あなたのためにできること
投稿者名:Maria's Crisis
投稿日時:(02/12/12)
シロや、元気にしてますか?
お母さんはもうこの世にはいませんけど、あなたのことをちゃんと見守ってますよ。
お母さん、あなたが生まれた日のこと、あなたという素晴らしい宝物を授かった日のことを、今でも昨日のことのように覚えています。
あなたが生まれたのはね、東の空から太陽が顔を出し始めたころでした。
あなたの産声を聞いたとき、ちょうど窓から陽射しが差し込んできたの・・・。
その陽射しが初めて見るあなたの顔を、まぶしく輝やかせてくれたのよ・・・。
「天からの授かりもの」って実感できた、とても神秘的な瞬間でした。
あなたの泣き声、すごく大きくてね。長老もお母さんも、みんなみんな驚いていました。
あの「狼王」が生まれたときも、とても大きな産声をあげていた、という言い伝えがあるそうなんですよ。
だから、長老が「この子はきっと狼王のような立派な武士になるぞ!」って大喜びで・・・。
お父様も、他のみんなも、それを聞いて一緒になって喜んでくれたんです。
そこで、お母さん、困ってしまいました・・・。
そんな大盛り上がりの中、「実は、この子・・・、女の子なんです・・・」なんて、言いづらいでしょ?
打ち明けるまでに、お母さん・・・、一週間もかかっちゃった・・・。しくしく・・・。
「シロ」という名前はね、あなたが生まれたそんなときに長老が付けてくださった名前なの。とても素敵な名前でしょ?
お父様も、お母さんも、すごく気に入ってます。
その名前にどういう意味があるのかは・・・、お母さんには分かりません・・・。
・・・あとで長老に聞いてちょうだいね?
でもね・・・、お母さん、本当は・・・。
「エリザベス」っていう名前にしたかったのよねえ・・・。
だけど、とてもそんなこと言い出せる雰囲気じゃなくて・・・。
でも、「エリザベス」の方がよかったかしら・・・?
シロや、女の子らしくしていますか?
お母さんはもうこの世にはいませんけど、あなたのことをちゃんと見守ってますよ。
武士の娘は、殿方の三歩後ろを歩くものなんです。
しおらしく、手を前に添えて・・・。
それなのに・・・。
殿方を無理矢理ひっぱって、何十キロも爆走するとは何事ですか!?
お母さん、本当に情けなくて・・・。しくしく・・・。
それと、お食事の時・・・。
口の中に、物を入れたまま話すのは止めなさい・・・。
そういうところばかり、お父様に似てしまったのね・・・。
お父様もね、若い頃はそうだったの。
お食事中、修行のお話になると興奮してしまって・・・。
でもね、お母さん、にこにことお話を聞いてるように振舞ってたのよ。
内心は、相当腹を立ててたんだけど・・・。
武士の妻というのも、なかなかストレスが溜まるものなのよ、しくしく・・・。
お食事ついでに、朝食のことも・・・。
お母さん、あなたにお料理は教えてあげられなかったけど・・・。
さすがに、朝から肉料理のフルコースは出さなかったでしょ、お母さん?
それくらいは覚えていてちょうだい・・・、お願いだから・・・。
「シロん家って、毎朝こうだったのか」って言われてるのかと思うと・・・、お母さん、情けなくて・・・。しくしく・・・。
こうやって考えてみると、お母さん・・・、責任を感じてしまいます。
幼いあなたを残して、この世を去ってしまったこと・・・。
「美人薄命」って言葉があるけど、まったくその通りね・・・。
ごめんなさいね、お母さん美人で・・・、しくしく・・・。
だから、あなたに女の子らしいことを、あまり教えてあげられませんでした・・・。
お父様が男手一つで、育ててくださったんですもの。
お父様と一緒に過ごした時間の方が長かったんですもの。
お父様のような立派な武士に憧れて、多少おてんばに育ってしまったのは当然のことなんでしょうね。
でもね、やっぱり、元気なあなたの姿を見ていられるのが、お母さんはとてもうれしいです。
明るく、素直で、みんなからも好かれているあなたを、お母さんは誇りに思っています。
それに、少しは女の子らしくなってきましたよ。
恋をしてるのね?
