ザ・グレート・展開予測ショー

ガールズ・ブラボー!! その2


投稿者名:我乱堂
投稿日時:(02/12/14)

 同日 五時間後 美神除霊事務所

 
「――そんなことがあったの?」
 美神令子は両肘をデスクについて拳を組み、その上に顎を乗せていた。
 彼女がキヌの話を聞く時は、いつもこのスタイルだ。
「ええ、そうなんです」
 キヌは仕事着――巫女装束に着替えていた。
 別にこの服でいなければならないという服務規程はない。
 だが、今日は一軒だけ仕事が入っている。
 出るのはもう少しあとだが、その都合で彼女は着替えていた。
「霊動実験室って、以前に美神さんが特訓して怪我してたってヤツだろ?」
 いつもどおりにキヌの横に立っていた横島忠夫は、何処か不思議そうに尋ねる。
「アレって女学校に置けるもんなんですか?」
「あそこは別よ」
 令子は軽く説明する。
「六道家ってのは代々陰陽師として都市の霊的防衛に関わってきた名門だしね。次代のGSを育てるって大義名分があれば、都も協力は拒めないのよ」
「そー言うもんスか」
「そうなの。あの冥子のオバさんは、ああ見えても日本の霊的指導者としてはかなりの高位にいる人なんだから」
「うーん……」
 横島の脳裏に冥子とほぼ同レベルなクセに威張っている、六道家の現当主の姿が浮かんだ。人のことは言えないが、「この親にしてこの子あり」というのを体現している親子だった。
 あれが日本の霊的指導者……。
 そしてその娘の冥子もまた、その後を継ぐことが期待されているはずで――
「……俺、なんかこの国のGSの未来が不安になってきましたよ」
「まあ、その辺はみんなが心配していることだから……」
 令子は苦笑していた。
 横島の言わんとしていることが解っていたからだろう。
「けど、それはともかく、悪いけど一文字さんにはあのプログラムは無理よ。当時の私でさえどうにもならなかったんだから」
「俺もやったけど、本当にしんどかったス――」
 何気にそう言ってから、横島は自分の顔を見る令子の眼差しに気づいた。
「ええと――なにか?」
「……なんでもないわよ」
 ぷいと顔をそむける。
「とにかく、それでその、一文字さんが無茶して――どうしたの?」
「はい。その……」



 同日 五時間前 保健室


「……正直な話、悔しいんだ」
 魔理の告白に、キヌは微かに顔を強張らせ、かおりは無言で理解を示すかのように頷いた。
「ここで修行してさ、霊力を磨いて、それなりの実戦を潜りぬいて、そこそこ実力をつけたつもりだったんだけど――」
「令子おねーさま達には、全然及びませんもの……!」
 かおりは魔理の言葉を引き継ぎ、そう言った。
「それは……」
 仕方がないことだ――そういおうとして、キヌは口を閉ざした。
 横島や令子がどれほどの修羅場を踏破し、あれほどの実力を得たのか、彼女は知っている。その壮絶なまでの日々を横目にも見てきたキヌにとって、魔理やかおりの言葉は甘すぎるようにも思えた。ルノアールのココアよりも甘い。しかし、それでいてなお、彼女には二人の気持ちが解った。必死に頑張りながらも先達に到底及ばぬ――その焦燥は、彼女自身が潜在的に抱えていたものだったから。
 魔理は呻くように何度も呟いていた。
「力が……力が欲しい……!」


 
 同日 五時間後 美神除霊事務所


「……ふーん」
「――って、あんた! なんか薄情じゃないですか?」
 横島の詰問に、令子は「だってねぇ」と気の抜けたような顔で答える。
「はっきり言って、その一文字さんが身のほど知らずだもの」
「身の……」
「だってそうでしょ? 力は簡単に身につかないから、みんな修行するんじゃない。一発逆転に力が身につくなんて、そんな甘い話ありはしないわよ」
(この人は……!)
 自分はほとんど金で能力買ったようなことしくさって……! 
 横島は半ば呆れたが、キヌはうなだれた。
「――そうですよね。地道に修行するしかないんですよね……」
(この子は……)
 なんて間抜けなまでに真面目なのか……!
 横島は半ば呆れたが、令子は「そうそう」と頷き。
「――でも、一文字さんも弓さんも、おキヌちゃんもだけど、GSに必要なのは必ずしもパワーじゃないって、忘れちゃったの?」
「え――」
「あ――」
 二人は、令子が不敵に微笑んでいるのを見た。
 何が言いたいのかが解らなかったわけではない。
 横島とキヌは、GS美神のチームの一員なのだから。

「明日は丁度、六道学園での講義があったわね?」


 ――それは、格好の暇潰しを見つけたような笑顔であった。 

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