ザ・グレート・展開予測ショー

ロストメモリー(前編)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(02/12/14)










ソウト事件から2週間・・・

体力、霊力ともにすっかり回復した美神除霊事務所のメンバーは今日も悪霊退治に忙しい日々。
特にソウト調伏の号は、広いようで狭い業界内を瞬く間に駆け回り、美神のGSとしてのステータスを更に上げる結果となった。
そういうわけで、前以上に依頼(しかも高額)が入り込むようになって、ウハウハな美神だが・・・・・・・・


「何でやーー!俺やおキヌちゃんだって活躍したのにぃーーー!!」
「まぁまぁ・・・」

いつも通りの重装備リュックを背負いながら泣き叫ぶ横島の声が古びたビルの内部に響き渡った。
それをこれまたいつも通りなだめるおキヌ。



「私に言われても知らないわよ!・・・・・まぁ、噂なんて『尾ひれ背びれ』付くもんじゃない?」

美神は泣き叫ぶ横島を軽くあしらう。そもそも横島が泣き叫ぶ原因・・・・・・・・

「だって・・・だって・・・」

グっと震える拳を握りしめる

「『美神除霊チームがソウトを退治した』じゃなくて!いつの間にか『美神令子単独でソウトを除霊した!』
 になってるじゃないですか────!!!!」

まるで魂の叫びのように声をあげる横島。

「ちゃんと私は報告書に・・・
 
 『事務所メンバー、オカルトGメン、「その他」の協力のもと・・・』

 って書いたわよ!まぁ、そんなこと知らない金持ちがわんさか依頼に来て、私としては大助かりなんだけど♪」

ケラケラと笑い声をあげる美神。
横島はゲンナリとした表情を浮かべるが、めげずに続ける。

「別に名声が欲しいわけじゃないんです・・・・・・・・・・ただ・・・」

「ただ?」

オウム返しで聞く美神。

「あんなに苦労したのに・・・・・・・・・・・・・・・何で!何で!時給が10円しか上がらないんですかーー!!(血泣)」

血の涙まで流して訴える横島に美神は「ふ〜」とタメ息をついた。

「ったく・・・・またそれ?・・・・・・・・・言ったでしょ、賃金交渉は年一回って。
 契約書にもそう書いてるし、あんただってそれを承知で雇われてんでしょ?
 その年一回のところを大おまけで時給上げてあげたのに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・文句あんの?」

「・・・・・・・うっ」

ギロっと睨む美神に思わず冷たい汗を流し後ずさる横島。

(正しいこと言われてるようで、理不尽さがありまくりなこの気持ちは何だ!!?
 いかん!このままでは奴のペースに飲み込まれてしまう!!・・・・そうだ、いつもとは違う俺を見せてやれ!
 普通の交渉ではダメだ!もっと・・・・こう、美神さんが俺に歩み寄るような・・。・・!!!・・・・これだ!!
 美神さんが弱い、大人の男性のように、こう・・・・)


「んんっ!」

横島は一つ咳をつくと、美神の肩に手を回した。

「はっはっはっ・・・・令子さん・・。今度海の見えるレストランで契約交しょ・・・・おご!」

次の瞬間、横島の股間に美神の膝が入る

「そ、そこここだけはいかんのや〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・」

息も絶え絶えに、股間を押さえうずくまる横島。
おキヌはさすがにその痛々しい姿に駆け寄った。

「だ、大丈夫ですか?横島さん!・・・・美神さん、ここまでやらなくても」

「そいつが肩に手回す振りして、私のおしりを撫で回したのよ!!?」

「よ、横島さ〜ん・・・・・・・・・・」

さすがに同情が薄れるおキヌ。そんなおキヌをよそに横島は美神の臀部の感触を思い出しながら心で呟いた。

(これだ!これがあるから俺はここで働けるんや〜〜〜〜)


