ザ・グレート・展開予測ショー


投稿者名:veld
投稿日時:(02/12/14)



 注:この話は全く某柔道少女の話とは関係ありません。柔道の話ですらありません。ひょっとしたら、全く意味のないタイトルかもしれませんが、ご了承ください。




 「横島・・・さん、朝です」

 ちゅんちゅんと、小鳥の囀りが聞こえる。まだ、朝早いのだろう。部屋の中に冷たく、爽やかな空気が入り込んでいる、窓を開けた覚えはない、が、思い当たる節はあった。

 「横島・・・さん?」

 疑問符がついて終わった声の後に、毛布を目深にかぶった俺を揺り起こそうとする手が背中の辺りに置かれる。あまり温かみは感じられない。冷たい空気の中にいたせいか、すっかり冷たくなってしまったらしい。何となく心が痛んだが、自業自得だ、と思い直す。どうにか、このまま夢の国へと逃げ出したい。恐ろしく冷え込んだ部屋の中で寝れば、夢の国を通り越して天国に行っちまうかもしれなかったが。

 「起きてください―――横島さん」

 手の動きが、大きくなる。が、乱暴、というわけではない。まだ、優しいという範囲内からは抜け出ない動き。心地いいとさえ思える、動き。俺は目を覚まさない。

 「・・・横島さん―――仕方ないです」

 毛布の上に申し訳程度にかけてあった掛け布団が、俺の上に掛けられる。諦めたのだろうか?いや、違う気がする。何となく想像はついたが、俺は動けなかった。動く気もなかった。

 「私も―――、一緒に」

 その台詞を言い終える前に、その体が掛け布団と毛布の間に潜り込んでいた。彼女の温かで柔らかい感触が・・・・、

 「って、柔らかいぃぃ!?」

 俺は包まっていた毛布、掛かっていた掛け布団を一気に吹っ飛ばすと、コロコロコロと、転がってしまった彼女を抱きとめる。うむ、温かい。それに、柔らかい。
 そして、その顔を見る。最近、不定期的に起こしに来、その度に俺の部屋の窓ガラスをぶち壊してゆく、迷惑な(いや、起こしてくれる行為自体は嬉しかったりもするが)来訪者の顔を。

 「マリア・・・だよな?」

 そう、どう考えても、その顔はマリアの顔。

 「イエス・・・横島・・・さん(ぽっ)」

 何で、柔らかいんだ?

 「どどど・・・、どうして」

 「私・・・、人間と同じ体にしてもらいました」

 「な・・・な・・・」

 「横島さん・・・、ご飯、出来てます」

 そして、彼女の視線の先には、湯気を立てたご飯と味噌汁、そして、梅干、焼き魚の姿が。

 「和風・・・にしてみました。よろしかったですか?」

 「あ・・・ああ、俺は朝はご飯派だから・・・。嬉しいよ・・・マリア」
 
 違う。取るべきリアクションが違うぞ、俺・・・。

 「喜んでもらえて・・・。マリア―――幸せです。(ぽっ)」

 






  朝ご飯を向き合って食べる俺とマリア。どうやら、食物を摂取することもできるようになったみたいだ。梅干を食べた時にしょっぱそうな顔をしてたから、味覚もあるらしい。まあ、後からそう思っただけで、その時には初めて見たマリアの人間臭い顔って奴に見惚れていたんだが―――その後に見せたマリアの照れくさい顔にドキッとしてしまったのは秘密だ。
 作りなれているらしく、その料理はうまかった。ご飯や梅干や焼き魚は簡単に作れるとしても、味噌汁ってのはなかなか作れないものだと思うんだが。
 
 「なあ、どうやってこんな料理作れるようになったんだ?」

 マリアは笑みを浮かべ答えてくれる。

 「毎日ドクターの料理を作っていますから・・・、それに、大家さんからも教えてもらったりしますし・・・。作るの楽しいんですよ」

 大家のばあさんか、確かに何かと一緒にいるところ見かけたりするけど。

 「そっか、また作ってくれるか?」

 「はい、もちろん!」

 そう、答えてくれた彼女の笑顔が・・・とても可憐に見えて、俺は・・・。

 「お・・・お、サンキュー」

 押し倒してしまいそうな衝動に駆られた。

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