ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−14


投稿者名:NAVA
投稿日時:(02/12/ 4)





 「私らしく、みんなのために頑張ります!」




 最後にはそう言っておキヌは自室に引き下がっていった。

 残された美神としてはらしくない自分にちょっと赤面しつつ、再び横島奪還の検討に入る。

 「はぁ〜。おキヌちゃんにあんなことを言った手前、手詰まりなんて言えないのよね〜」

 つくづく頭が痛い事態だ。

 ――――こうなったら最後の手段にするか。むう・・・あの人だけは頼りたくないんだけどなぁ。











 六道女学院。

 式神使いとして名高い六道家が運営する女子専用のGS養成学校である。

 おキヌも在学しており、卒業生の質の高さは業界で一定の評価を得ている。

 今、美神はそんな学園の理事長室にいた。。


 「あら〜。そんなことになってたの〜」


 のんびりした口調で応対するは六道女史。

 先代六道家の当主でもある。

 六道家。
 
 数百年以上の歴史を持つ、世界でも有数のGSの名家である。

 GS協会設立にも関与しており、世界各地に分家が存在する。

 美神家もGSとしては名の売れている方だが、歴史の長さ・規模の大きさで言えば六道家の足元にも及ばない。

 GS協会も六道家には特別の配慮をするほどだ。

 「はい。そこで横島君の居場所を探し、必要とあらば助け出すために協力して欲しいな〜なんて」

 それほどの影響力のある六道家に頼るのを美神が渋っていてたのには理由がある。

 「秘密研究所ね〜。全部は知らないけど〜、いくつか知ってるわ〜」

 ビンゴッ!

 「ほら〜。秘密っていうくらいだから〜、結界も厳重で様々なモノに対応出来るように多重結界になってるでしょ〜?」

 のんびりした口調にいらつきながらも、美神は辛抱強く我慢する。

 「当然式神に対する迷彩・防御結界もあって〜、いくつかは六道家に依頼が来てたのよ〜」

 そこで美神が喰らい付く。

 「どこですか?!教えてください!」

 その美神の反応を見て、六道女史がニヤリとする。

 「今〜、うちの学校で優秀な講師を探してるの〜」

 「・・・・・・・・・」

 たら〜りと汗を流し始める美神。

 「令子ちゃんみたいな〜、SランクのGSが〜、臨時で良いから〜、講師してくれたら嬉しいな〜」

 そうだ。この人はこういう人なのだ。

 「私にも仕事があるんですけど?」

 「それに〜、横島君みたいな〜、急激に成長を遂げたGSにも〜、講師して欲しいな〜」

 グッ・・・・笠にかかって要求を増やしやがった!

 「横島君をここに入れたら性犯罪が起きますよ?」

 「そっか〜。後進の新人育成のためですものね〜、さすが令子ちゃんね〜。ボランティアで講師を引き受けてくれるんでしょ〜?」




キレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だキレちゃ駄目だ。。。。。。。。。。




 「・・・・・”横島君を取り戻せたなら”引き受けましょう」

 断腸の思いで決断する美神。

 労働の対価として情報を得るだけだ。決して”無償奉仕”とか、”無料労働”とかではない。

 そう思い込むことで、何とか情報を引き出すだけではなく、それ以上の成果を得ようとする。

 「更にもう1つ。お願いしたいことがあるんです」

 「判ってるわ〜。協会への工作でしょ〜?ついでに他の研究所も探しておくわ〜」

 大事な講師のためですもの〜。そうニッコリと微笑む六道女史を見て、美神はとんでもない人物に借りを作ったことを再認識した。









 「ふ〜ん。『行方不明者横島忠夫に関する調査隊の結成』か・・・」

 美神は神界・魔界の動きを甘く見ていたが、その動きは迅速であった。

 小竜姫達は美神を見送った直後に神界へ働きかけ、神界はそれを承認。

 魔界へ調査隊設置の提案書を送りつけていたのである。

 現在、魔界において横島関連のことは全て魔王リリスが受け持っている。

 当然ながら、調査隊云々の話はリリスの預かるところとなった。

 その背景には要するに、

 『横島関連の陰謀が露呈したらお前のせいじゃ!上手くやれ!』

 という、他の魔王達の心温まる思いやりがあったことは言うまでもない。

 リリスが成功すれば魔王横島という丁稚が誕生するが、失敗すれば神界への人身御供ならぬ魔身御供というわけだ。

 そこに今回の調査隊の一件だ。

 はっきり言えば、リリスは全てを把握している。

 問題は、”どういうタイミングでどれだけの情報を提供するか”だ。

 それに横島を魔族化させることの成否がかかっている。

 「やっぱりワルキューレを使うの一番なんだろうけど・・・思ったほど使い道がないのよね」

 リリスとしては、他の魔王達が自分を矢面に立たせるようにワルキューレを矢面に立てるつもりであった。

 しかしワルキューレは思いの他に交友が深すぎる。

 妙な行動、らしくない行動を取ればすぐに暗示が露見する恐れがある。

 それではフェイクの意味がないのだ。



 ――――フェイクにフェイクを重ねるか。

 横島の交友関係リストで最初に思い浮かぶのはジーク・べスパ・パピリオ。

 どれもワルキューレと大した変わりは無い。

 そこで思い出したのはコスモプロセッサで復活したメドーサの存在だった。
  
 確か彼女は魔竜族の王ティアマトが完全に消滅する前に回収したはずだ。

 考えてみれば、彼女も横島とは因縁浅からずだ。



 ――――この際だから調査隊にワルキューレを入れて、旧アシュタロト派の魔族で盛り上げるか。










 


 「なるほどな。ワルキューレを最後の最後まで使わないつもりか」

 魔王の一人であり、魔竜族の王ティアマトはリリスの意図を正確に把握した。

 「ええ。そしてそれまでは上手く誘導させるだけに留めるわ。最後まで使わない可能性もあるけど」

 魔王と魔王の化かし合い。

 「ふむ・・・。確かにその方が効率も良かろう。横島には自分の意思で絶望的な結果になってもらわねばならぬからな」

 「そういうこと。ワルキューレが信頼を失うような事態を避ける。疑いの目を逸らす。そのためにメドーサが欲しいの」

 「メドーサだけではあるまい?」

 2人の魔王は同時にニヤリとする。

 「そ。デミアンにベルゼブル。この二体も囮に使うわ」

 「良かろう。面倒事を避けるために魂の記憶もリセットするつもりだったが、そのままにしておこう」

 「ちゃ〜んと私の命令を聞ける程度には復元しておいてね」





 こうして一人。






 「ほんとだな?!ほんとに恩赦してくれるんだな?!」

 「心外ね?魔王たる私が嘘を吐くとでも?」

 魔界の辺境に位置する牢獄。

 ここには魔界の法に照らし合わせた罪人達が収容されている。

 妙神山の前で敗れたデミアンは力の大半を失う結果となった。

 それを癒している間に捕縛されたため、まともに抵抗出来ずにそこへ収用と相成った。

 罪状はデタントの妨害である。

 「ふん・・・了解した。横島を殺さずに苦しめれば良いんだな?」





 こうして一人。





 「魔界に戻っても良いって言うのか?!」

 「ええ。貴方もかつては私達と同じ魔王の位まで上り詰めた悪魔でしょ?」

 ベルゼブルは悔しそうな表情を浮かべる。

 かつてその地位にあった彼を資格無しと断じて降格したのは目の前のリリス、つまり今の魔王達であった。

 彼がアシュタロスに与したのも、新たな秩序の元、魔王の地位を約束されたからである。

 「今、アシュタロスの席が空位なの。代わりを我々は求めてるのよ」

 「お、俺がまた魔王に?!」

 「そのための試験だと思ってちょうだい?使えない奴を魔王にするわけにはいかないでしょ?」

 「殺さずに魔族化させるか・・・殺せないのは気に食わんが引き受けよう」








 こうして捨て駒がリリスの元に集められることとなる。







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