魔人Y−12
投稿者名:NAVA
投稿日時:(02/12/ 2)
『面白いことになって来た』
それが夜魔の女王リリスの感想だった。
横島の魔族化を任せられた彼女は、当然、横島及びその周辺の観察を続けていた。
横島が軟禁状態にあったのは、GS協会からの報告で知っていた。
その所在地も、軟禁目的も、横島の現状全てである。
GS協会とリリスが繋がっているわけではない。
協会の大幹部の一人を下僕にしているだけだ。
ただし、ワルキューレのように術を使ったわけではない。
元々、リリスは女性にしか魅了術(テンプテーション)を使わない。
男を口先と自分の魅力だけで口説き落とすの好きなのだ。
それこそ夜魔の女王たる自分に相応しい手段だとも思っている。
『魔族だろうが人間だろうが、術を使わねば異性を落とせぬような小物とは違う』
それが彼女の矜持だった。
「なるほどね・・・。外的要因ではなく内的要因か。意外だったわね。ルシオラ本人が自分で復活しようとするなんて・・・」
そこまで横島を想っているのか。或いは自分自身のためなのか。
どちらにせよ、ルシオラは魔王の一人を驚き、呆れさせるという、快挙を成し遂げたのであった。
「で・・・16人に増えてどうするつもりなのかしら?魂の分割はルシオラとしての個性を失わせるはずだけど」
――――ま、どうでも良いか。
そう結論付けて、この状況を最大限に利用するため、この先に取るべき行動を検討するリリスであった。
横島が殺される可能性がある。
そう美智恵に告げられたおキヌ達。
「み、美神さんはそれを・・・?」
おキヌが青ざめながらも問いただす。
「予想はしてるんじゃない?そうでもなければ協会に喧嘩を売ろうなんてする娘じゃないもの」
その通りだった。
美神は公権力の恐ろしさを熟知している。
美神の愛読書はお金稼ぎと法の抜け穴に関するモノばかりだ。
当然、その抜け穴は公権力を行使する側も使用したりする。
その逃げ道を塞いで金を踏んだくったりするのも、美神の娯楽の1つである。
その美神が喧嘩を始めるために、普段では考えられないほどの準備に奔走している。
つまり、それだけの大事だと言うことだ。
横島を取り戻すということは。
本来、おキヌ達にこのことを話すのは美神の仕事だったわけだが、自爆してしまった美智恵。
それを方向転換して、彼女達を叱咤激励しようとしただけ・・・のように見せかけることにした。
「で・・・貴女達は何をしてるの?」
美智恵は冷酷に突き放す。
「何を・・・って・・・」
「令子が横島君を取り戻すために動いてる時に、貴女達は何をしてるの?」
皆、一様に視線を落とす。
「私達の出来ることなんて・・・」
フーッ
眉間に手をやりつつため息をつく美智恵。
「考えてもみなさい。あの令子よ?横島君に危害を加えられてたとしたら・・・。その研究所を無事で済ますと思う?」
顔を見合わせるおキヌ、シロ、タマモ。
美神暴走するの図を想像する3人。
――――リアリティがあり過ぎる。
たら〜りと嫌な汗を流す3人+1人。
――――勢いで言っちゃったけど本気でやりそうね。あの娘は。
ハッ、違う違う。今はそんな場合じゃあない。
気合を入れ直す美智恵。
「横島君に何かあったとしたら、貴女達は笑って『はい、そうですか』って流すつもり?」
「そ、そんな不吉なこと言わないで下さい!!!」
「じゃあ、言い換えるわ。話し合いだけで横島君を助け出せない場合はどうするつもり?」
直情径行気味のシロが即座に答える。
「そうなったら力ずくでも取り返すでござる!!!!」
おキヌもタマモも否定しない。
「はっきり言って神界を味方に付けたとしても、協会がすんなり認めるはずがありません」
――――それどころか、神界が味方になってくれるかどうかも怪しいけどね。
胸の内のつぶやきを押し隠しつつ、美智恵は叱咤する。
「力ずく・・・そう言ったわね?今の貴女達にどれだけの力があるっていうの?」
「あっ、アタシ達を馬鹿にしてるの?!」
「相手はGS協会よ?世界中のGSを総動員だって出来るのよ?彼らは妖狐や人狼を倒すのにためらいなどないわ」
馬鹿にされたと思い、激昂するタマモに冷静に事実だけを告げる。
「じゃあ、どうしろって言うんですか!」
そこでグッっと拳を握り締めてかざす美智恵。
「強くなりなさい。横島君の力になるために!」
「そして戦いなさい!横島君を守り、そばに居続けるために!これは・・・女の戦いよ!」
美智恵は論点をずらしつつ、問題を敢えて矮小化してみせた。
――――彼女達はまだ若い。裏の・・・汚い裏の人間の戦いは私が引き受けましょう。
美智恵は内心で呟き、俄然、やる気を見せ始めた3人を満足気に見つめつつ苦笑する。
――――令子もこれくらい素直だったらねぇ。ひのめに期待するにはちょ〜っと早いし。
「令子どうせやるなら・・・セ・ラ・ゲール(戦争)よ!」
それを聞いて強く頷く3人。
GS協会との闘争を喧嘩と位置付けたのは令子。
自分の自爆を隠すために戦争へ格上げしたのは美智恵。
娘が母を超える日はまだ遠い。
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ちなみに私、専門はドイツ語です。
フランス語使ってみましたけど・・・間違ってたらごめんなさい(ぉ
ドイツ語だと格好がつかないんですよ。
今までの
コメント:
- 英語の「ウォア」(War=戦争)も日本語の響きからすると微妙ですしね(笑)。己の非を最小に抑えつつ、話を逸らした美智恵ママの様子が可笑しかったです;それでも面倒なこと、一般に「貧乏クジ」と呼ばれることでも目的達成のためには躊躇わずに受けようとするあたりがいかにも彼女「らしい」です。ちゃっかり口車に乗せられてやる気が湧いている美神除霊事務所のメンバーも「らしい」ですが(笑)。これで令子だけでなく、おキヌちゃんたちも完全にGS協会を相手に回した「戦争」に参加することになったワケですが、今後彼女らはどんな行動に出るのでしょうか? そしてリリスの動向も気にかかるところですね;次回も楽しみにしております♪ (kitchensink)
- GS協会に喧嘩を売ろうと云う美神達よりも、アシュタロス撃退メンバーズに唾を吐こうとする協会の方が、えぇ度胸していると思います(笑) 正気か、キミ達(笑)
しかし、16匹ルシオラ大行進………GS美神が始まって以来、初の偉業かも知れませんね、色々な意味で。 (黒犬)
- ・・・・・・・・・・何か、このメンバーだと本当にGS協会と戦っても勝てそうですね(笑)
本編も、もちろん面白いんですが・・・・
>16匹ルシオラ大行進………
黒犬さんのコメントに吹き出しました(笑)
NAVAさん、次回更新待ってます! (ユタ)
- コメント、どうもありがとうございます。
>kitchensinkさま
ドイツ語だと戦争は「ヴェルト」なんですよ。微妙です。
おキヌちゃん達はやっぱり実戦に入るまで役立たずなんですよねー。
どうやっても。困った困った(笑
>黒犬さま
・・・101匹の方が良かったでしょうか?(ぉ<大行進
ルシオラ複数パターンの著作権取れるでしょうか?ワタシ(笑
>ユタさま
協会も後ろ暗いところがありますので、表立ってこの面子には喧嘩売れないんですよ。
そんなわけで、この面子でも本気で勝てる要素はあります。 (NAVA)
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