ザ・グレート・展開予測ショー

柔  −二ー


投稿者名:veld
投稿日時:(02/12/14)

 
 注:この話は全く某柔道少女の話とは関係ありません。柔道の話ですらありません。ひょっとしたら、全く意味のないタイトルかもしれませんが、ご了承ください。




 いつもどおりの日常。
 
 「あの、横島さん?」
 
 そう、いつもどおり、普通過ぎるくらいな、日常。
 
 「横島さんってば」
 
 そう、今日は日曜日。まあ、バイトをしてる俺にとっては、日曜日だろうがなんだろうが関係ないことがほとんどなんだけど。
 
 「・・・横島さぁん」
 
 「何だ?マリア」
 
 俺はいい加減、無視することを止めた。頬を膨らませたマリアの顔は、横目で見るのにはあまりにもったいない、つまりは、そう、可愛かった。
 今もまだ、少し膨らませたままで、それでいて、眉は八の字の困ったような形で。
 
 「・・・悪かった。んで、何だ」
 
 俺はその顔を見ると罪悪感が沸いてきて、謝ってしまう。照れ隠しの、意味もあるけど。
 マリアは俺が謝ると、すぐにその顔を笑顔に変えて、俺を見つめる。そして、その笑顔にさえ心惹かれる俺がいて・・・。やめよう。いい加減、話が進まなくなる。
 
 「今日は日曜日、ですよね?」
 
 「ああ、そうだな」
 
 さっきも言った通り、今日は日曜日だ。
 
 「確か、今日はバイトもお休みでしたよね」
 
 「ああ、美神さんたちは旅行に行くって言ってたな」
 
 俺も誘われたんだけど行かなかった。まあ、その誘い方って言うのが、あんたもついでに、荷物持ちには丁度いい、そんな言われ方だったから行く気なんて失せちまったが。
 そのことを思い出すと、あまりいい気はしない。自然、語尾も荒くなっちまった。が、マリアは別に気にしてはいないらしかった。

 「何か、今日おやりになることはありますか?」

 「んにゃ、別に。学校なんてほとんど行ってないし、つまり、宿題なんてもんもないしな。いや、あってないようなもんさ、だから、やることはない。しいて言うなら寝ることかな?」

 「それなら!」















 「それなら・・・、散歩・・・か」

 「はい♪」

 シロじゃないんだから・・・。と思わないでもなかったが、ハイペースな、ランニング、いや、マラソンも同然なシロとの散歩と違って、ゆっくりと歩く、普通の散歩ってのは意外と気持ちが良かった。隣にいるのがマリアだってこともあるかもしれないが。

 「こういうのも、悪くない。かな」

 横目でマリアを見ると、マリアも俺を見ていた。すっ、と頬が薄っすらと赤くなる、そんな初々しい反応をするマリアを見ると、俺も気恥ずかしくなる。そっぽを向くと、道路を挟んだ向こう側にクラスメートの顔があった。どうやら、向こうもこっちに気付いたらしい。手を振ってくる。俺も振り返す、と。そいつの顔が、不意に険しくなる。じぃー、っとこっちにある何かを目を凝らしてみようとするような、目つき、顔つき。

 「・・・何か、あるのか?マリア、何かここらへんに変なもんでもあるか?」

 「変なもの・・・、ですか?」

 「ああ」

 と、突然言われても困ってしまうよな。俺はもう一度そいつの顔を見た。今度は、呆然とした、驚きを通り越したような顔をするそいつの姿があった。
 
 「・・・?」

 あああ、とでも言わんばかりの驚愕の表情、そして、右手をあげ、人差し指を俺に突きつける。つまり、俺を指差している。あまりいい気分じゃない。

 「何なんだよ!?」

 マリアも首をかしげている。
 そのまま硬直しているそいつをとりあえず無視することにして通り過ぎる。俺とマリアは長い時間を散歩に費やした。別に、何か特別なことをするわけではなく、ただ、一緒に・・・一緒に歩いているだけ。それだけなのに、妙に楽しかった。
 
 「横島さん、疲れてませんか?」
 
 「いや、いつもは何十キロの荷物しょって歩き回ってるんだぜ?このくらい平気だよ。マリアは大丈夫か?」
 
 「大丈夫です・・・。私は、アンドロイドですから」
 
 「そう、だな」



 




 その日は一日中、マリアと一緒にいた。カオスの爺さんのことを思い出して、尋ねてみると、どうやら大家のばあさんと旅行に行ってるらしい。全く、あの二人の関係はいまいちよく分からん。
 
 「マリアは誘われなかったのか?」
 
 そう俺が尋ねると、マリアは俯いた。何かいけないことでも聞いたのか、誘われなかった、そのことを気にしていたのか、俺は嫌な予感がした、が。
 
 「マリア・・・、横島さんといたかったから・・・」
 
 見ると、その顔は真っ赤だった。なんと言うことはない、ただ照れていただけだったらしい。俺はほっとするのと同時、この、目の前で顔を赤らめている娘を、たまらなく・・・。
 
 「お・・・俺も」
 
 そこから先、言えそうになかった。







 


 久しぶりに行った学校にて、横島、美人と一緒に・・・、という噂が流れており、机の上にスプレーによる呪詛にとどまらず、牛乳をたっぷり吸った後乾いたのであろう異臭を放つ雑巾、及び、食虫植物を生けた花瓶、とどめには『離婚届』と書かれた用紙、四十四枚が俺の机の上に置かれていたその惨状に、思わず泣き出しそうになったのは俺だけの秘密だ。

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