制御出来るようにしてやってるのさ」

 「そうするとどうなる?」

 「制御出来ると知れば、必ず美神達にぶつけるだろうねぇ。
  ルシオラ達対美神達。
  横島はどっちに付くと思う?」

 「フン、一度はルシオラを見捨てた男だ。
  どちらに付くかなんて明白じゃないか」

 「そんな簡単に割り切れないのが人間なのさ。
  後はアタシ達が戦いに干渉して、出来るだけ被害を大きくしてやるのさ。
  全滅してくれれば申し分ないよ。
  横島一人を残してね」

 「そうやって横島を壊すというわけか・・・」

 「まだネタはあるさ。
  もうルシオラが転生するのは無理だってことも教えてやるのさ」

 そう言ってメドーサはニヤリとした。








 現在、ベルゼブルは分身を使って美神達とヤマサキ達を監視していた。

 状況の変化をメドーサに伝えるためだ。

 そんな彼の前では美神達がメドーサ達の話をしていた。


 「何であいつらがここに来るのよ?」

 美神が流石に慌てながら問いただす。

 「さぁな。
  どちらにせよ、旧アシュタロス派の連中がここにいる。
  それこそ我々が干渉出来る理由だ。
  運が良いのか悪いのか・・・」

 ワルキューレはここでもアシュタロスの名を出す。

 「今更何が出来るってのよ?
  敵討ちでもしようっての?
  あいつらにそんなセンチなところがあるわけ?」

 「それは分かりません。
  しかしGS協会の暴挙の裏に彼らの暗躍があるとしたら、放っておくわけにはいきませんよ」

 言いつつも、小竜姫は1つの疑念を持っている。

 ――――何故、彼らはこの今の段階になって研究所内に入ったのか?

 暴挙の裏に彼らの暗躍があったなら、最初から研究所内で待ち構えているはずではないか?

 それに最近までアシュタロスのアの字も見かけなかったではないか。

 何故に今更?

 ワルキューレは何を根拠にそう断言したのだろうか?

 「どちらにせよ、横島君救出の障害になることは間違い無さそうね」

 前門の虎に後門の狼。

 これから先の困難にため息を吐きつつ、美智恵が行動開始を宣言した。





 

 「ワオー♪
  小竜姫にヒャクメじゃないか♪
  それにワルキューレとジークか〜。
  いよいよオールキャストだね〜♪
  良いねぇ。
  トップクラスのGS達と神族・魔族を打ち破った夜天光。
  うんうん。
  これでスポンサー様を納得させる実績が出来るなぁ♪」

 脳裏には、究極の魔体のサンプルを手渡された時の協会幹部の言葉が浮かぶ。

 『人界とていつまでも神界・魔界に傅いてばかりでいるつもりはない。
  人界・神界・魔界。
  この3つの世界は互いにバランスを取って存在してきた。
  人界が他の2界に従属するという形でな。
  文珠・究極の魔体。
  この二つが揃えば人界は他の2界に対して新たな関係を築ける。
  これこそ新たな秩序の構築、言うなれば現代版・天下三分の計だよ』

 究極の魔体のサンプルはまだまだある。

 夜天光の実力が証明されれば、ヤマサキこそが新たな秩序を築いた最大の功労者となろう。

 自分の研究が大々的に認められる。

 科学者としてはこれ以上の名誉はない。




 ヤマサキは知っていた。

 この状況もまたGS協会が裏で手を引いていることを。

 文珠生成機を製作する一方で、研究所の所在地を六道家にリークし美神達を誘導した。

 そして夜天光へぶつける。

 ここまで協会がお膳立てしてくれたのだ。

 是非とも結果を出さなければなるまい。

 この研究所の各所には、研究所を跡形もなく吹き飛ばすだけの爆薬が仕込まれている。

 仮に美神達が目的を達成し、研究所の裏の部分を公表されたら堪ったものではない。

 そんなわけで、機密漏洩が確実になった場合は爆薬が起動されてしまだろう。



 ――――僕ごと爆破だって?
      冗談じゃない!
      死んだら研究・実験が出来なくなってしまうじゃないか!




 かる〜く遊んでいるようで、実はヤマサキにも正念場だった。





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