ザ・グレート・展開予測ショー

温かい想い(その19(B))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(02/11/30)










「・・・ってなことがあってさー!もう大変だったんだぜ!」

「くすくす・・・・ヨコシマがそこで頑張らなきゃ・・・・・・!・・・・・・あ、見てヨコシマ」

ルシオラが立ち上がり指差すほうに横島は視線を向ける・・・・・・そこには・・・
大きな、大きな夕陽が美しく全てを紅く照らしていた・・・・

「きれい・・・・・・・・」

ほうと感動の表情を浮かべるルシオラの隣に横島が立ち上がりそっと並んだ・・・そして

「昼と夜の一瞬の隙間・・・・」
「・・・!?」

横島の言葉にルシオラが反応する・・・そしてニッコリと微笑むとルシオラも続けた。

「「短い間しか見れないから・・・・きれい」」

二人は手をつなぎそのまま、しばらく夕陽に見とれていたが・・・・やがて

「クス・・・・・ふふ・・・・・あははははは」
「ぷっ・・・ああははははは!」

二人は見詰め合うと、堰をきったように笑い声をあげた。

「ヨコシマ・・・覚えててくれたんだ・・・」
「当たり前だろ・・・・忘れるわけねーよ・・・」

横島は少し照れたように・・・そっぽ向いた。ルシオラはクスリと笑うとギュっと横島の右腕に抱きついた

「ルシオラ・・!」

横島は少し驚くが、ルシオラは無言で目を瞑り顔上げた・・
ここまで来て横島も鈍くはない・・・目をつむり口唇を近づけた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しかし

「!!」

横島がハっとした表情で目を開け顔を離す・・・・なぜなら

「・・・ルシオラ・・・?」

なぜなら、触れた口唇に温かみがないから・・・いや、触れた感触すら僅(わず)かにしかなかった

「もう・・・時間みたい・・」

ルシオラが悲しみの交じった呟きをもらす。
ルシオラの体が透けている・・・本来見えるはずのないむこうの景色まで横島の視界に入った。

「そんな!文珠はまだ!」

横島の叫びにルシオラが首を横に振った・・・

「私の残留思念のほうが限界なのよ・・・」

「・・・・・・・っ!」

「悲しまないで・・・・・・・私達これでお別れじゃないのよ・・・・・・再会だって約束されてるじゃない・・・」

「そうだけど・・・・!!」

ますます霞んでいくルシオラに悲痛な声で叫ぶ横島

「そろそろ・・・・行くね」

「・・・・・・・・・・・・・・ああ・・・じゃ、じゃあな・・・・・・・」

横島の精一杯の強がりだった・・・・

「もう・・・・」

ルシオラは薄らいでゆく体をそっと横島に預けた

「こういうときはもっと別の言葉があるでしょ・・・・・・・」

横島は少し考える・・・・・・・・そしてルシオラの頭を撫でながら言った

「・・・・・・・・・ルシオラ・・・・またな」
「ええ・・・またね・・ヨコシマ」

いよいよ消えていくルシオラ・・・・・・・・・横島はルシオラを力いっぱい抱きしめる・・・

「ルシオラ!大好きだから!!お前のこと!俺はぁ!俺はっ!!!」

ルシオラの表情が一瞬驚きに変わるが・・・やがて穏やか表情のまま・・・囁いた




        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・・・・・・・・



そっと流れた涙の一滴が大地を潤した・・・それはどちらの流した雫だったのだろうか・・・・・


やがて・・・・・・・・・・・・・横島に包まれたルシオラがまるで無数のホタルの光のようになり天を舞った。
幻想的で美しい命の光の舞いをにじむ視界で横島は見つめ続けた・・・・・・・・・



















横島は歩き続けた・・・・だが、自分が歩いているのかは全然実感がわかない・・・
まるで胸の中にポッカリ穴が入ってしまったような喪失感・・・

パシャ・・・

横島の右足が小さな水溜りに波紋をたてた。
そのまま小さな水鏡に映る自分の顔を見る横島・・・・

(・・こんな顔してたら・・・・)

自分を笑顔で迎えてくれるであろう人達の顔が浮かぶ。

パンパンっと顔を叩くと今度は力強い足取りで歩きだす・・・すると

ガザ

目の前の草むらが揺れる。一瞬何事かと緊張走らせる・・・やがて

「おっそいわよ!」

「美神さん!?」

「そ、その心配で・・・迎えに来ちゃいました・・」

「おキヌちゃん!」

突然の二人の登場に驚きを隠せない横島。
おキヌはそんな横島にオズオズと歩み寄った。

「あ、あの・・・何て言ったらいいか・・・」

「あー!大丈夫!大丈夫!じゃ、さっさと帰りましょう!もう今日はお疲れですから!」

横島はニカっと笑みを浮かべ、おキヌの肩をポンポンと叩くと少し早足で歩き出した。

「待ちなさいよ!」

「え?」

美神の強い語気の声に足を止める横島。

「あんた・・・・私達の前でそんな悲しい笑顔しないでよ!私達だけの前くらい本当の自分を見せなさいよ!!」

「な、何言ってんすか!?ほら。俺はこのとおり全然平気!!」

前に天竜童子に見せた元気の踊り(?)を見せる横島。
だが、逆に美神とおキヌの表情がさらに悲しみの色を濃くする。

「横島さん・・・・・だったら何で泣いてるんですか・・・」

「え・・・・・・」

おキヌに言われて横島は気付いた。自分の視界がボヤけているのことに・・
そのまま不思議そうに袖で涙を拭う。

「あれ・・・?どうしてだろう!・・あれ、あれ・・なんで涙なんか・・・」

美神は静かに横島に近付くと・・・・・・・・・・・・・ギュっと抱きしめた。

「バカ・・・・・あんたの悲しみくらい支えてやるわよ・・・・」

驚きの表情を浮かべる横島・・・普段ならここで飛びついてるところだが、今はそんな気持ちには到底なれなかった・・・

(駄目だよ・・・美神さん・・・そんなことされたら・・・・俺)

唇が振るえ、鼻が詰まる・・・・目がにじみ、肩が震える

「私だって・・・・・・・・・・横島を支えたいですから・・・・」

おキヌも横島の左半身を支えるように抱きしめた・・・・その温もりが横島の体に心に伝わっていく・・・・

・・・・・・・・・・・・・もうダメだった


「・・・うっ・・・ぐす・・・うああ・・・ぐっ・・・・・う
 うあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
 俺はああああ俺はああああ!うううっうええあっうううあああああああああああああああ
 アアアアアアアアアアアああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

二人に抱きしめれた横島の両目から次々と涙が溢れた・・・

ルシオラと再会できた嬉し涙か・・ルシオラを再び失くした・・・悲しみの涙か・・・
横島自身にも分からなかった・・・・・・・・・ただ・・・・ただとめどなく溢れる涙を流すだけだった・・・・
男の涙に、二人の瞳からもそっと涙が流れ、頬を濡らす・・・・・・・・
暗闇包む樹海でいつまでも・・・・・嗚咽いや、慟哭が響き続けた・・・・・・・・・・・




















「ったく二人ともこんなにボロボロなら・・・・無理に迎えこんでも・・・(汗)」

すっかり暗くなった樹海の細道を歩きながら、両肩を美神とおキヌに貸しながら歩く横島が言った。

「わ、私は別にいいって言ったのよ!だけどおキヌちゃんがどうしてもって!」

「え!?私ですか!?・・・言い出したのは美・・・」

「何か言ったかしら、おキヌちゃん」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「い、いえ!(もう・・美神さん素直じゃないなぁ・・・)」

「ま、でも・・・・二人が迎えに来てくれたのは嬉しかったし・・今はこうして両手に花状態ってお得だし」

「ふん!」

おチャラける横島に顔を少し赤らめながら、そっぽを向く美神。
普段なら「調子にのるな」と蹴りが一発入るところだが今回はそれはなかった・・・

(こういうのも・・・・・・・たまには悪くないわね・・・・)

美神は心で笑みを漏らした。

「横島さんは、何ともないんですか?」

「実は・・・・・・・・・・・・・・・・・・体中筋肉痛が」

ギギギ〜っとまるで油のきれたロボットのような感じでおキヌのほうへ振り向く横島。

「まぁ、霊眠期は本来ゆるやかに霊力が上がっていくのよ・・・それを無理に開放した反動ね」

「あ、あの・・・私・・一人で歩けますから・・・」

「も、もう出口見えてるし・・・ここまで来たら男の意地じゃあああ!!!」

確かにもう10m程で出口というところまで来ている横島達。
その視界には、オカルトGメンのトラックや、パトカーの光が眩く輝いていた・・・
そしてむこうから、誰かが駆け寄ってくるのがわかる

「あ、三人とも帰ってきたわね!?」
「た、隊長・・・やっと着いたぁ・・・・」

美智恵の姿をその視界で確認し、崩れるように膝を着く三人。まさに満身創痍という感じだった。

「横島クン・・・・よくやったわ・・・・・本当に・・・・ありがとうという言葉じゃ言い尽くせないくらい」
「隊長・・・。あ!シロとタマモは!?」

労(ねぎら)いの言葉に嬉しそうな苦笑いをもらしながら、今一番気になることを聞いてみた。

「大丈夫よ。あなた達よりは軽症だから・・・一応先に病院に送っておいたわ」
「そうっすか・・・」

ほっと安堵の息を漏らす横島・・・。

「ママ・・・感謝の言葉もいいんだけど、さすが疲れたわ」

立ち膝のまま、力無く囁く美神。普通の人ならここで肩くらい貸すのだが・・・そこは我らが美智恵隊長

「令子・・・・横島クン・・・おキヌちゃん・・・・・あなた達は強い子よね・・・自分の力で立てるわね」

簡単には甘やかさない・・・それを分かっているからこそ美神達もそれに応える・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・ええ、ママ」

「隊長・・・」

「はい・・・」

強い瞳で返事をかえす三人・・・・・・・・・だが

「でも・・・」

「今日は・・・」

「もう・・・」

「「「ダメ」」」バタバタバタ

立ち膝のまま一斉に倒れていく三人・・・・・・・・その光景に美智恵はサーと顔が青くなった。

「キャーーーーー!令子ぉ!横島クン!おキヌちゃん!
 救急車ーー!救急車ーーー!!」

美智恵はもう少しやさしさを持つべきだったかと『少し』後悔するが、すでに後の祭り・・・・
結局仲良く入院することになった三人だった。






満天の星空のもと・・・・・ひゅうと流れた秋風が倒れた三人の頬をやさしく撫でた・・・・・・・・・・












次回「温かい想い(最終話)」に続く
──────────────────────────────────────────────────

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa