ザ・グレート・展開予測ショー

魔人Y−9


投稿者名:NAVA
投稿日時:(02/11/29)






 ポポポポポポポポポポポポポポッ





 どうしてこいつは移動するのにこんな気の抜ける音を出すんだ?

 横島は自室に案内されながらそんなことを考えていた。

 こいつとは当然、ヤマサキヨシオ渾身の作。

 『汎用ハニワ型決戦兵鬼北辰初号機』である。

 背中には『HOKUSHIN−01』と銘打たれている。




 「なぁ北辰さん?」

 「ポッ?」

 身体を180度回転させて横島に振り返る。

 「やっぱケーブルが無いのはS2・・・・・何でもないっス」

 うむ。やはり世の中触れてはいけないことがある。謎の電波がそう言っている。

 横島は口をつぐんだ。

 「ポッ?」

 北辰さんは不思議そうな顔をしたが、何も無かったように再び横島を案内し始めた。









  
 さて、美神が妙神山を遭難しそうになりながらも必死に登っていた頃。

 おキヌとタマモとシロは暇だった。

 とにかく暇だった。

 横島捜索で彼女達が出来ることは少なかった。

 というか、出来ることと言えば、美神を唆すくらいしかなかったわけだから、

 それに成功した現在、彼女達は確かに暇だった。

 とは言え、彼女達には除霊事務所の留守を預かるという大任がある。

 それゆえ事務所を空けるわけにもいかず、横島の心配をするだけで一日が終わる日々だった。


 「はぁ〜。美神さん、上手く神界を味方に出来るのかなぁ?」

 妙神山に美神が行って以来、何度となく同じ言葉を繰り返すおキヌ。

 「大丈夫でござる!美神殿ならきっとやってくれるに違いないでござる!」

 という某狼の返事でホッとし、別の場所で同じことを呟くと、

 「微妙ね。小竜姫様達は味方してくれるでしょうけど、神界が総力を挙げるとは思えないわ」

 という某狐の返事で涙目になる。

 それを交互にエンドレスで繰り返すのが日課であった。


 今回の呟きは丁度、狐の方が返事を返したところだった。



 「みなさん、美神美智恵さまがいらっしゃいました」

 人口幽霊1号がそう告げた。



 

 いつも通り応接間に通して、美智恵の正面に座るはおキヌ。

 タマモが右に。シロが左に控えている。

 当然、美神がオカルトGメンに横島捜索の協力を依頼したことを彼女達は知っている。

 気合バリバリだ。その瞳は期待に満ち溢れている。

 美智恵はそんな3人の姿に苦笑を禁じえない。

 『これで横島君がもうちょっと雰囲気を読めるようになれば選り取り見取りなのにねぇ』

 彼女の知っているだけで、神族・魔族・人間・妖怪・幽霊えとせとらえとせとら。

 有史以来、これほど多くの種族の女性を惹きつけた男性がいただろうか?

 しかもどういうわけか、皆が皆、見目麗しい。


 そこで唐突にここへ来た理由を思い出して、美神不在の理由を尋ねた。




 「そう・・・神界をバックにするために妙神山へ・・・。令子も本気のようね」

   

 その行動を聞いて、美智恵は美神の決意の程を知る。


 
 『私も腹を括るか』



 「私がここへ来たのは、貴女達の予想通り、横島君の所在に関して令子と相談したかったからなんだけど・・・」


 「「「分かった(んですか?)(の?)(のでござるか?)」」」」 

 
 苦笑しながら美智恵は続ける。

 「いえ。正確な位置というわけではないわ。でもどこにいるかは見当がついたってだけ。多分、令子もね」

 「美神殿は何も言ってなかったでござる!場所がわからないのに、どこにいるか分かるのでござるか?」


 ――――――――私が言っても良いのかしら?


 「どういうところにいるか見当が付いてるってだけよ」
 

 「「「?」」」


 いまいち理解が出来ない3人。

 「聞けば分かるわ。でも令子が何も言わなかったのは、確証もないからだろうし、貴女達を不安にさせたくなかったからでしょう」

 「何も分からない状態の方が不安です!」

 おキヌが声を張り上げる。


 ――――――――こうなったら処置なし。恨むわよ。令子。


 「・・・貴女達も知っている通り、GS協会は魔族や幽霊の退治を生業とする組織です」

 黙って聞き入る3人。

 「だけどそれだけじゃないの。敵となる魔族や幽霊を専門に研究する機関も下部組織には存在するわ」

 「それに、敵と戦うための霊具の開発も行ってる」

 「今回、横島君が連れて行かれた理由を思い出して?そう。文珠の研究よ」

 「詳しい話は端折るけど、要するに協会は文珠の製造方法を知りたいの」

 「霊力を扱うってのは感覚的なモノでしょ?もしかしたら、その感覚的なモノを理解出来れば、お札や精霊石を使う気分で文珠を使えるようになるかも知れない」

 「というのが今回のGS協会の建前。で、ここからが本題」

 そう言って、紅茶に口を付ける。

 これから話すことは彼女達には重過ぎるかも知れない。

 しかし、横島を真剣に心配している彼女達にはそれを知る権利がある。そしてそれに打ち勝つ義務も。



 「GS協会の幹部達は横島君をある研究所に連れて行った可能性が大きいわ」

 ゴクリッ

 3人が3人とも唾を飲み込む。いよいよ話が核心に迫って来た。

 「ところがその研究所。中で何が行われているか完全に、完璧に、秘密にされているの。その所在地もね」

 3人が怪訝そうな顔をする。研究成果を独り占めすることが横島にどう関わるというのか?

 「研究成果を独り占め。別に特別なことじゃないわ。でもこれには1つ問題があるの」



 『研究成果を発表する必要が無い。イコール研究の過程も発表する必要がない。つまりは横島君がどんな目に遭っても、例え実験で死んでしまっても公表しなくても良いってことになるのよ?"機密を守るため"と始末されてしまうことも考えられるし』



 3人の顔が一斉に青ざめる。





 そういう奴らに限って自分の好奇心を満たすために『尊い犠牲』って単語を好んで使うのよと美智恵は忌々しげに吐き捨てた。



 
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8話と9話は飲みながら書いたけど、手直し無しでUP(ぉ
もうやりません(汗

・・・実は先○者も出したかった(ぉ

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