横島忠夫、17歳。
いくら成長しようが、霊力が強くなろうがこれだけは変わらないらしい・・・・・・・・・・・














「さ、これで最後よ!・・・極楽へ!!行きなさいっ!!」

あれから30分。
4階建てのビルに住みついた悪霊達を次々と除霊していった美神達はいよいよその大詰めを迎えていた。


「吸引!!」

美神の凛とした声と共に、中型悪霊が掃除機に吸い込まれるように破魔札に吸収されていった。

「ふぅ〜、いっちょ上がりね♪」

「今日は終わりっすか?」

「えぇ、じゃあ装備片付けて変えるわよ、おキヌちゃんもいいわね」

「はい」

ビルを出て行こうとする三人。しかし、

『俺はまだ死んでなぁぁぁい!!!』

「「「!?」」」

三人の視線が一斉にその声に集中する。それは倒したはず今日一番の獲物(悪霊)だった。
さっき除霊したと思った悪霊が最後の力を絞り出し、具現化し美神を殴り飛ばす。

「キャっ!!!」

短い悲鳴をあげた美神は激しく壁に叩きつけられる。
「カハっ」と、苦しいそうな息を一つ吐くと、
美神はそのままズズズっと壁にもたれるように、ゆっくり倒れていった。

「「美神さん!!」」

その光景に横島と、おキヌの叫び声がハモる。


『があああああああああああ!!!殺す!お前達を殺して俺は生き返るんだあぁぁ!!!』

「勝手なこと言いやがってっ!!
 おキヌちゃん!美神さんを頼む!俺はあのクソ悪霊を・・・」

「はい!」

横島の右手から凄まじい霊力の刀・・・・・霊波刀が現れる

『キシャァァァァ!!』

「俺の女に何しやがるーーーーっ!!!」

美神が起きていたらヒールが飛んできそうなセリフを吐きながら、
横島は霊波刀の出力を高める、・・・いや無意識のうちに高まったというべきか・・・
そして、その右手の霊波刀が霊眠期の副産物・・・・・漆黒の霊波刀、ネオ・ハンズオブグローリー(仮名)と変化する。


『ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

「くたばれぇぇーーー!!」





ズバアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!








カウンター一閃。

ネオハンズオブグローリー(仮名)の一撃を受けた悪霊が霧散する。
その最期を見届けると横島はハっと振り返った。

「おキヌちゃん!美神さんは!?」

急いで二人の下へ駆けつけ、美神の状態を尋ねる横島。
だが、おキヌは悲しみの表情で横島に答える。


「そ、それが傷はないんですけど、頭を打ったみたいで目を覚まさないんです・・・」
「な!?頭を打ったって・・・」

吹き飛ばされたときの美神の状況を鮮明に思い出す横島。
美神が背中を強打したときに漏らした短い息、そしてその次の瞬間後頭部を打ちつけたのを横島は確かに見ていた。
後頭部・・・・・・・・・・人体急所の一つ・・・・・強打すれば最悪の場合死んでもおかしくない。

「だ、大丈夫!この<GS美神>で頭打ったくらいで死ぬもんか!」

「よ、横島さんそんな事言ってないで早く救急車を!!?」

「待って、もっといい方法がある!」

「え?」

横島の力強い言葉に期待するおキヌ。


「古来から美人は王子のキスで目覚めるもんじゃぁぁ!!さ、美神さん!俺の熱い口びるをーーーっ・・・!!」



ズシャアアアアアアアアアアアアア!!!

派手にコケるおキヌ、しかしすぐに持ち直し叫んだ!

「横島さ──────ん!!!真面目にやって下さい!!」
「わ、わかったから!!そ、その手の『携帯用シメサバ丸』をしまってくれええぇぇぇっ!!!!!(大汗)」

怒りで震える手に握られた冷たい刃に戦慄が走る横島だった・・・・・・・・・・









3時間後

白井総合病院・・・・

レントンゲン、CTスキャンなど検査の結果美神は軽い脳震盪と打撲のみで命に別状はないとのこと。
意識は戻らないので取り合えず、様子見で入院ということになった。

白いベッドの上で静かな寝息を立てる美神。
それを取り込むように横島、おキヌ、
そして別の依頼を美神から任されいたシロ、タマモの4人が心配そうに美神を見つめていた。

「美神さん・・・・・・・・・大丈夫ですよね?」
「当たり前だろ?・・・・・・・殺しても死なない美神さんがこのくらいでまいるわけないって」
「拙者も付いていくべきでござったな」
「油揚げあれば付いて行ったのに・・・」

それぞれを励ますように、言葉を掛け合う4人。
だが、その言葉とは裏腹にどこか沈んだ表情のままだった・・・・そして

「・・・・う・・・・う〜ん・・・・」

小さな声と共に美神の目蓋が薄っすらと開いていく・・・・

「美神さん!!」

おキヌが全員を代表するように眠り姫の名を叫んだ。
その瞳には少しだけ涙がにじんでいる。

「ほら見ろ!だから言ったろ?心配ねぇって」

「そんなこと言って先生が一番が動揺してたでござる」

「うんうん」

おキヌは年下の二人にからかわれる横島に少し微笑みをみせながら、
上体を起こそうとする美神の背中を支えた。

「大丈夫ですか、美神さん?・・・・・・・・・凄く心配したんですからね!」

「・・・・・・・・・」

普段より少し強い口調のおキヌ。
だが、美神はその声にあまり反応を見せない

「あ、あの・・・・・・・・・美神さん?」

少しとまどいながら、おキヌが心配そうに美神を覗き込む。
そのことに気付いたのか、横島達も二人注目した・・・・
そして美神の唇がゆっくりと動く・・・・・・・・・・・

「あ・・・」

美神の第一声にみんなが注目する。そして・・・









































「あなた達・・・誰?」










「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」」」」

美神の一言に少し間が空きながらも同時にマヌケな声を出す4人。
だが、畳み掛けるように美神は衝撃の言葉を発した・・・

「私は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰?」

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」」

お約束のセリフにただただ呆然とするしかない4人だった・・・・・・












ロストメモリー(中編)に続く

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