何も言わなくても、お母さんには分かります。
母親は娘のことなら、なんでも分かるものなんです。
相手の方も、もちろん知ってますよ。
とても素敵な男の子ね。
怒った顔なんかが、お父様そっくりで・・・。
やっぱりお母さんの娘なのね・・・、そういう趣味もそっくりだわ・・・。
そうと決まったら、もう、とにかくプッシュよ、プッシュ、プッシュ。
いい?人狼は狙った獲物は絶対に逃がしてはいけないのよ?
いざとなったら、既成事実を作り上げてしまいなさい・・・。
あの子はきっと、押しに弱いタイプのはずよ。
大丈夫、お母さんの経験からなす業よ、信じなさい・・・。
シロや、元気にしてますか?
お母さんはもうこの世にはいませんけど、あなたのことをちゃんと見守ってますよ。
たまに、とてもさびしそうな顔をしてますね?
街で母親に甘える子供を見ると、すぐにうつむくでしょ?
あなたはお母さんを遠くに感じてしまってるかもしれません・・・。
でも、本当はいつも、とても近くに居るんですよ。
だから、どんなにつらくても、悲しくても、苦しくても、お母さんが側にいると思って、うつむかないでね。
あなたはお父様とお母さんの娘です。きっと、それくらいできるはずです。
お母さんはもうこの世にはいませんけど、あなたのことをちゃんと見守ってますよ。
あなたが笑ってるときは、お母さんもうれしくて一緒に笑います。
あなたが泣いてるときは、お母さんも悲しくて一緒に泣いてしまいます。
あなたと、喜怒哀楽を共にし・・・。
あなたを支え続けてあげます。
お母さんはもうこの世にはいませんけど、不幸だなんて思ってません。悲しいだなんて思ってません。
こうして、娘の幸せを側で願い続けていられるんですから・・・。
あなたの側で、ずっと見守っていてあげられるんですから・・・。
それが、お母さんの・・・、こんなお母さんのただ一つの・・・、
――――あなたのためにできること。
でも、もし、一つわがままが許されるなら――――
あの日、朝の陽射しの中で、初めてあなたと出会えたときのように・・・
『もう一度、母親として・・・、あなたを抱きしめてあげたい・・・』
完
今までの
コメント:
- 十回目の投稿です。
記念すべき十回目ということで、私にしては珍しくコミカルなお話に挑戦してみました。
でも、最後はやはり、少ししんみりと・・・。
シロのお母さんって、書いていらっしゃる方がなかったので、オリジナルに行ってみました。
私は母親ではないので、色々と難しかったですが、なんとかなりきって書いてみました。
でも、ちょっと壊れちゃってますか・・・?(^^; (マリクラ)
- 心に染みるお話・・・、感動しました。壊れてません!!シロが大人になったとき、こんなお母さんになるのかなぁ、と。かなり天然が入ってそうな、でも、すごく優しいお母さんに。
既成事実やらきな臭い部分もありつつも、最後にきっちりと慈愛に満ちた言葉が入っていて、素直に感動できました。 (veld)
- いい話ですね〜〜〜〜「ごめんなさいね、お母さん美人で・・・、しくしく・・」と「とにかくプッシュよ、プッシュ、プッシュ。」は笑えましたが^^ (謎の人・・ふふっ)
- かなり来ました(笑)。ツボです、ど真ん中(笑)。
この…なんて言うんでしょう、雰囲気が。ああ、面白い(笑)。 (りおん)
- はじめはほんとに、あのマリクラさんなのか?と思ってしまいました(爆)
おかーさん、いい性格してます。おとーちゃんの性格も知りたくなりました(笑)
コミカルとシリアスのバランスが抜群で、最高でした。 (矢塚)
