でこぼこ。
投稿者名:hazuki
投稿日時:(02/12/ 2)
失った悲しみと、得た幸せ、それは、較べる事などできる訳もないけれども。
ぐっと、心臓のある部分を服の上から、触れる。
聞こえるのは、規則正しい心音。
生きている、音。
誰よりも大切なやつを、失い。
それでも、生きている。
彼女は、自分のために全てを棄てたのに。
それを迎え入れる事になった、自分は何も棄てる事のないまま。
そして、今彼女の全てを犠牲にして、なんにもなかったかのように生きている。
たとえ、それが彼女が望んだものだとしても。
周りは、全て自分がかわいそうだという。
そんなことないのに。
『かわいそう』ではないのだ。
『ふがいない』のだ。
ほれた女に全部棄てさせて、創造主も、妹たちも─仲間も
なんでもないことのように、笑って傍にいた。
どんな、思いで裏切ったのかも知らずに。
きっと、生まれていや、作られて間もない彼女はそれらが全てだったはずなのに、
今まで、短い、けれど全てを共有してきた仲間。
それを棄てさせたのだ。
選んだのは彼女だけれども
それを選ぶのが、どんなに苦しかったのだろう?
きっと彼女は、その力と裏腹に、優しいからとても辛かったのだろう。
創造主のためと、頑張っていた。
一年しか生きられないの
と笑っていた。
寿命のことを調べられる時もし、一年しか生きられないとしても、自分の傍にいたいといっていた。
「だって、ヨコシマは初めてワタシが選んだひとなのだもの」
と言って。
たったひとつ、全てを引き換えにして選ばれた自分。
ただ傍に、近くに、いたいというためだけに
時々、泣いていたのを知っている。
じっと暗闇を見つめ、涙を流し
それでも、目を瞑ろうとはしない。
自分が何を引き換えにしたのかわかっているといわんばかりのその横顔。
そして、それでも自分を選んだ、彼女。
選ばれた、自分。
そうして得た時間は、とても短いもので。
彼女は一年どころか、半年も自分の傍にはいなかった。
けれど笑っていたのだ。
最期、消える寸前あの東京タワーで
その笑顔を自分はちゃんと覚えている。
柔らかい、暖かい笑顔を、覚えている。
幸せだった時間を、言葉を、こころを、覚えている。
全てを棄てて自分の傍にいた時間。
幸せだとは胸を張っていえないだろう
けれど、暖かい時間。
もう、彼女はいない。
ぽっかりと胸に穴があいたような感覚に襲われる。
それと、同時に確かに、彼女は『いたんだ』という記憶。
あたたかい、記憶。
彼女がいた、幸せなこころと彼女を失った痛み。
でこぼこな、ものをかかえて、それでも、前を向いていきるのだ。
いつか、
出会える日のために。
おわり
今までの
コメント:
- 志狗さんに捧げさせていただきます♪
…て、すいません本当になんにも考えてないのでこんなんしかかけてません(自爆)
…見捨てられてしまうなこれは(汗 (hazuki)
- 誰が見捨てるものですかっ!
誰にも存在するであろう『でこぼこ』
人よりもちょっと急で、大きな『でこぼこ』ができてしまった横島。
そしてそれを認め、抱えて、進んでいこうとする姿にしみじみと感激させて頂きました。
本当に、このような素晴らしい作品を捧げて頂き光栄です。
なんにも考えずにこれが書ける・・・・・・いや、もう「さすが」としか言えません。 (志狗)
- 横島・・・頑張ってくれ、の一言です。
hazukiさん、投稿お疲れさまでした。 (NGK)
- あああ〜〜胸がいっぱいいっぱいだよう・・・泣きそうだよう・・・あうあう。 (紫)
- ルシオラらは創造主のアシュにより作戦遂行に必要な知識と、思考能力などを併せ持って生まれてきては居ますが、共通して何かを成そうとする時に見せる純真な心だけはどうにも都合の良いように加工出来なかったみたいですね。その純真さがアシュの目的を果たすために最初は役立ち、次いで横島クンを想い、そして彼を守ることに「役立った」と言えるのかもしれません。その純真な心を逆に守れなかった横島クンにとってはカナリ辛い体験だったと言うのが今回の作品から伝わってきました。うぅ、私も紫さん同様に泣きそうです...(爆)。投稿お疲れ様です♪ (kitchensink)
- hazukiさん、お久しぶりです。hazukiさんの作品はいつも素晴らしいものばかりですね〜。横島の思いがすごく分かります。もう涙が出そうです。これからも頑張ってください!!応援してます! (ハッカ)
- お願いですから、むやみやたらとルシオラさんと横島君を泣かせるのは止めましょうよ?
哀れでなりません。 ( 狐の尾)
- 狐の尾さん、はじめまして、ハッカと申します。さっそくなんですが、hazukiさんは何となくですけど横島君の決意をこの展開で表してるんではないのでしょうか?とは私には思いますけど・・・・・ (ハッカ)
- 申し訳ありません。 何と言いますか、悪い意味はないんです。 ただ、もうルシオラさんはイコール涙というセオリーが多すぎる気がしてしまい、それがちょっとかわいそうで・・・ hazuki様におかれましては、どうか無礼をお許しください。 ( 狐の尾)
- 志狗さんに捧げる・・・、とは何があったのかは存じませんが、私のようなものでも、十分楽しまさせて頂きました♪
そうですよねえ・・・、ルシオラは最後、笑って消えちゃったんですよねえ・・・。
あの笑顔にどういった思いがあったかは、色々論題になるところと思いますが、
少なくとも後悔はしてないのでしょうねえ・・・。
そして、そのことも横島クンは重々承知なのでしょう。
そういった点が、よく描かれていた作品だったと思います!
次回作もがんばってください! (マリクラ)
- 自分自信を、生きている事そのものを、世界中の全てを呪いたくなるような絶望と後悔と云うものは、確かに存在します。
しかし同時に、そんな自分をかつて愛してくれた人が居たのなら、そして今でも居るのなら、それは絶対に許されない事でもあります。
それだけ愛されると云う事―――慈しまれると云う事は、重い事なのだと思います。
絶望も諦観も自暴自棄も許されないのなら、例え恥知らずと言われても、薄情者と誹られても、もう笑って立ちあがるしかないんだよ、横島…。 (黒犬)
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