ザ・グレート・展開予測ショー

たった一行で消え去る場所


投稿者名:veld
投稿日時:(02/12/ 6)

 独立の意志を捨てること、割り切ることができるかといえば嘘になる。ただ、このままってのが一番良いんだって、そう思ってる自分がいることも否めない。そう、焦ることは無いって、この場所を壊すことは無いんだって、ずっと思ってた。
 俺は自分の生涯の何パーセントをこの場所で過ごすんだろう?きっと、今よりもその比率は大きくなってゆく。季節が巡るごとに感じる、確固とした自分の居場所が今の俺には心地良い。
 この場所は、俺だけのものなんだ。
 いつも一緒にいられる、みんなと一緒にいられる、誰にも譲れない大切な場所。ただ、ここにずっといたい。そう思えなくなってきたのはいつ頃からだろう?俺がここにいることが、いつのまにか俺の中で不自然に感じられるようになったのはいつからだったろう?何が悪いと言うわけではない。ここにいたい、その気持ちは本当なのにずっと、と言うわけではなくなってきているのを感じる。ここ最近感じ始めた違和感も、それに拍車をかけている。何かが違う、何かが。


 白い吐息が、風に舞う季節、別れは必ずしも悲しいことではないけれど、俺はきっといつかここから離れる日が来る。その日になれば、みんなはどう思うだろう?祝福してくれる?それとも・・・。
 感じられる肌を差すような寒気。濁った空にもかかわらず澄んだ空気。呼吸をするたびにひりつく咽喉。乾いた唇が酷く痛む。無理に作ろうとする笑みも、凍える寒さに凍りつく。気のせいか風はいつもよりも冷たく感じられた。
 外から入ってきたせいか、室内の暖房が効きすぎではないか、というくらいに暑く感じる。着ていたジャンバーを脱ぎ、階段を上る。そして、部屋に入ってきてから告げられた一言。

 「あんた、クビ」

 雇用主からの冷たい宣告。考えていたことが霧散してゆく、その宣告以上に冷たい事務所のみんなの視線が痛い。それでも、それでも・・・。

 「仕方ないやん!!あのネーちゃん滅茶苦茶美人やったんが悪いんやーーーー!!」

 こんなにあっさりぶっ壊れるような場所だったのかぁ!!俺の築き上げてきたものはぁ!!


 その翌日から、嫌味を言いに連日尋ねてくる雇用主以外の事務所の面々に、独立の話を持ちかけられた時、あっさりとその話に乗ってしまったことを追記しておく。

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