- 私の記憶する限りでもシロのお母さんが登場した話って殆ど無い気がします。「親の苦労子知らず」と言う感じに気苦労が絶えないらしい冥界に居るシロのお母さんですが、そんな苦労してる素振りを見せながらどことなく成長した我が子のことを嬉しく思っている(らしい)お母さんの様子が良かったです。上で4人の方が仰るようにお母さんが危険思想を口にしたり、と言ったギャグ面も十分に笑えました。周りを気にしてるんだか気にしてないんだか判然としないあたりがシロの家系の人「らしい」ですね(笑)。シロが既成事実を作ってくれることを願いながら、賛成票1票です(おい)。投稿お疲れ様です♪ (kitchensink)
- このお母さん最高!(笑)
シロの母親って大和撫子のようで実はオチャメさんだったのか・・・(笑)
>既成事実を作り上げてしまいなさい・・・
あなたのお子さん・・・
「体は女子中高生くらいでも、実年齢は小学生ですよ!!!?(爆)」
と、思ったのはボクだけでしょうか・・・・・(笑) (ユタ)
- お茶目で素敵なお母様ですね(笑)。
お母様の魅力にとろりと包まれて、もう何もいえません(クラッ!……パタリ……) (アフロマシーン改)
- veldさんへ:コメントありがとうございます!「感動しました」って言ってもらえてうれしいです♪母親になったシロのお話は志狗さんが書かれてますが、私のとはちょっと違っちゃってますね(^^;
謎の人さんへ:笑っていただけてうれしいです♪コメントありがとうございました〜!
りおんさんへ:いつもいつもありがとうございます!琴線ではなく、今回はツボに来ましたか〜(^^
矢塚さんへ:こういうのは某妄想ショーか、どなたかに原作提供するので普段は書かないんですよねえ(笑)まあ、今回はたまたまです(^^ (マリクラ)
- キッチンシンクさんへ:お母さんは娘の成長を嬉しく思っているんですよ〜(笑)既成事実については、「漢字二文字」の有名な兄弟がここにいらっしゃいますので、そちらにお任せしましょう!(笑)
ユタさんへ:お茶目さんについては、私のただの想像にすぎませんから(^^;それと、ええ・・・、そういえば、実年齢は小学生でしたね(汗)気づいたのは、ユタさん・・・だけ・・・?(謎)
アフロさんへ:少々アフロさんっぽい(?)所もありましたが、楽しんでいただけたようで、光栄です(^^とろりと包まれて、というのは、また微妙な表現ですね(笑) (マリクラ)
- 感動を誘うような題材のはずなのに、やけに笑いの比率が高かった気がします。とても面白かったです。では。 (紫)
- ギャグとシリアスが見事に融和していて、笑いながらもちょっとホロリと来る作品でした。
いかにもシロの血筋だと思えるような(思考手順が逆!?)、母上殿のマイペースな雰囲気が非常に魅力的です。
原作の一場面を思わせるようなフレーズも、たくさん散りばめられていて、それがまた説得力や楽しさを倍増させていたように思います。
ともかく、至高の一作でした。
……でも、シロの名前が「エリザベス」にならなくて好かった(爆) (斑駒)
- 紫さんへ:ルシオラ日記、ひそかに楽しませてもらってます♪やはり、比率が高すぎましたか・・・。本当はシリアスの方へもって行きたかったのですが、みなさまのコメントを拝読すると、コミカルな方が先行してしまったようですねえ(汗)コメントありがとうございました〜♪
斑駒さんへ:斑駒さんに賛成票をいただけるなんて、感激の極みでございます・・・(感涙)ギャグとシリアスを混ぜるというのも、なかなかむずかしいものですね(苦笑)「エリザベス」については、他にも色々と候補が・・・。例えば、「カトリーヌ」とか「イザベラ」、「キャサリン」等々・・・。 (マリクラ)
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa