ザ・グレート・展開予測ショー

遊びの時間は永遠に!(後編)


投稿者名:矢塚
投稿日時:(02/11/30)

この展開は前作『遊びの時間は永遠に!』の後編です。

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 体は一つしかないのに、必要以上に自分の墓穴を掘るのが好きな横島忠夫により、

勝負は野球拳となった。自業自得が、横島の座右の銘なのだろうか?

 野球拳のルールは簡単。ジャンケンして負けた方が一枚服を脱ぎ、全裸にされた方が

いろんな意味で負け犬になるというもの。今回の鬼との勝負は、双方上着、ズボン、

パンツもしくはふんどしの三枚とされた。ちなみに、往生際の悪い横島に対して

服は自動的に脱がされる。

 興奮冷めやらぬ会場に、鬼たちの合唱が満ちる。

「やーああきゅううー、すーうるならっ、

こーゆー具合にしあしゃんせっ!」(観衆の鬼全員)

「あうとっ?」(司会の次男)

「せーふっ?」(同じく三男)

「よよいのよいっ!」(美神、おキヌ以外全員で)

 掛け声と共に、『勝負の鬼』長男と横島の型が繰り出される。

 横島はパー、長男はチョキ。一回目は横島の負け。

「だああ、やっちまったーっ!!」

 横島の叫びが、響く。

 そして、一枚服が脱がされていくはずなのだが、何も起きない。

「あれ?故障か?ラッキーな事故か?」

 言う横島の前を突如、白いものがひらりと天使の羽のように舞い降りた。

 横島のゴムがゆるゆるのブリーフ。それを見た横島、美神、おキヌが叫ぶ。

「「「なっ、何故にっ?」」」

「あー、言い忘れとったが、服はランダムに選択され脱がされっからな。」

 流石に『勝負の鬼』だけあって、心憎い演出もお手のものだ。

 横島、美神、おキヌは絶句する。それではもし、次に負けて脱がされるのが

Gパンであったなら・・・そう、上着だけ着た立派な変質者の一丁上がりである。

 それでは、その後勝負自体には勝っても、人生では負け犬になってしまう。

「あ、ああ、あううう。」

 とんでもない緊張感が、横島、美神、おキヌを襲う。

「ま、負けたらアカン!負けたらアカン・・・もし、最悪そうなっては、美神さんは

ともかくおキヌちゃんにまで俺の全てを見られてしまう・・・」

 ぶつぶつ呟く横島。ちらりと、審査員席の方を見る。

 美神は赤面し、そっぽを向いていた。おキヌの方も赤面し、膝に手を乗せ

俯いていた。やはり年頃の女性である。

 しかし、二人ともちらっちらっと横島を盗み見る。横島には、その視線が

自分のズボンに注がれているように感じる。

 あまりの状況に横島の精神は興奮状態になり、脳内麻薬が垂れ流し

で分泌される。結果、本能の塊と化した。

「美神さんやおキヌちゃんに俺の全てが見られる?見られる?

見られちゃうのか?この俺が?あんな美人とかわいい子に?

 しかし、見せたら二人はどんなリアクションをとるんだ?恥ずかしがるのか?

恥ずかしい思いを俺が与えるのか?与える?お、俺は・・・」

 本能が働いた分、煩悩も顔を出す。歩く煩悩大百科の横島だけあり、

サドッ気もマゾっ気も両方持ち合わせていた。

 横島の脳内で、最後の理性とサドっ気マゾっ気が三つ巴を繰り広げる。

 横島の興奮状態を、勝負への意気込みと誤解した鬼たちが掛け声を

唱和する。

「・・・あうと?せーふ?よよいのよい!」

 掛け声と共に、本能の赴くまま型を出す。

 パーとパー、引き分けだ。

「くうっ!やるなお前!裏の裏のそのまた裏をかくとは!」

 悦に浸る長男。全身に緊張感がはしり、なんとも心地よさそうだ。

 横島の方はもう、精神が崩壊する寸前まで追い込まれていた。

瞳孔は小さくなり、呼吸が速い。意識が無限に広がり消え去りそうだ。

細いガラスの糸の上で、綱渡りをするような感覚。落ちればまさに地獄。

 異常な精神状態の中、両者の間に言い知れぬ意識の共有が生まれた。

互いの意志が手に取るようにわかる。

 二人の感覚が一つになり、観衆さえも押し黙る。

 静寂だけが支配する空間に、どちらが口火を切ったのか、二人の

掛け声が聖句のように流れ出す。

「・・やああきゅううー・・・すーうるならー・・・こーゆーぐあいに

しやしゃんせ・・・」

 観衆たちの胃が痛むほどの、力がこもった静かな掛け声。

「・・・あうと?・・・せーふ?・・・」

 二人は、静かに唱えつつ、そのときを待つ。

「・・・よよいのーっ・・・よいっ!!」

 渾身の型が、二人から繰り出される。

 瞬間、二人の時間は停滞した。

 横島の研ぎ澄まされた眼が、長男の手を捉える(0.1秒)

 その手は、しっかり握りこまれている(0.2秒)

 それを迎撃する為、手をパーに(0.3秒)

 長男は、それを確認し人差し指と親指を開き旧い型のチョキへ(0.4秒)

 フェイクと知り横島の顔が歪む(0.5秒) 

 長男の笑い(0.6秒)

 横島の頭を、今後の負け犬人生がよぎる(0.7秒)

 結局理性が勝ち、渾身の力を込め開いた手をグーにする。

血管が切れ、筋も痛める横島(0.8秒)

 しかし長男のそれすらも、横島の技量を見込んだフェイクだった。

長男は残りの、中指、薬指、小指を広げてパーに(0.9秒)

 横島の手は限界で動かない。横島グー、長男パー(1秒)

 雌雄は決した。

 二人の間に静寂な空気が一瞬流れる。

 また、横島の負け。

 そして、お約束通りに脱がされたのは、Gパンであった。

「!!!!!!!!!!!」

 声にならない、横島、美神、おキヌの悲鳴が鬼ヶ島に轟いた。

 この日、鬼ヶ島に桃太郎襲撃以来の伝説が刻み込まれた。

 
その後の試合はというと、真っ白に燃え尽きた横島の棄権負けだったそうだ。

 
                       おわり

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